表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/318

【03】 救いの声

 目を(つむ)り、俺は(どろ)のように眠っていた。

 このままなら俺は餓死(がし)し、孤独に死を迎えるだろう。それでいい、俺の価値なんて、その程度でしかなかったのだから。


「…………もし」


 前の世界も、今の世界も理不尽の塊。


「あの……もしもし」


 もういい、疲れた……。


 全てを自然に委ね、苛辣(からつ)な雨に打たれ身も心も冷たくなっていく。手足の感覚はとっくに麻痺(まひ)し、じわじわと死が迫っていた。


 これで――



「あの、そこの倒れているあなた」



 ――声。


 いつの間にか、女性の声が俺を呼んでいた気がした。そのか細い声を認知できたということは、俺はまだ生きているらしい。雨音の幻聴かと思ったけれど……気のせいではないのか。


「え……」


 まさか……。

 そんな(はず)はないと(まぶた)を開けると、そこには――


「お、女……の子?」


 (かさ)を差し、俺を心配そうに覗き込む少女。

 赤黒いメイド服に身を包み、クリーム色の長い髪が息を()むほど美しかった。こんな女の子がどうして、こんな辺鄙(へんぴ)な森の中に。


「大丈夫ですか。あの、手をお貸しいたしますよ」


 そう白く細い手を()ばしてくる少女。


 その光景があまりに神々しくて、俺は彼女を天使と見間違えたほどだ。こんなゴミも同然となった俺に救いの手を差し伸べ、助けてくれるような少女がこの世界にはいたんだな。



 ――俺はその手を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ