【200】 新スキル購入
「ここがスキル売買市場ですか」
「そうだよ、カイトくん。ここら一帯が全てそうだ。もっと向こうへ行けば露店だな。知っていると思うが、現在はセール中でね、大変混雑している」
スキルを求めてくる冒険者が多い。必死に大魔法を競る魔法使い、マイナースキルを購入しようとしているエルフ、特殊資格が必要のスキルなど、レアスキルが取引されまくっていた。
「ここまでとは……圧倒されましたよ、マタンさん」
「凄いだろう。皆、スキルを欲している連中さ。あそこのドワーフも、あそこの踊り子も、あそこの錬金術師も自分にないスキルを身に付けたくて金を払っている。キミのレベル売買と似ているかもしれんな」
根本的にはそうだろうな。
そのおかげで強くなれる人もいれば、生活が楽になる人もいるだろう。ああ、そうだな、レベルと同じだ。
それにしても。
「スキルをどうやって売買しているのですか?」
俺よりも先にルナが聞いてくれた。
「良い質問です、ルナ様。私、マタンには『スキル売買』の力があるのです。これは、兄である大賢者パラディ・アプレミディと共に開発したユニークスキルでして、その、事情を話すと長くなるのです。大変心苦しいのですが、今は割愛させて戴きます。
とにかく、相手の同意さえあれば売買できるのですよ。その辺り、カイトくんのレベル売買と似通う点があるかと思います」
「……なるほど、もしかしたら『レベル売買』もアプレミディ卿が。ふむ、いいでしょう。また今度お聞かせ願いします」
「え、ええ……。さて、カイトくん、なにかスキルをご所望かな」
話を振られ、俺は迷う。
「んー、そうですね、俺は商人だから攻撃スキルを殆ど持ち合わせていないので、何か必殺技系があるといいかなぁ」
「ほう、必殺系ですとな。では、ハンマー系スキルの『メテオストライク』など如何ですかな」
ハンマー系かよ。
俺のメインウェポンは短剣なんだけどな。
「ハンマーはどちらかと言えば、ソレイユの持ち技だからなあ」
「でも、ソレイユなら気に入るかもしれませんよ。お土産にいいかもしれません」
ルナに提案され、俺は悩む。
「マタンさん、それいくら?」
「お客さん、お目が高い! これはとある帝国の騎士様が売却されたというスキルでしてね。200万セルだよ」
「――――は?」
ちょっとマテ。値段も突っ込みどころ満載だが、ある帝国の騎士? それって、まさか……」
「なあ、マタンさん」
「なんだい、カイトくん」
「その帝国の騎士って、特徴的なモミアゲがあって、桃色の髪をしていなかったか?」
「ああ、ソレイユ様だよ」
あいつ!!
スキル売却していたのかよ。
まあ、理由は孤児院の支援とかだろう。
「やっぱりですか」
「ルナも薄々気づいていたのか」
「ええ、最近、孤児院の方が安定していると仰っていましたから、スキルの売却が理由のようですね」
それにしても、200万か。
ちょっとキツイかな。
「他に何かないかな。出来れば短剣系がいいな」
「他かい。そうだねぇ……う~ん。うん、じゃあ『フィムブチュール』でどうかね」
「フィムブチュール?」
なんだか猫が好きそうな名前だな。
「これはね、斧専用なんだけどね、そりゃあ破壊的な威力があってねえ」
「あの……俺、だから短剣……」
「短剣スキルはあんまり良いスキルがなくてねえ、地味なのしかないのさ。だから、剣や鈍器、斧とか弓系しかないねえ」
ダハハハと豪快に笑うマタン。おいおい!
今更武器を変えるのもなぁ。
「困ったな。でも、一応買っておこうかな。誰かに使えるかもだし」
「ちなみに『フィムブチュール』は特価の50万セルだ」
「やっす! さっきのハンマースキルより安い! あっちはどうして高いんだよ」
「そりゃ決まっている。ソレイユ様の使っていたスキルだぞ! それだけで付加価値があるし、セール対象外だ」
なんという贔屓。ソレイユのファンだな、このおっさん。
「分かった、そのフィムブチュールでいいや。あと、まあ良さげなのを見繕ってくれ。予算は500万セルで」
「ほう、それなら上等なのが10個は出せるよ。任せな」
あとはマタンのセンスに任せた。
ネタスキルとかあったら、後でクレームだな。
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