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104/318

【104】 下がるレベル(ルナ視点)

 彼と手を繋ぐと光に包まれた。

 呪いが解けていくような感覚が全身を襲う。


 ふと見れば、下がっていくレベル。

 どんどん下がっていく。



 そしてついに……わたしは『Lv.1』に落ちた。



 カイトという男の『レベル売買』スキルが発動した途端――病の元凶であったレベルはみるみるうちに減ってゆき『Lv.9999』もあったソレは今や『Lv.1』へ。



 これは夢だろうか。

 あまりに現実離れしているこの事象に、少しも確信が持てなかった。実感がない。ありえない。普通はレベルを下げるなんて出来やしない。それが世界の理なのだから。でもその奇跡を少年は可能にしたのだ。これが誓約の力……。



 そうして、わたしの()むべき死の呪いは解かれ、命を救われた。



「――――」



 身体(からだ)にこれといった変化はない。

 手も足も。意識もハッキリしている。変わった部分といえば『死』だけ。それが忽然(こつぜん)と消え、わたしの寿命は常人と変わらなくなった。



 ――でも、少しだけ変化はあった。



 心臓が少しだけ高鳴っていた。

 死を回避した副作用か? それとも健康体になり、ずっと乖離(かいり)していた身体(からだ)が、回復速度に追い付いていないだけなのか。――ただ……わたしを助けてくれたあの少年を見ると……鼓動が震え、とても苦しかった。これでもう会えないと思うと、少し辛いとさえ思ってしまった。



 こんなよく分からない感覚は初めてだった。



 わたしは、死から解放されたと同時に、また新たな(やまい)をわずらったらしい。けれど、これは死よりも恐ろしいものではない。それはだけは分かった。



「――じゃ、俺は行く。顔の見えないお姫様、助かって良かったな。まさかこの世界に来て早々に人助けするなんて思わなかったけど、誰かの役に立てたのなら俺は嬉しいよ。そういう商人に成りたいと思っていたから」



 少年は照れくさそうに話し、背を向けた。


「ま、待って……」

「ん?」



「どうしてもお礼がしたい。……カイト様。あなたには命を助けて戴いた恩があるから……。なにが欲しい? 金か、女か、名誉か、地位か……望みのモノは何でも叶えよう」



「――いや、俺はもう莫大な報酬を受け取ったよ」



「……?」



 わたしには少年の言っていることが理解できなかった。彼は何も受け取っていないはずだ。余ったお金も丁寧に全額返してきたし、なぜそれほど欲に執着がないのだろうと、不思議に思った。


 釈然としない疑問が渦巻く中、カイトは青い瞳でわたしを真っ直ぐ見据(みす)え――ゆっくりと、そしてキッパリと言った。


「キミの『レベル』だよ。これで十分。俺は『レベル売買』が出来るんだよ。これを元手に稼ぐさ。じゃ、お大事に! お姫様!」



 そう少年は明るく去っていく。

 なにも見返りを求めないとは……まるで聖人君子のようだ。



 ……あるいは英雄か。



 けれど、彼は言っていた。



 最強の商人になりたいと。



 それが彼の最大の望みなのだ。

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