表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやら、俺にはオトコの娘と痴女しか選択肢がないようです。  作者: 翼
第一章 それが、彼らの出会い編
2/2

それは、初めてのキスだった。

「あのー…二人はお知り合いで?」


担任の女性教師が、俺と彼を交互に見て、問いかけてきた。


知り合いというか、なんというか…。

ていうか、俺はなんで立ち上がってまでこんなことを言ってるんだ…?

すると、俺が口を開く前に、彼が口を開いた。


「ええ、今朝助けていただいたので。…先生彼の名は?」


「…村山 航輝くんですけど…」


そう担任が、答えると、彼はこちらに向かって口を開いた。


「村山くん、今朝はありがとう。…それと、さっき詐欺だとかなんだとか言っていたけど…どういうことかな?」


彼は、鋭い目付きで俺を睨みつけてくる。


「ああ、もしかして、女の子だと思った?残念、僕はこう見えても男の子なんだ。」


彼は、嘲笑うかのように、自らを指さして言う。


「な、それが人に礼を言う態度か?」


俺は少し、怯えながら反論する。


「…僕が礼を言ってるんだ。それだけで十分だろう?」


「はぁ?そもそもお前が道端なんかで蹲っていたから──」


その瞬間、視界が歪んだ。

彼を映していた目は、今、天井を映している。


「──は?」


何が起きたのか、理解する前に、彼がもう一度視界に入ってきた。

どうやら俺は仰向けに倒れたらしい。

彼が、俺を見下ろしている。

そして、彼は俺の耳元で、


()()()()()()()()()()。黙ってろよ。」


他の人には聞こえないほどの声で囁いた。

俺は、こいつにぶっ飛ばされたのか…?


「おまっ…」


俺が、反撃しようと起き上がろうとした時、担任が割って入ってきた。


「もう!やめ!二人とも今日は、残って教室掃除ね!」


俺たちは、顔を見合わせ、そして、声を合わせて言った。


「「はぁ?!」」


そして、放課後。

俺と、彼は、教師に残り、掃除をしていた。


「…なぜ僕が、こんなことを」


彼は、ホウキで、ゴミをちりとりへ集めながら、文句を垂れた。


「仕方ないだろ。そもそもお前が、俺を殴らなきゃこうはならなかった。」


俺はホウキで床を掃きながら、言った。


「君が余計なことを言おうとしたからだろう。」


「それは…すまん」


「謝らないでくれ。気持ち悪い」


人が謝っているというのに、こいつは…。

どうやら彼は、プライドが高いようだ。


それからしばらく、お互いに話さず、掃除を続けていた。

「そういえば」と俺は気になっていることを、彼に問いかけた。


「確か、お前、苗字東坂だったよな?うちの学校となんか関係あったりするの?」


彼は、掃除の手を止めることなく、適当に答えた。


「父なんだ。ここの学園長が。」


なるほど、だから苗字が東坂なわけか。


「ふーん。じゃあ…結構金持ちだったりするわけ?」


「…君にはプライバシーってものがないのか。…まぁそれなりには」


やはり金持ちか。

…ん?じゃあなんで朝はあんなに疲労していたんだ…?


「なら、なんで今朝は、あんなに餓え死しそうだったんだ?」


「それは…」


そこで、彼は言い淀む。


「…言いたくないんだったら、別にいいけど。」


彼は、少し考えるような表情をしてから、口を開いた。


「…一人暮らしを始めたんだ。…でも今まで、一人で生活なんてしたことなかったから、料理も…その…、」


まともに作れないと。

だから、今朝はあんなだったのか。

しかし、あの堅物そうな学園長が、よく一人暮らしを許してくれたな。


「学園長。結構真面目そうだけど、許してくれたんだな。」


すると、彼は、首を横に振った。


「最初は、猛反対だったさ。でも何度も説得して、東坂学園に転入するという条件付きで、許して貰えたんだ。」


要するに、学園に居れば、ある程度監視できるから、一人暮らしを許したわけか。

しかし、そこまでして一人暮らしをしたい理由はなんなんだ?


「そんなに一人暮らしがしたかったのか?正直、実家で暮らしてた方が色々楽だぞ?」


「…あの家から出たかった。」


「…それ、どういう…」


俺が、詳細を求めようとすると、彼は、ホウキやちりとりを早々に片付けた。


「さぁ、もう終わりにして帰ろう。これ以上君と同じ空気を吸っていると、腐る」


「は?腐るだと?それはこっちのセリフ──」


あれ?また天井を見てる…。


「君も学ばないな。」


「…お前なんでそんな強いんだよ」


どうやら、俺は、背負い投げを受けたらしい。


「…こんな見た目だからね。せめて強くないと。」


なるほど、舐められないようにというわけか。

俺がいつまでも、仰向けで寝転んでいると、彼が不意に手を伸ばした。


「…どういうつもりだよ」


「いや、倒れてこちらを見上げている姿が、なんとも無様だったものでね。」


嘲笑うかのように言った彼は、その手を一層伸ばす。


「…お前、実は素直じゃないだろ」


「お前じゃない。僕には東坂 玲央という名前がある。」


「…そーかよ。…東坂。」


俺は、そう言って東坂の手を取る。


「ああ、それでいい。村山」


彼は、俺の手を思い切り引いた。


「驚いた、俺の名前、覚えてたんだな──」


しかし、東坂は、勢いをつけすぎたのか、バランスを崩し、バタンッと後方に倒れた。


「あ、」


腕を、掴まれていた俺も、それに巻き込まれ、東坂に覆い被さるように倒れる。


「ッ…」


俺が、東坂を押し倒したようになってしまった。


しかし、こいつ、改めて近くで見るとやっぱ可愛いな…。

同じ男とは思えないくらい、白く、肌触りの良さそうな肌と、小柄で華奢な体型。


そして何より…、今、()()()()()()()()()()()()()()…?!


「んなぁ?!」


俺は、勢いよく飛び上がる。

東坂は、俺を呆然と見つめたまま、自身の唇を指で触っている。

よく見れば、頬が少し赤いような…。

てか俺こいつと──


「やっほ〜!二人とも掃除終わっ…た…?」


教室のドアが突然開き、奥から、平西が現れた。

どうやら、部活帰りのようだ。

こいつは水泳部だから、髪が濡れているのでわかる。


「…なに、この重たい雰囲気…?」


「ひ、平西、どうしたんだ?」


「いや、玲央くんと、ついでに村山くんにも、話があって。」


ついでって…。

まぁいい、正直助かった。

このまま、二人でいたら、俺は間違いを犯してしまうところだった。

…まぁそんな勇気ないけど。

それに相手は男だし。

そう思って、東坂の方を見ると、内股になってペタンと座り、まだ、唇を弄んでいた。

それがどうしようもなく、可愛くて、やっぱり平西が来てくれて助かったと、心底感じた。


「…で?話って?」


「話があるのは私じゃなくて、ゆかちゃんだよ」


「会長が?何の用だ」


「知らない、わかんない」


ゆかちゃんとは、この学校の生徒会長の事だ。

そんな人から、話なんて、俺はまだわかるが、東坂まで呼ばれるなんて。


「とりあえず、生徒会室に行こう?」


「だな」


平西は、先に教室を出ていった。

俺は、まだ座ったままの東坂に、手を差し伸べた。


「…そういうわけだ、行こうぜ」


ダメだ、さっきのことで大分話しづらくなってる…。

しかし、意外にも、この手はすぐに掴まれた。

そして、東坂は、勢いよく起き上がり、俺の耳元で言った。


「…さっきのことは、誰にも内緒だ…」


俺は今日、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

オトコの娘とのキス…それは、彼にとって幸せなのか…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ