【11】 残響
「やめてください!!」
ルナが叫んだ。
「ヒヒヒヒヒヒ……やめてぇ! だってさ、アニキ」
「止めるわけねぇだろ。この小僧を潰したら、次はメイド、お前だ。その服をビリビリに破り捨てて、一晩中遊んでやろう。そして、俺の女に染め上げてやる」
「かぁ~~~~~! さすがアニキ! 俺にも少し味わせてくれよぉ~」
「いいぜ、弟よ。だが、その前にこの生意気で礼儀知らずの小僧だ」
アニキとかいう大男が俺の頭を掴む。
……くっ、まずい。
俺にはまともな戦闘スキルがない。
このままでは殺される。
せっかく店を作ったというのに、いきなりこんなワケの分からない連中によって潰されるのかよ。そんな理不尽な……。
なぜ、なぜ、なぜ俺ばかりが……!
いや、それは違う。今は俺だけじゃない。
ルナもいる。
店をやろうと誘ってくれたルナも。あの絶望の中で手を差し伸べてくれた彼女がいる。どうして、俺なんかを助けてくれたのか、その真意は定かではないけれど――。
だから、せめて、彼女の想いだけでも踏み躙らせてはならない。
そんな暴挙、俺が許さない。
そうして怒りが沸々と込みあげている最中、ふとあの時の絶望をフラッシュバックした。
『あんた使えないわね。ホント無能すぎて呆れるわ』
あの憎い声がなぜか響いて――
「うあああああああああああああああ……!!!」
怒りを爆発させ、俺は大男を蹴り飛ばした。
油断していた大男はよろめいて机に激突、倒れた。
「なっ……アニキ!! てめぇ、よくもアニキを!!」
弟の方がナイフを取り出し、風のような勢いで向かってきた。
……く、今度こそ万事休す!
もう打つ手なしと思われたが、
ルナが俺の前に、飛び出た――――。