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315/318

【315】 大賢者の能力半減スキル Side:ガラテイア

【帝国レッドムーン領:クァンタム高原】



 セイバードラゴンに乗り、帰還を果たした私は父の元へ駆けつけた。

 父ネーレウスは高原から帝国レッドムーンを見据えているようだった。



「よく戻った、ガラテイアよ」

「父上。私はその……闘技場(コロシアム)で……」


「うむ。見ていた。お前は立派に戦ったぞ」

「――いえ、そのようなことは。海底監獄イグノラムスへの侵入も果たせず、シャロウのメンバーも引き入れられておりませぬ」



 パラレログラムは陥落したものの、帝国レッドムーンは未だに健在だ。あの場所へ入ると、自身の能力が半分も落ちると判明した。

 おそらく、賢者か誰かの仕業だ。


 帝国でヤークト公爵の爵位を持ち合わせていた父上なら、詳しいことを知っているかもしれない。



「やはり、大賢者パラディ・アプレミディ卿の力だろうな」

「……! 大賢者が帝国を守っているのですね」

「そうだ。ヤツの力は侮れん。我らを弱体化するなど造作もないのだろう」

「……それで私の力が半減して……」


「パラレログラムのようにはいかん。心してかかれ」

「わかりました。父上」



 父上は、月と太陽の聖典を取り出してページをパラパラとめくる。一瞬だが、エルフの言語が書かれているようにも見えた。

 ……古代エルフ語だろうか。


 そういえば、聞いたことがある。


 遥か昔には『聖書』と呼ばれる書物があったのだとか。もしや、あの聖典がそうなのかもしれない。


 莫大な力を持ち、あらゆる奇跡を起こすと聞いたことがあった。



「この聖典の力を発揮できればよいのだがな」

「できないのですか?」


「……残念ながら、古代エルフ語を読めなければならない。だから、シャロウのコレリックが必要だったのだ」



 そうだったんだ。だから、コリレックに執着していたんだ。

 私は半端者(・・・)でエルフ語が読めないから……。



「では、今度こそコレリックを……」

「そうだな。三日後に帝国の破壊を考えていたが、現状では厳しい。コレリックを連れてくるのだ」


「わかりました。父上の為に私が必ず」


「期待しているぞ、ガラテイア。お前は我が娘にして“特別”だからな」



 ……嬉しい。父からそう言ってもらえるだけで、私はがんばれる。

 私の拠り所は父上だけ。

 家族だけが頼り。


 だから、父上の命令には必ず従うし、死ねと言われれば死ねる。

 命令は絶対だ。



「では、行って参ります」

「気を付けていってくるのだぞ」


「はい」



 私は、再びセイバードラゴンの背に乗った。


 今度こそ失敗しない。

 もう失敗は許されない。


 コレリックを奪い、聖典を呼び起こし……帝国レッドムーンを徹底的に破壊する。そして、父の願いが成就する。私も幸せになる。


 だから、絶対に負けない。負けるわけにはいかない。


 なにもかも奪った世界を全て破壊し尽すために。

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