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しゃもじ おひつ の オムニバスゥ   作者: しゃもじ おひつ
14/16

超機動戦艦アカツキ発進せよ!

西暦5800年。人類は宇宙に幅広く進出し我が世の春を謳歌していた。

だがしかし遥か銀河の奥より飛来した異星人との問答無用の侵略戦争に

巻き込まれてしまう。

そして更に100年が過ぎようとしていた・・・

西暦5900年

人類は異星人との最終決戦に向け

新造艦”超機動戦艦アカツキ”の処女航海に向けた進水式を行っていた

「そろそろかね」

宇宙に広がる大艦隊を閲覧できるメイン艦船のブリッジで

艦隊総司令のマキノはそう尋ねる

「そろそろですな」

尋ねられた副指令のミズノは顎髭をさすりながら返答する

「巡洋艦並みの船体に、軍艦10隻分の費用をかけた船だ」

マキノは乾杯用のグラスを手に取りもてあそぶ

「どんな性能なのか非常に楽しみだ」

グラスに映る己が顔を見てほくそ笑むマキノ

「はぁ・・・」

気乗りのしない返事をしてミズノは視線を逸らす

まるで新しいおもちゃを待ちかねる子供だね

心の中でマキノをそう評したミズノは

宇宙線の影響を受けないように加工された窓から外を眺める

「お、あれか?」

アーミー色の強い艦隊の中を

クリーム色のゴマ粒のようなモノが動いていく

「そのようですな」

外宇宙の漆黒の色に紛れることなく

クリーム色のゴマ粒はしずしずと先頭に移動していく

「ん~良く見えんな?」

「最大望遠に致しますか?」

「うむ」

そんな会話を交わしている間にも

お披露目となる艦隊の正面に移動するゴマ粒

「最大望遠、でます」

オペレーターの声が響く中

ウィンドウモニターが展開して最大望遠で映し出される”アカツキ”

「ほう、これが!」

「美しいですな」

おじさん二人がモニターに映し出された艦影の美しさに感動する

「何でこんなに目立つ色に?」

「提案書、読まれましたか?色々と戦略的な」

そこまで会話が進んだ時

ぐにゃり

と、モニターが歪んだ

「む」

「ぬ」

その場に居る全員が違和感に気付き

歪んだモニターを凝視する

その歪みが元に戻った時

最大望遠に映し出されていた”アカツキ”は

消失していた

「・・・消えたな」

「・・・消えましたな?」

背後でオペレーター達の怒声が響く中

艦隊総司令のマキノは

戦艦10隻分の費用、どうしようかしら?

等と不埒な考えを巡らせていた



「被害状況を報告せよ」

”超機動戦艦アカツキ”の艦長ミツルギは

動揺を隠すようにブリッジのオペレーターに指示する

「は、はぃぃ」

指示されたオペレーターは誰もかれもが新人で

まともに艦隊経験を積んだ者が皆無という状況だった

何で新造戦艦なのに新人ばかりなんだ?

艦長ミツルギは上層部の頭の中を疑いながら愚痴をこぼす

船だけは新造艦だけあって

超が付く最新設備で埋め尽くされているが

所々に未知の新技術も導入されていて

巡洋艦勤務からの叩き上げの艦長であるミツルギには

モルモットにされているようにしか思えなかった

「まぁ愚痴っても仕方ないか」

自身が天涯孤独の身である為

船に乗る人員は家族のように接していこうと決めていた

「慌てなくていい。落ち着いてやれば問題ない」

浮ついた新人達を落ち着かせる為

あえて張りのある声を出して鼓舞する

それを受けて強張っていた新人達の空気が緩む


「それにしても」

ミツルギは船外カメラが映し出す映像を眺める

明らかに地球型の惑星上

明らかにジャングルだらけの未開の地

広大な宇宙空間から

何故にこの場所に?

尽きぬ疑問は数あれど

現状一番の恐怖は

艦隊本部との通信が回復しない事だ

最新鋭の新造艦を

あっと言う間にスクラップにしたとあっては

自身の進退にもかかわる

内心ドキドキしながら

事の推移を伺うしかなかった


「報告致します」

落ち着きを取り戻し

キリリと銀縁メガネをかけ直したオペレーター女史

名前は何と言ったか?

そんな心の内を見透かされてか

「ナミオカです」

先に名乗られてしまう

むう、と言葉に詰まるが気にされずに報告が上がる

「船体に大きな損傷は見当たりません。人員も無事です。ですが」

「ですが?」

「本艦は宇宙航行専用です。大気がある惑星からは離脱出来ません」

「何故だ?最新鋭艦だろう」

「正確にはブースターとなるオプションが必要です」

矢継ぎ早に出る疑問をさらさらと受け流される

新人でも優秀は優秀か・・・

頭の中で考えを纏めるとミツルギは指示を出す

「船の状況は確認した。総員第一次警戒態勢を取れ!」

第一次警戒態勢は戦闘を前提としたものだ

船内のアラームが鳴り響き

一瞬にして緊張感が走る

「通信オペレーターは引き続き本部との交信を繋げる作業続行だ」

今だ繋がらない通信を気にしてしまう

「ナミオカ君」

先程のオペレーター女史を呼ぶ

「はい」

「大気圏内での飛翔航行は可能だろう?」

「はい。ですが高度は大気圏内までです」

「上等」

そこまで確認すると

操舵手に指示を出す

「メインエンジン起動、船体スタビライザーを起動させ安定を図れ」

「了解しました」

操舵手の返事と共に

船体のエンジンに火が点る

「アカツキ、発進」



エンジン音が響き渡ると共に

クリーム色をした船体が

緑のジャングルから飛翔を開始する・・・

宇宙戦争の切り札として製造された新造艦が

単独で大気圏離脱出来ないとは何事だ

とか

これっぽっちでスペースオペラを始めようっての?プゲラっちょ

とか

色々言いたい事はてんこ盛りだが

兎にも角にも

超機動戦艦アカツキは発進した!

発進したといったら発進したのだ!!




というわけで、発進しました!

ヨカッタヨカッタ・・・

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