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【124】 Lv.9999の反撃

 魔法使いであるミーティアは、新スキルを習得していたようだ。そうか、ゴブリンを倒した時にレベルアップしていたか。



 詠唱を完了させ、それをヤツに向けた。




『エレクトロンボルト――――――!!!』




 広範囲の風属性魔法。

 ひとつ前の『サンダーボルト』の上位互換に相当するようだ。それはもう雷の嵐。バリバリと蒼白い光が周囲に放電していく。



「なんつう!」



 凄まじい雷光を四方八方に流し、ヤツを自動追尾(ホーミング)していた。……意思を持つ雷なのか? 蛇のようにうねり、ビザールだけに接近していく。



 そして、光はついに『バチィィィ!』とビザールの頭上に落ち、その反動でルナを離した。……今だ!!



「ソレイユ、お前はルナを。俺はビザールをぶちのめす……!」

「うけたまわり!」



 ソレイユの現在レベルは『2800』だ。

 帝国に入る前に上げておいた。


 彼女にビザールを任せても良かった。でも、それでは俺の腹の虫はおさまらない。あのバオの弟であり、なにより――ルナを人質に取った罪は重い。


 万死に値する。

 そして資金は十分にある!



「レベルアップ!!」


「なにィ!!」



 雷に吹き飛ばされながらも驚くビザール。




「カイトォォォォ、てめえええええええッ!!」




 殺す必要はない。

 帝国の騎士に引き渡し、シャロウの情報をキツイ尋問(じんもん)で引き出してもらう。そもそも、あの茶髪騎士の『ヴァルム』といい、このビザールいい『シャロウ』が入り込み過ぎだ。



 ――――なにかある(・・・・・)



 この【帝国・レッドムーン】で何か起ころうとしている。……させない。ここはシャロウの居て良い場所じゃない。



 ヤツ等は【共和国・ブルームーン】に忠誠を誓った敵国ギルドなのだ。


 オービット戦争にだって加担しているはず。



 今は停戦中らしいが……

 これはその延長ではないだろうか。




 だとしたら。




 近い将来、きっとなにかある。




「ビザール!」

「雷のせいで逃げ道がねぇ、クソがあああああッ!!! クソがああああああああああああ!!」



 なんとかギリギリで回避するビザールは、雷の嵐を(くぐ)り抜け……ニタリを笑うと俺の方へ接近してきた。それから隠し持っていた毒々(どくどく)しい『ポイズンナイフ』を向けて来た。



 あの古びた感じ、形状は見覚えがある。



「気づいたようだなァ! バオの兄貴からこの毒ナイフを譲り受けたんだよ。てめぇをブチ殺すためになああああ!! きええええええええ!!」



 しゅっと紫の刃が頬を掠めていく。


 ……見える。

 ビザールの動きは余裕で(・・・)見える。



「言っていなかったな、ビザール」

「んだぁとぉ!?」



「俺のレベルは『9999』なんだよ!!」



「なっ…………カンスト!?」



 ちょうどビザールの頭が近かった。

 ので、俺は腕を突き出し――デコピンした!




「え…………ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」




 ズドォォォっと爆音がして、ビザールはかなり遠くの噴水に激突。そこで終わりかと思えば貫通。そのまま更に固い壁に激突。だがそれさえも貫通し、ようやくゴミ置き場に落ちたようだ。遠すぎて常人なら見えないだろうが、俺は『Lv.9999』だから、視力とかも上がっている。うん、見える。



 遠方の様子を伺うと、ペットモンスターの『オーク』が通り掛かり……ビザールをトイレか何かとい勘違いしたのだろう……モリっと顔面にお見舞いしていた。……うあ。いつしかのバオのように糞塗れになっていた。うおぇ……。



「……カイト様? 顔に手を当てられてどうなされたのですか?」

「いや……何でもないよ、ルナ。それより大丈夫だったようだな。ほら、顔をよく見せてご覧」


 ルナの小さな顔に両手で触れる。

 すると、



「ふぁぅん!?」



 そんな間の抜けた声を出し、顔を赤くしていた。

 俺も恥ずかしいって。でもこれは確認だ。あの凶悪なビザールに囚われていたんだ……どこかにケガがあるかもわからん。



「…………あ、あの、あのあの……」



 ルナは、ガクガク震えて……ガチガチになっていた。……こ、こんな取り乱すルナは初めて見たぞ。ただ触れただけなのに……。



「……………」



 カチーンと時を止めてしまわれた。



「お、おいおい……」

「ちょっと、カイトってば、何してるの。こんな壊れたルナ見た事ないわよ……これは重症ね」

「ああ、ソレイユ。それさっき俺も思ったわ。よし、ちょっとソレイユでも試してみるか」


「へ」



 俺は試しにソレイユの顔にも触れてみた。



 カチーン。



 ……お前もかよ。



「よし、ミーティア」

「……!? わ、私もぉぉぉ……」



 カチーン。



 みんな固まった。



「なにを遊んでいるのですか、カイトくん」

「トニー、すまんな巻き込んで」

「いや~、あの憎きシャロウを撃退出来のです。胸がすっとしましたよ。しかし、お嬢さん方は……」



 俺とトニーは、固まった三人を見渡した。


 ……これ、俺のせいだよなぁ。


 どう復活させるべきか――。

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