【275】 最果てからの来訪
商人連合でダンジョン開発の手続きを終えた。
これで俺はダンジョンを作る事も可能になった。開拓も可能だし、世界に一人しかいないという『ダンジョンマスター』も目指せる。
マスターになるつもりはないが、一先ずは『イルミネイト』の地下にでもダンジョンを設置しようかなとは俺は思った。
「今日は第一歩を踏み出しましたね」
「ついて来てくれてありがとうな、ルナ。これからはレベル売買とダンジョン開発も進めていく」
そんな話をしながらもお店へ戻った。
イルミネイトに戻ると、そこには桃色の髪を靡かせる騎士が歩いていた。あの細く、無駄のないボディラインはソレイユだな。
「戻っていたのか、ソレイユ」
「ただいま。うん、ペイルの面倒を見ていたの。って、ルナと一緒に出掛けていたのね。そっちは何していたの?」
「海人様が新事業を始めるそうなのです」
俺の代わりにルナが答えてくれる。
「へぇ! 新事業ね。レベル売買だけでなく、何か他の商売をやろうとしているのね。何やるの? レアアイテム取引とか?」
興味津々にソレイユは俺に視線を合わせる。
「そんな普通の商人じゃないよ、俺は。ダンジョン開発さ」
「ダンジョン開発? なにそれ、面白そう」
「とりあえず、試しにイルミネイトの地下室を魔改造してダンジョンにしようかなと計画中だ」
「ちょ! それ名案ね! 直ぐに狩りに行けていいじゃん」
「まあな。とにかく――」
そこで『ゴーン』と呼び出し鈴が鳴る。
どうやら来客らしい。
「すまん、ソレイユ。お客さんだ」
「あ~、うん。じゃ、あたしは最上階のお風呂でも行って来るわ。良かったら、ルナも来る~?」
「いいですね、では、わたしもご一緒しますね♪ 海人様、大変申し訳ないのですが……」
「いや大丈夫だよ。こっちは俺に任せてゆっくりするといい」
ソレイユとルナは、魔導式エレベーターへ向かい、最上階にある展望風呂へ向かった。あそこは眺めが良くて最高だ。
俺はお客の対応だ。
◆
玄関へ向かうと四人組のギルドらしき人たちが立っていた。俺は、その光景にちょっとギョッとなってしまう。
な、なんだか珍しいお客さんだな。
見ない顔だった。
「ご来店ありがとうございます。えっと、お客様は四名でございますか?」
俺が訊ねるとリーダーらしき高齢の男性が前へ出る。なんだこの超豪華なローブを羽織った老人。貫禄があるなぁ。
「お初目に掛かります。私共は最果ての国・パラレログラムから参りました……ギルド『パラレログラム』でございます」
「え……最果ての国・パラレログラムのギルド『パラレログラム』?」
「左様でございます」
な、なんだそれは。
聞いた事がない。
そんな国……あったかなあ。
「ちなみに、お名前を伺っても?」
「ええ、私はパラレログラム国のプロフェッサーにしてギルドマスターの『ジェネラル』でございます。魔術師などをやっておりましてね。皆さんも自己紹介をしなさい」
赤髪の少年が前へ出る。
「俺はプライムだ。この通りノコギリの使い手だ。よろしくな」
プライムの腰には『ノコギリ』が二本あった。
彼の衣装も歯もノコギリ状だった。
何なんだろうこのやたら、ギザギザの人。
「私はナイツです。この通り、ビリヤードのキュー・スティックが武器でして……突くのが得意なんです。……ウフフ」
いやらしい手つきで長い棒を持つ金髪のお姉さん。なんでそんなクニクニと……! 確かに、あれはビリヤードで使うヤツだ。それが武器だって?
「わたしはモニカで~す★ よろしく★」
きゃぴきゃぴした十五歳くらいのドレスに身を包む少女は、そう名乗った。彼女の武器は見当たらない。この流れからして、何かしら武器を持っているかと思ったが。
こうなると名乗られたからには、俺も名乗らねばな。
「俺はこの『イルミネイト』を経営しているカイトです。よろしくお願いします」
自己紹介を終えると、あの老体が目の前に。
「やはり、貴方様が。噂は聞いておりますとも……貴方は『レベル売買』が可能なのですよね。私どもは、そのレベルが必要でわざわざ世界の最果てからやって来たのです」
なにやら訳ありのようだな。
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