【150】 レベル爆売れ
みんなの力で、新生イルミネイトを改築していった。
【一週間後】
「お~し、こんなところだろう!」
見違えるような立派な店が完成した。
あれから、ヴァーミリオンから荷物を全て移動させ、おっちゃんとは別れた。随分とお世話になったな。
それから、トニーの補助支援を受けて更なるパワーアップ。ついにイルミネイトがオープンとなった。
【一日目】
誰の宣伝効果か分からんが、初日にして100人が殺到した。いきなり大忙しだ! 以前と変わらぬ対応で接客。無事終了。少し儲かった。
【二日目】
噂が広まり、昨日の倍である200人が来客。
良い調子だ!
【三日目】
更に更に噂は広まり、500人ほどとレベル売買の取引をした。売り上げも伸び始めてきたぞ。しかし、ちょっと疲労が見えて来た。
【四日目】
ついにイルミネイトの評判が加速。
開店時で、1000人が並んだ。
ミーティアの顔色が悪い……マズイな。
【五日目】
もはや、イルミネイトの存在は国中に知れ渡り、人々に『レベル売買といえば?』『イルミネイト』と店名が浸透するほどになった。子供でも知っていた。
【六日目】
売り上げが5億を突破した。
赤字をなんとか脱却しそうだ。
ソレイユがやつれているような……。
【七日目】
10000人が殺到してしまった――――って、捌けるワケねぇ~~~!!
対応1000人辺りで、みんなぶっ倒れた。
さすがに臨時休業した。俺もクタクタのボロボロだった。調子に乗りすぎて仕事しすぎたな……。
休もう……。
・
・
・
店を閉めて一日目。
その間にもレベルと金を求めてくる冒険者は絶えなかった。冒険も勿論だが、金が必要な者、オービット戦争に備える者が多かった。
中には中流貴族もいたほど。
何度か貴族の令嬢に求婚されたが、全て断った。俺にはみんながいるからな。
「お疲れ様です。カイト様」
五階の自室で休んでいると、疲労の色を滲ませるルナが紅茶を淹れてくれた。さすがの万能メイドのルナでも、今や生気は失われつつあった。こんな彼女を見るのは辛い。
「ごめんな、ルナ。みんなを働かせすぎた」
「いいえ、みんなイルミネイトの為に必死だったのです。ですが、熱中する余り自分たちの体調面を疎かにしすぎてしまいました。こればかりは、わたしも反省です」
「俺も猛省するよ。みんなには給料を奮発しないとな」
ソレイユとミーティアは、自室でぶっ倒れている。多分、遊ぶ気力もないだろう。しばらくは休みだな。
「その……カイト様、少し気掛かりが」
「ん?」
「貴族のご令嬢から随分と求婚の申し入れがありましたよね」
ぷくっと頬を膨らませ、顔を赤くするルナ。
「あー…いや、その、20人くらいからね」
「……」
「だ、大丈夫だよ。全部断ったから、ほらおいで」
ルナを隣に座らせた。
ちょっと怒ってるな。ちょっとだけ。
「冗談です」
「へ」
「ちょっと困らせたくなっちゃっただけなのです。まさか、カイト様があれほど人気だとは思わなくて……ちょっと焦ってしまったのかも」
「そうだったか。まあ、とにかく無事にイルミネイトが復活出来てよかったよ。この帝国なら、さすがに店も燃やされないだろうしな」
「ええ、帝国の騎士がいますから」
紅茶を啜って、ルナはカップをテーブルに置いた。その絶妙なタイミングで、あの呼び出し鈴が鳴った。
「なんだー…休業の看板を見ていないのかよ」
店の前には、まだかまだかと冒険者が居座っている事もある。どんだけレベルあるいは金が欲しいんだか。
「仕方ないな、行って来るよ」
「分かりました。わたしも」
「いや、ルナは休憩していてくれ。疲労困憊だろう」
「ですが……」
なぜか紅茶を見つめるルナは、嫌な予感がした? のだろうか、やっぱり、ついてくるという。
「仕方ないな。一緒に一階へ行こう」
「ありがとうございます」