表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しゃもじ おひつ の オムニバスゥ   作者: しゃもじ おひつ
8/16

ライバル

人生において ライバルは必要だ

「アイツにだけは負けたくない」

そういう思いが 原動力になるからだ


けどね・・・

「ふぅん!」

ゴールデン・ジムで気合のウェィトを上げる

俺様の利き腕である右腕の

上腕二頭筋”フロント・ダブル・バイセップス”は

今日もキレキレだ

見てはいないがジム内の会員は

全て俺様の美しい筋肉に、くぎ付けだ

そう

アイツが

来るまでは・・・


「モーニン」

きたァァァ

こじゃれた英語をかましながら

アイツが

ジム内に現れやがったァァァ

「わぁ、おはようございます!」

「こんにちわ」

「今日も筋肉、キレてますね」

「トレーニングウェア、いい色ですね」

「今晩一緒に寝たいわぁ」

誰だ、最後に変なこと言ったやつぁ

それよりも

なんだぁ!?

今日のアイツのウェアは

ぴ、ぴぴぴ、まっピンクじゃねぇかァ

オトコは黙って黒だろうがァ

俺様は一気に機嫌が悪くなり

内心舌打ちを、ちっちちっちしながら

再びダンベルの上げ下げ”カール・デッド”を繰り返した


「やぁスミさん、今日もキレてますね」

ヤツが爽やかに俺様に挨拶してきやがった

気軽に”スミさん”なんて呼ぶんじゃねぇ

俺様の名前は”スミオカ”だよッ

そう怒鳴り返したいのを我慢しながら

「キレて無いスよ」

かちゃかちゃとダンベルを鳴らしながら

「オレぇキレさしたら大したもんスよ」

小声で

だーれにも聞こえないボリュームで

返事をした

そんな俺様を見ながら

アイツは

ウフフと笑って

すぃ、と大胸筋を鍛える”バタフライ・マシン”に座った

「ふっ、ふっ、ふ」

小気味良い掛け声を上げながら

マシンをこなしていくアイツ


「はァー・・・」

決まったタイムをマシンで過ごした後は

軽く息を吐きながらの

セミ・ポージング

軽く、鍛えた部位の筋肉を誇張させる

「ひゅう、さすがキレてるぅ」

「相変わらず良い筋肉ですね」

「オトコでも惚れますわ」

「次の大会は頂きですね」

「今晩、抱いてッ」

おいおい、段々穏やかじゃないコト言ってるヤツがおるぞ!?

そんな会話を横目に

俺様は今度は

ウェィト・トレーニングの花形

ベンチに寝そべってバーベルを上げる”ベンチプレス”のエリアに来た


くそぅ

アイツは俺様と比べて体つきも違わんくせに

ちやほや ちやほや ちーやほーーや、されやがってからに!

見てろよォ

今日の俺様はイケてる

このジム最高重量、ひいては俺様の自己最高でもある重量

”100㎏”あげてやらァ

俺様の体重が今”75㎏”あるかないか

絞れば70㎏はイケるから

100㎏あげれば

どうよォ!

ってなるべェ!

意気込んで俺様はベンチに寝そべった

「お、スミさん今日はチャレンジャーですねぇ」

準備段階で俺様のバーベルのウェィトに気付いたアイツが話しかけてきた

「ふっ」

俺様は口元をニヤリとゆがめると

両サイドに陣取ったトレーナー二人に目配せした

当然だが

万が一を想定して

トレーナーが二人ついている

イくぞォォォ!!




・・・俺様は今、トボトボと夜道を歩いている


結論から言うと

俺様のベンチ・プレスは大失敗

支え器具から外して

胸元におろした100㎏のバーベルを一度も上げることなく

あわれ首絞め状態になってしまう所を

二人のトレーナー&アイツに助けられる羽目になった

大事を取って暫く控室で休ませてもらった後

しょんぼりと帰る羽目になっているわけだ

「トホホ」

声にならない声で

独り言を漏らした俺様は

行きつけのゲイバーに飛び込むと

店のママに

事の次第を洗いざらいぶちまけていた

「そりゃぁスミちゃん、ダメだわ」

腕組みをして黙って聞いていたママは

開口一番そう言い放った

「変な気起こして、自滅してるんじゃ世話ないわね」

辛辣すぎる

俺様はますます体を小さくする

「でもまぁ」

細長いメンソールのタバコをもみ消した

筋肉もりもりのゲイバーのママは

そのごっつい腕をカウンターにつき

俺様の顔を覗き込んだ

「これでめげるスミちゃんじゃないでしょ?」

濃いアイシャドーを施したラメラメの瞼をウィンクさせる

「さ、気を取り直して何か飲みなさいな?」

くるりと起き上がって背中を向けたと思うと

その素晴らしい広背筋をしならせて

上半身だけをこちらに向ける

「何飲む?」

見た目と違って

実に”女の子”してるママに

俺様はホッとしつつも

注文をする


「ぁ、バナナ・ジュースを。プロティン入りで」







失敗してもそれをフォローしてくれる人がいるって、いいよネ!


あれ・・・


ライバルの話だっけか?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ