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【241】 セイフの街・再訪

 ノリと勢いで帝国・レッドムーンを飛び出して早三日。ミーティアの提案で『バイオレットダンジョン』を目指していた。



 あれから霊峰【ベルク山】を徒歩で越え、酷道を下り続けた。そんな長旅の末、懐かしき【セイフの街】に辿り着く。



「懐かしいですねぇ、海人様」



 俺の隣で感激するルナは、変わらぬ街の風景を見渡していた。人口およそ三千程の街だが、建物は立派で田舎っぽくはなかった。


 (かつ)て皆とこの場所で『レベル売買』の商売をしていたんだよな。あの時のイルミネイトは、シャロウの『バオ』の襲撃により、火災で倒壊しちまったけどな。



「そうだな、ルナ。あっちは不動産屋のサスピシャス、アイテムショップのインパルスも健在だ。へえ、なんだ、ワンダのお店も残っているじゃないか」


「パナシーアのセイフ支店ね。あたしもよくポーションを買いに利用してたわぁ~。今は確か、別の子が店を任されているみたいよ」



 そうソレイユは、俺の知らない情報を寄越した。ほう、別の子ね。それはちょっと気になるな。時間もあるし、立ち寄るのもアリだろう。だが、その前に宿だな。


 セイフの街には一日は滞在しようと思っていたし、懐かしい思い出に浸りながら明日には出発しようと考えていた。



「お兄ちゃん、宿屋って何処で泊まるのー?」


「良い質問だな、ミーティア。今日は『アルマナック』という宿屋に泊まるよ。俺も泊まった事はないんだが、この街一番と評判の宿だ。期待はして良い。それに、セイフの街まで三日も掛かっちまったからな。疲れた体を休めないとな」


「うん、楽しみ! ……あ、ルナさん、さっそく男の人に声を掛けられてるよ。盗られちゃうよ、お兄ちゃん!」



 さすがルナ。最強の美貌を持っているから、男が吸い寄せられてくる。しかも、赤黒いドレスのようなメイド服だから派手で目を引く。

 特注のカチューシャも決まっているし、本物のメイドさんにしか見えない。そして、腰まで伸びるクリーム色の長い髪を結ぶあの『黒いリボン』は必ずつけている。俺がこのセイフの街の時代にプレゼントしたものだ。今もずっと大切にしてくれていた。



 ――って、そうだ。

 ルナを助けねば!



 俺は寄って来る男達を追い払う。



「こっちおいで、ルナ」

「よ、喜んで……はぅ」



 毎度毎度ナンパが面倒なので、俺はルナを抱きしめた。これならさすがに男共は諦める。



「もう、カイトってばあたしらの前で堂々と――まあいいけど。道中でも散々見た光景だしね。とりあえず、ボディガードは任せなさいよ」



 と、ソレイユは淡々と言うが……さっきから役に立っていないどころか、ソレイユはソレイユで男に寄られているけどな! 面倒臭そうにやんわり断っているようだが、顔が怖いなぁ。



「ルナさんもソレイユさんも毎回凄いね」



 特に寄られないミーティアは茫然(ぼうぜん)と立ち尽くすしかなかった。そういえば、我が妹はモテないな。こんな可愛い金髪ダークエルフなのになあ。




 ――さて。

 いい加減に移動したいところだ。

 こんな場所にいては始まらない。


 宿屋へ向かおう。




 セイフの街の中心には『考える騎士の銅像』があって、そこを北へ行くと宿屋はあった。段々見えてくる大きな木造の建物。



「ここが『アルマナック』か。うん、大きいな」



 宿屋へ入ろうとすると、ソレイユが叫ぶ。



「ちょっと、カイト!」

「あん?」


「あん? じゃないわよ。なによこの宿屋。ちょっと……いえ、だいぶおかしくない!?」



 おかしい、というのは多分、出入り口前を言っているのだろうな。ソレイユの指摘する通り、そこにはメイドさんが複数人立っていた。




 しかも全員、猫耳メイド(・・・・・)!!




 金髪や緑髪の子、青髪や赤髪の子など……様々な女の子が立ち並ぶ。全員、レベル高いなぁ。すげぇ、すげぇぞ、この宿屋。そりゃNo.1なわけだよ。


 メイドの女の子達があまりに可愛くて、俺はつい見惚れてしまった。だって、猫耳だぞ。あれは卑怯すぎるよ。しかも美少女達ばかりだし。男人気があるわけだ。



 そうして納得していると、唐突にルナが俺の顔を両手で押さえ――視線を奪う。ルナの赤い瞳と見つめ合う形となる……。



「赤い月だ……綺麗だよ、ルナ」


「誤魔化そうとしていますね、海人様。いいですか、他のメイドさんに見惚れるとか、わたし、泣いちゃいますよっ」


「あ……ああ、分かってるとも。俺のメイドはルナしかいないよ。うん、そんな事は百も承知さ。けどね、今日はこの宿屋で泊まるんだ、一日くらい我慢してくれないか?」


「もう、仕方ないですね。一日だけですよ。もし一日を超えた場合、夜のお世話をずっとしますからね! 覚悟してくださいねっ!」



 さすがルナ。話が分かる……って、えぇッ!? よ、夜のお世話って……それは別に罰でも何でもないし、良いような気が?



「まさかメイド宿屋とはねぇ~。メイド喫茶は帝国・レッドムーンでもあったけどさ~。カイト、あんたやるわねえ」



 そう、ソレイユから褒められた? けど、別に嬉しくはないけど。まあ、気分は最高だった。目で楽しめるうえ、サービスも良いと聞く。



 とにかく、アルマナックで一泊だ。

 どんなサービスがあるやらワクワクするなぁ。

いつも応援ありがとうございます。

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