【08】 セイフの街
ルナに現在地を教えてもらい、理解した。
倒れた場所からそんなに遠くはなかった。
この近くには【セイフ】という街がある。
人口5万人程度で【中立国・サテライト】の経済特区。ただし、サテライトと帝国は蜜月な関係である為、その実態は帝国領であった。
ボロ小屋を出て――セイフの街へ。
徒歩で数十分、それほど苦労せず到着。
「まずはここで商売をしてみるか」
「はい、どこか空いている家を借りてお店を開きましょう」
「肝心の家があるといいけどな」
「そうですね……」
ちょっと不安気なルナ。
商売に関しては素人だろうし、仕方ない。
ここは俺が一肌脱いでやろう。
「ルナ、俺に任せて」
「え……」
近くにいた老人に話しかけた。
「突然すみません。家を買い取りたいのですが、どこへ行けば交渉できますかね」
「ん、なんだいアンタ。――ウぉ!? そ、その服のエンブレム……間違いない、最強にして世界一のギルド『シャロウ』のモノ! ……あ、あちらに『サスピシャス』というお店がありますよ。この街では一番おススメです」
「ありがとう」
こんな時に、あのクソギルドが役に立つ。
どうせ追放されたからな、奴等の名誉とかどうなろうと知ったこっちゃない。利用できるモノは利用させてもらおう。
◆
小奇麗な『サスピシャス』というお店へ入った。
そこにはやる気はないが、気の強そうな婆さんがいた。
「婆さん。空いている家はないか」
「――ぷは~~」
パイプタバコを口から離し、煙を大量に吐く婆さんは気だるそうにこちらを見た。で、やっぱり、エンブレムをギョッとした顔で見るなり――
「ひょ、ひょっとして、シャロウ!? わわわ! す、すまないね!」
このエンブレム、どんだけ効果あるんだか。
良いんだか、悪いんだか。