【72】 月の涙
騒動は終息し、一件落着となった。
「大切な家を失ったな」
「はい……とても悲しいです。みんなのお店が……」
顔を曇らせ今にも泣きだしそうなルナ。
俺も辛い。ルナのおかげであの店はオープン出来たし、現在の俺があった。みんなとも出逢えた。素敵なお客さんとも出会えた。
そうだよ、全ては彼女のおかげだ。
ルナがいなかったら、俺はあのまま冷たい雨の中で腐って死んでいた。
まだ続けたい。
たくさんの人たちの笑顔を見たい――。
だから、
俺はそっとルナの肩に手を置く。
向かってくる視線は悲痛に満ち溢れていた。そんな落ち込むよりも辛い顔をして欲しくはない。キミにはずっと笑っていて欲しいから。
「ルナ。また俺と一緒に店をやって欲しい。ソレイユとミーティアも入れてね。今度は【帝国・レッドムーン】へ行こう。あの世界一を誇る大国でお店をやるんだ」
「…………」
静かに涙を零すルナは胸がいっぱいになっていた。
あの時、俺を救ってくれたルナのように、今度は俺がルナを引っ張っていく。ソレイユもミーティアもだ。
「わたしは……」
ほんの僅かに躊躇を見せるルナ。少し迷いがあるのか――それとも。
……ああ、きっと言えない事情とかあるよな。それでもいい、俺はルナと居たいんだ。ルナがいない生活なんて考えたくもない。
「来い、ルナ! 今度は俺の番だ。キミのこの手は俺だけが掴んでいく!」
「…………カイト様」
ルナの繊細な身体を優しく手繰り寄せ、ぎゅっと抱きしめた。
嫌がる素振りも抵抗もない。
驚く顔もせず、月明かりのような笑顔で――
「…………ありがとう」
大粒の涙を流しながらも、嬉しそうに言葉を振り絞っていた。




