【153】 復讐計画
許せん、許せん……絶対に。
今もなお、嫌がらせを続けるテヒニク。
隣にある洋服店・テンペラメントへどう復讐したものかと、ひとり温泉に浸かりながら計画を練っていた。
現在、イルミネイトの屋上だった。
「ん~~~」
全面ガラス張りの外を眺めて、思案する。
青空では雲が立ち止まる事無く流れていく。
そうだ、俺も止まっている場合ではない。
なにか考えろ。
「……」
簡単に思いつけば、苦労しないわな。
とっくに解決して、ヤツに一泡吹かせている。
でも、それが出来ないから立往生。雲はどんどん先へ進んでいく。どこへ行くんだろうな。やがて、雲は消え去り太陽が照り付けた。まぶしいなあ……と、俺は手で陽射しを遮っていると。
「カイト」
――と、凛とした声が俺を呼んだ。
こ、この声……まさか。
「ソレイユなのか」
「うん……だから、その、こっち向かないで」
「あ、ああ……」
振り向けるワケねぇ。恐らく、今の彼女は裸。温泉に浸かっているのだから、当然だろう。ていうか、いきなり入ってくるとはな。
「どうした、ソレイユ」
「困っているんでしょ。こんな時は仲間を頼りなさいよ」
「そのつもりだ。だが、策が思いつかなくてな。同じように嫌がらせした所で、下手すりゃこっちの信頼が地に堕ちるだろうな」
「でしょうね。でもさ、ムカツクし、いっそ洋服店・テンペラメントをぶっ潰してもいいんじゃない」
ソレイユは過激な事を言う。
それ程までに彼女も苛立っているのだろう。
「そうしたいのは山々なんだが、それじゃあ、ただの悪者だ」
「いや~、ここまでされたんだし、正当防衛として反撃しても誰も文句言わないって。最近、お客さんも気づき始めているわよ、テヒニクが主犯だって」
「マジか」
――ん、まてよ。
「なあ、ソレイユ」
「ん」
「最近、お客様は気づき始めているんだよな」
「ええ、そうね。一応、あたしとミーティアが事情を話し回っているところ。だって、玄関前をあんなにされているのよ」
「……それだ」
「え」
「それだよ!!」
俺は思わず振り向いた。
「ソレイユ、お客様の力を借りるんだ!」
「ど、どういう事?」
「お客様は俺たちの味方のはず。だって、彼らはレベルも欲しければ、金も欲しい。でも、あのテヒニクの嫌がらせのせいで、イルミネイトに近づけない」
「うん」
「なら、協力を仰ぐんだよ。あれさ、皆で渡れば怖くないってヤツだ。いいか、こうなりゃ全員で突撃だ」
「なるほどねー! それ、名案かも。人数が多ければ多い程、そして、支持が多ければ多い程にそれは英雄となるってわけね」
ちょっと例えは違うけど、大体の意味合い的には、100万人殺せば英雄理論だな。ちなみに、全人類を滅ぼせば神になるそうだ。
「どうだ!?」
「あたしは賛成かな。あとはルナとミーティア……」
そこでソレイユは顔を真っ赤にした。
「…………」
「どうした?」
なんか涙目になって、顔を逸らした。
いったいどうし――――あ。
しまった、裸で向き合っていた。
俺は背を向けた。
「……ばかっ」
ぼそっとツンデレ風味に言われても、たいした迫力はなかった。でも、それほど怒っていなかった。……ソレイユの肌は、陽射しのように眩しすぎる。
◆
「いいですね、賛成です!」
ミーティアは即答した。
迷う時間もなかったな。
最後にルナだが。
「あれから二週間。嫌がらせにずっと耐えております。イルミネイトの存続も怪しくなってしまっている……この状況。大変、許しがたいです」
静かに燃えるルナの顔は、怒りに満ちていた。どうやら、同意してくれるようだ。
「我々は十分に耐えましたし、おかげで忍耐力も向上しました。ですが、耐えるだけでは何も変わらない。こちらが落ちていく一方です。倒しましょう……あのテヒニクを!」
ついに、あのルナでさえも堪忍袋の緒がはち切れた。
「みんな……テヒニクをぶっ倒すぞ」
「「「おぉぉぉぉっ!!!」」」