はなれたくない ふたり
モノにはイノチが宿るという
だがそれを確かめるすべはない
宿ったイノチは一体何を考えているのか・・・
気が付いた時には何時も ふたり だった
他は知らない
ふたり である
この事実だけが世界の全てだった
「ねぇ」
相方が話しかけてくる
「ん?」
話しかけられたのが嬉しいくせに
わざと気のない返事をする
「今日もさ、今日も・・・一緒に居ようねっ」
そんな素振りを気付いてか気づかないふりか
分かったうえで相方は甘えてくる
「あ、あぁっ」
そんな相方につい気が緩み
良い返事をしてしまう
こんな自分が情けない
にこりと相方が笑う
その笑顔に
もう
どうでもいいや
と、考えてしまう
「おいおい」
そんな二人の世界に
不意に割り込んでくる奴が居た
「誰だ?」
思わず声を荒げてしまう
相方もびくりと
身をすくめた
「オレだよ、オーレ」
そいつは何時も俺達に纏わりついている
カゲ みたいなやつだ
「なんだ、何か用か」
幸せな時間を邪魔された
そんな気分がついつい言葉に現れてしまった
「へへへ、別に用って訳じゃ~ねぇんだけどよ」
「じゃぁ話しかけるな」
「そうつれなくすんなよ~ぅ」
カゲ はそう返してくると
ふたり にまとわりつく
「いつもいつも仲が良いようで?」
そう言うと相方に顔を寄せて
舌を出してちろちろする
相方はそれをイヤイヤと
顔を背けて回避しようとする
「いい加減にしろよ」
怒気をはらんだ声で威嚇してしまう
「おぉ怖い怖い」
カゲ は相方へのいたずらをやめると
身をすくめる
その様子を見下ろしながら
怯える相方の肩をそっと抱き寄せる
「ふふふ、知っているかい?」
間をおいて
カゲ が問いかけてきた
「何を、だ?」
先程までの態度に
いらツキを隠せないまま返答する
「仲睦まじい君たちには、言いにくい事なんだが・・・」
そう言いつつ
カゲ はこちらを見つつ
またもや舌をちろちろする
「もったいつけずに早く教えろ」
その態度に業を煮やし
せかしてしまう
「君たちに 別れ が近づいている」
「何だと!?」
唐突な予言じみた言葉に
即座に反応してしまう
その合間に
カゲ は、舌を
ちろちろと出している
「いい加減なことを言うな!」
「いい加減じゃぁないさ」
「なんで」
「なんでそんなことがわかる、だろぅ?」
カゲ はこちらを穿つような眼差しで見つめてきた
「わかるのさ。オレには、な」
途端に カゲ は
切なそうな表情になる
「オレだって、な。お前さん方とは別れたくない」
「何を・・・」
「特に、そちらの 相方 さんとは、な」
急に悩まし気な表情で 相方 の方を見つめる カゲ
「やめろ、よせ、そんな目で見るな」
大事なものを汚されるような
嫌な気分になり
思わず口から言葉が出る
「分かるんだよ。オレ には、な」
カゲ は、視線を落とし呟くように言葉を絞り出す
しばしの静寂が支配したのち
不意に その時 が訪れる
「!、きた、きた、きたッ」
カゲ が騒ぎ出す
「なんだ?何が来たんだ!?」
「終わりの時だ!!」
カゲ が叫ぶと
俺たちの身体が
急に空中に浮かび上がった
「あぁ!?」
「きゃぁ」
「わわわッ」
居心地のよかった場所から
空中に引き抜かれた俺達
「あぁ、あーーーーーーッ」
叫びと共に
カゲ が俺達から引き離される
くしゃ
断末魔の音を立てて
カゲ の意識が消える
「そ、そんなッ」
「ば、ばかなーーーーーッ」
ふたり の叫び声もむなしく
今迄一緒だった ふたり の身体も
引き裂かれた
「ん・・・?」
「どしたんスか、センパイ?」
駅前のラーメン屋で
割り箸 を手にした俺に
後輩が声をかけてくる
「いや・・・なんか・・・」
少々気になったが
俺は
割り箸 の入っていた
丸めた
袋 を左手で弾くと
キレイに割った
割り箸 を手に
塩ラーメンを
豪快に
すすった
元々一つであったものを
二つに分かつのは
少々気が引ける
たとえそれが
運命だったとしても、だ