【148】 黒髪メイド
※カイト視点です
猪肉を堪能し、屋上の部屋でルナと共に過ごす。
景色も最高。美女と過ごせる……なんて贅沢な。
温泉があるから、すぐにお風呂にも入れた。最高峰の魔導式湯沸かし器を使えば、一瞬で湯は沸いた。でも、部屋にも浴槽が備え付けられているんだよな。ルナとソレイユは、今日は大浴場を遠慮していた。
仕方ないので、後でコッソリ入ってやろう。
なんやかんや、やる事もあって深夜になってしまった。――で、まさかのミーティアが入って来るとはな。どうやら、一番乗りしたかったようだが俺が先に入ってしまっていた。
――それからの記憶がない。
俺はまた、ぶっ倒れたらしい。
ミーティアは、幼いように見えて発育はかなり良い。ルナとまではいかないものの、胸も大きく……上から下までキチンと出ていた。
一体、何歳なんだか。
そういえば、皆の年齢を聞いた事がなかったような。今度、聞いてみたい気もするが、昔に亡くなった爺ちゃんが、女性に年齢を聞くのは失礼だから、決して聞いてはならぬと口酸っぱく、癖のように言っていた為、言いつけ通りにしていた。
「でも気になるなー」
爺ちゃんと言っても昔の、別の世界。
今はもう守る必要も……ないよな?
◆
目覚めの良い朝を迎え、いち早く一階にある客室の準備を進めていた。いよいよ『レベル売買』取引も初めていかねばならない。
お金がなければ、この五階建てのお店を維持できないし、みんなを食わせていかねばならない。残金は残り二億弱。となると、持って二か月、三か月持てばラッキーだろう。何もしなければ店は終わる。みんな路頭に迷うだけ。
そんな結末を迎えない為にも、お客様を迎える準備を推し進める。幸い、俺には頼りになる部下がいる。騎士だけど顔の広いソレイユ。その知名度を利用して、何度か客寄せはして貰っている。これからも頼る場面は多いだろう。
それから、ミーティア。イルミネイトの看板娘といっても過言ではないだろう。その接客スキルは目を見張るものがある。高いコミュニケーション能力、あの饒舌は伊達じゃない。
そして真打、万能メイドさんことルナ。
嫌な顔せずなんでもこなす。まさに希望。彼女がいなければ、俺はまだ森とかセイフの街を彷徨っていただろう。
みんな朝から部屋の準備を手伝ってくれていた。
ルナは机を、ミーティアは椅子を。
俺とソレイユは床の雑巾掛けをしていた。丁寧に拭っていくと、なにかヒラヒラしものが目の前に。
「!!」
なんと、ソレイユの短いスカート、お尻だった。……まったく、そんな這い蹲る格好だから、見えちゃいそうだぞ。
溜息をつくと、ソレイユが振り向いて「なに?」とこっちを見た。
「いや、なんでも」
「……?」
まあ良いかと、彼女は雑巾掛けを続行。
そんな時だった。
例の魔導式・呼び出し鈴が『が~んご~ん』と鳴り響いた。それに驚くソレイユは、頭を上げて――机の裏に打ち付けた。
「あいたっ!?」
ドジッ子か!
「いったぁぁぁい……」
頭を押さえ、涙目になるソレイユさん。
なんだかなぁ。
「大丈夫か」
「う、打ったぁ……」
一瞬、パンツの紐っぽいのが見えたのは内緒にしておくか。で、ソレイユを救出した。すると、頭を擦ってくれとご要望が。
「俺が? いや、さすがにね……ミーティア、ソレイユのたん瘤を擦ってやってくれ」
「はぁ~い」
俺の代わりにミーティアがソレイユの頭を撫でた。……さて、俺は来客の対応へ向かおう。まさかこんな早朝に人がねぇ。
◆
「カイト様、わたしも」
玄関に辿り着くと、背後からルナもついてきた。
腰まで伸びるクリーム色の長い髪が美しい。キラキラと月のように輝き、朝でも神々しく反射している。それから、滑らかに伸びる睫毛の下の赤い瞳。俺はあの目が好きだ。
流れるような輪郭。惚れ惚れする容姿。
いつも美しい。
ぜんぶが愛おしい。
――って、見惚れている場合ではない。
お客様の相手を優先せねば。
くるっと振り向いて、相手の顔を確認――
「おはようございます、ルナ様」
……メイドさん……?
そこに居たのは、メイド服に身を包む少女だった。ルナとはデザインが違うな。
歳はルナより少し上だろうか、凛とした顔立ち。
「それと初めまして、カイト様。わたくしは、オーロラです。貴方の数々の噂、活躍は耳にしております」
黒髪ショートヘアのすっげぇ……美人だった。髪に赤いメッシュが掛かって、独特な気配を漂わせていた。――って、猫耳! 尻尾まで……亜人か?
……って。
何故、俺を知っている?