胡瓜と桃の話
ラッキースケベ
甘美な響きではあるが
時と場合によると言う事だ
これはそんな場面に出くわしてしまった男の物語
※少々下ネタ的な表現があります
苦手な方はブラウザ・バックでどうぞ
俺は硬派だ!
北野国農業高校二年一組、ジュウモンジ タケル
自他ともに認める硬派で通している
学校の名前が示す通り
ここは雪深い土地だ
冬になるとうず高く雪が積もり
通学するには公共機関
バスで通学する以外方法が無い
しょうがねぇな
夏になれば硬派な俺の剛脚をうならせて
愛車の”流星号”ことスポーツ・バイシクルを
かっ飛ばして通学出来るんだが・・・
今は冬だ
雪が深すぎて流石の”流星号”も出番無し
ここは辛抱して
バス通学をするしかないのだ
さて今日も退屈な勉学が終わった
帰りはバスだな
今日もさらさらと粉雪が降りやがる
外に出ると少し肌寒い
なぁに
バスに乗れば暖房が効いていて
それ程寒くも無い
バス停で待ちながらそんな事を考えていた
粉雪が降る中をゆっくりと
俺が乗る予定のバスがやって来た
やれやれ、ようやくか
肩と帽子に積もりかけた粉雪を払い落とし
バスに乗る準備をする
お世辞にも新車とは言えないバスが
停留所に止まり
プシュー
と排気音を鳴らして乗降口が開く
列に並んでバスに乗り込むと
座席は満席に近かった
一番奥は・・・埋まってるな
仕方ない
硬派な俺は場所を選ばない
すぐそばに空いていた
一人用の座席に腰を下ろす
ラッキーだったな
座席に座って帰れるなんて
幸せだな
その時はそう、
その時は、本当に、そう、思っていた・・・
幾つかの停留所を停車し
バスの中は更に混んできた
そんな中
停留所から一人の老婆が乗車してきた
俺は硬派だ
無論
すぐさま席を立ち
その老婆に席を譲る
「あんれまぁ、すまないねぇ」
老婆にお礼を言われるが
硬派な俺は口元を”ニッ”と曲げて
帽子のつばに軽く手を当てて
会釈を返した
そして吊革を掴み
直立不動の状態を取った
・・・バスが更に更に、混んできた
おかしい
何時もなら
こんなに混むはずが無いのに
しかも
硬派な俺の横には
女学生がた立っていて
人に押されて
密着状態に
いかん
俺は硬派だ
このままでは
硬派な俺は
”バスで女学生と密着していた”
等という
不名誉な称号を得てしまう
それだけは阻止せねば
しかも
なんで
おんにゃのこって
こんにゃに
柔らかいのだッ!
未曽有の感触が
硬派な俺に
衝撃的な
事態を引き起こしていく
長官ーーーーッ!
俺の中の誰かが
長官殿に進言している
「なんだ!」
長官殿が答えている
「ハッ報告致します!このままではッ」
「このままでは?」
「このままでは、我が軍の”胡瓜”が曲がって育ってしまいます!」
「なんだとーーーーーーーッ!!」
大変な事になった
”胡瓜”が曲がって育ってしまうらしい
「何と言う事だ!何故もっと早く気付かなかったのだッ!?」
「ハッ申し訳ありません」
「これはいかんぞ、早く対策を立てなくては・・・」
至急対策を立てるらしい
これで胡瓜が曲がって育ってしまう事は
回避されそうだ
良かった
曲がりなりにも
農業高校在学のこの俺が
曲がった胡瓜を育てるなんて事は
あってはならないのだ
バスは停留所に止まった
今だッ
俺は素早く体を入れ替え
女学生の密着状態から
脱出した
何食わぬ顔でポケットに手を入れて
「小銭あったよな・・?」
てな事を言いながら
もぞもぞさせる
長官ーーーッ
胡瓜の曲がりは修正されましたーーッ
そうか良くやったッ
長官殿も一安心だ
だが
次の瞬間
とんでもない事が起こった
なんと
バス停から
沢山の人が乗り込んで来たのだ
・・・そのせいでさっきまで横にいた
密着状態から離れた女学生が
事もあろうに
硬派な俺の目の前に
スライドしてきた
しかも背中を向けて
あっかーーーーん
隊長ーーーーーーーッ!!
隊長が呼ばれた
「なんだ、どうした?」
「そんな悠長な場合ではありません!」
「何があったぁ?」
「桃が、桃がッ!!」
「桃がどうした?」
「我が軍の胡瓜を圧迫しておりますッ!!」
「ぬぁにぃぃーーー!!」
圧迫されたらしい
「まずいな。このままだと胡瓜が持たんぞ・・・」
「どうしましょう?何か対策は」
「それを今から考えるんだよスカタン」
スカタン呼ばわりされた
だが
確かにこの状況はマズイ
何とか打開策を考えねば
「ニイちゃん、顔色が悪いけど大丈夫かい?」
先程席を譲った老婆が話しかけてきた
しまったッ
知らず知らずの内に
切ない表情が顔に出てしまっていたか
「いえいえ、大丈夫ですよおばあちゃん」
「そうかぃ?何か席を譲ってもらったのに悪いねぇ」
済まないが今はそちらに構っている暇は無いんだよッ
心の中で盛大にどやしつけたいのをガマンしながら
硬派な俺はニヒルに笑って返す
その時
ガッタン
バスが段差に当たって大きく揺れた
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っつ!!!!!
なんで
こんな時に
師匠~~~~~~~~~うッ!!!!
思わず師匠を呼んでしまった
「どうした、馬鹿弟子?」
「師匠、こ、この」
「この、なんじゃ?」
「この感触はイカンともしがたいのですがッ!!」
「知らんがなー」
師匠にさじを投げられてしまった
その間にも
「長官、このままでは胡瓜の耐久力が限界を超えてしまいます」
「限界を超えるとどうなる?」
「申し上げにくいのですが・・・」
「うむ・・・」
「胡瓜が$kあせ#4&’)%」
最後の方がよく解らなかった
おまけに
何故かは知らないが
雪道の状態が悪いらしく
断続的に上下振動が襲ってきた!
だ~~~~っはっはははははは!!!!!!
「そういえばニィちゃん、名前は何ていうの?」
おばあちゃん、今そう言うことを聞かれてもですねへへ
おこたえへへすることがへへへ
「・・・ジュウモンジ先輩・・・」
ッツ!!
バスに乗っていた誰かが
俺の名前を!!
「ほぉ、ニイちゃん”ジュウモンジ”っつうのけ」
呼ばれた名前に反応してしまった俺を見て
老婆が名前の確信を得たようだ
くそうッ俺の名前をチクった奴ッ!
探し出して絶対、しめめめめめめめ
そんな会話を続けながらも
バスは上下運動を繰り返しながら進んでいく
「だ、だんなぁぁぁ!!」
「どうした!?」
「このままじゃ”桃”の摩擦で”胡瓜”の限界が突破されますぜ?」
「だがそれがいい」
どこの花の慶次だよ
「ニィちゃん、ところでな・・・」
ババァが何か話しかけてきてるがそれどころじゃねぇ!
こっちゃぁそれどこじゃねーーんだよおおおおおおおおお
・・・ふぅ
硬派な俺は
耐えきったぜ・・・
長官、胡瓜の限界値は小康状態を回復致しました!
うむ、そうか御苦労。良く頑張った、感動した!
長官も感動してるよ
うん、うん・・・
混雑していたバスも
街中の停留所で
一気に人数が減り
五月蠅かった
バ・・・老婆も
何時の間にか降りて
居なくなっていた
嵐は過ぎ去ったのだ
”桃”の襲撃という嵐は、な・・・
あれから随分と時が経った・・・
硬派な俺は
成長し
農家を継いで
元気にやっている
今でもふと
冬のバスを見るたびに
あの日の出来事が
頭をかすめる
桃と
胡瓜の
せめぎ合いを・・・
※この話はフィクションです