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しゃもじ おひつ の オムニバスゥ   作者: しゃもじ おひつ
12/16

カラスの子 ー2

前回までのあらすじ

コンビニ前のゴミ箱に群がるカラス退治に乗り出した”ぼく”は

”不思議な叔母さん”に出会ったことによって標的であった

”カラス”へと変貌を遂げる・・・

カラスの子】  ー2




「う、うそだ・・・!」

コンビニの自動ドアのガラスに映った”ぼく”の姿は

紛れもなく”カラス”そのものだった

余りの出来事に”ぼく”は呆然とその場に立ち尽くしてしまう

「ちっ」

コンビニに入ろうとしたお客さんが”ぼく”を見て舌打ちをする

ガラスに映ったその映像を見て”ぼく”は戦慄する

ゆっくりに見えるが確実に

そのお客さんは”カラス”の”ぼく”を蹴飛ばそうとしていたのだ

「あぶねぇッ」

怒鳴り声が聞こえたのと

”ぼく”が動き出そうとしたのが同時だった

危うく蹴り飛ばされる寸前

”ぼく”は横っ飛びに蹴り足を交わした

恐怖に見上げる”ぼく”を横目に

お客さんはコンビニに入って行った

「おいッ何やってんだ、こっちにこい!」

先程の怒鳴り声の主が遥か上の方から声をかけてくる

見上げると

電柱の電線に一匹の”カラス”が止まっている

「こっちだ、早く!」

その”カラス”は尚も僕を呼ぶ

ふと気が付くとコンビニに出入りしようと

何人かの人間が歩いて来ていた

おまけに店内から店員さんらしき人が

掃除用のホウキを持って出てこようとするのが見える

先程の蹴り足の恐怖が蘇る僕に

更に声をかけてくる”カラス”

「早く、早く!」

そんなこと言ったって・・・!

”ぼく”は戸惑いながらも

迫り来る脅威から逃れるべく

二~三歩、横に飛び下がる


不思議な事に

バランスを取るために広げた腕が

空気を掴むような感覚で

”ぼく”を空中に浮遊させる

そうか

”ぼく”は”カラス”だから翼があるんだ

漠然とそんな考えが頭に浮かんだ

「急げって!」

上の電線から尚も声がした

見るとコンビニの店員が自動ドアから出て来た所だ

手にしたホウキを見て

”ぼく”は意を決して腕を羽ばたかせる

無意識のうちに”ぼく”は翼となってしまった両腕を使い

空へ飛びあがった


すごい・・・

”ぼく”は空を飛んだ

しかも自然に

初めて空へ飛びあがったのに初めてじゃない

実に不思議な感覚が”ぼく”の中にある

そのまま

”ぼく”は空高く舞い上がり

声の主の”カラス”の横に舞い降りた

自然と電線に足を絡めてバランスをとる

・・・初めてのはずなのに・・・

何だか体が勝手に動いてる感覚だ

「ったく、危ない所だったな?」

隣の”カラス”はそんな”ぼく”に話しかけてくる

ちらと横を見ると

その声には聞き覚えがあった

先程”ぼく”を起こしてくれた声の人だ

「地面で寝てたと思ったら不用心にアイツらに近づきやがって」

”カラス”はクチバシで自分のお腹辺りをこする

「寝ぼけてたのか?」

そう言いながら眼下のコンビニの店員に視線を落とす

つられて視線を落とすと

両手にホウキを持った店員が舌打ちをしながら

所在なく地面を掃き掃除していた

「くっく・・・お前が逃げたもんだから、くっく」

その様子を見て隣の”カラス”が笑う

何だか”ぼく”も可笑しくなってきて

つられて笑った

「くっく・・・オレは”ジロウ”ってんだ。お前は?」

そう言って名乗って来た”ジロウ”に”ぼく”は名乗る

「”ぼく”だよ」

「”ぼく”ぅ?変な名前だな」

そう言うとジロウはおもむろに翼を広げる

「オレはそこの裏山にねぐらがある」

羽ばたいて飛び上がりつつ

「縁があったらまた会おうぜ!ヤツらに気を付けてな!」

ジロウはそこまで言うと、空中で旋回して飛び去って行った


「どうしよう」

思わずそんな言葉が口からこぼれる

どうやら”ぼく”は”カラス”になってしまったらしい

理由は解らないけども心当たりはある

あの”叔母さん”だ

コンビニ前で”ぼく”の武器である棒を取り上げた”叔母さん”

あの後からの記憶があやふやだ

きっと何か・・・


「おやおや立派な”カラス”になったねぇ」

急に声がしてびっくりする

声の方に振り返ると

そこには白い大きな鳥・・・種類は解らない・・・が電線に止まっていた

「だれ・・・?」

その白い大きな鳥は首をかしげるとクルクルと音を出す

「だれ、とは御挨拶だね。まぁいいや・・・カラスになった感想はどうだい?」

白い大きな鳥はそう言うと更にクルクルと音を出す

どうやら笑っているようだ

「わかった・・・アナタは”叔母さん”でしょ!?」

”ぼく”は白い大きな鳥の正体が

コンビニ前で出会った”おばさん”であると確信した

「ほう、気が付いたかい?馬鹿では無いようだねぇ・・・」

白い大きな鳥は翼を広げて威嚇するようなポーズをとる

その姿はまるで・・・

「坊や、お前はカラスになったんだ。暫くその姿で反省するんだねぇ」

白い大きな鳥だった”おばさん”はそう言うと飛び上がる

「待って”ぼく”を元に戻して!」

その問いには答えず白く大きな鳥は背中を向けて飛んでいこうとする

「待って!」

”ぼく”も後を追うように両手の翼を羽ばたかせて飛び上がる

クルクルと音を鳴らした白い大きな鳥は

そのまま加速して飛び去って行く

”ぼく”も一生懸命に羽ばたいて後を追ったが追いつけない

それどころかあっという間に引き離されて

白い大きな鳥は彼方に消えてしまった

「そんな!」

”ぼく”はショックで愕然とする

そして翼を動かすのに疲れてしまい

高度を落として着陸せざるを得なくなった


暫く電線の上で休んだ”ぼく”は

考えても仕方ないので家に帰ることにした

今日はお父さんとお母さんが家にいる

きっと”ぼく”の帰りを待ってる

こんな姿になったけど

きっと”ぼく”だって分かってくれる

そしたら元に戻す方法を一緒に考えてくれるはず!

そこまで考えを纏めると

”ぼく”は家めがけて飛び上がった


「ただいま!”ぼく”だよ、お父さん、お母さんッ!」

家の玄関で”ぼく”は大声で叫ぶ

身体がカラスになっているせいで

玄関のドアが開けられないからだ

仕方が無いのでノックの代わりに

くちばしでドアをつつく

「聞こえないの!?お父さーん、お母さーん!」

尚も、くちばしでドアをつつく

「開けてーー!」

大声でわめきたてると

中で声がし始めた

「気が付いてくれた!良かった!」

”ぼく”がホッとしていると玄関のドアが開く音がする

期待に満ちた”ぼく”の目に映ったのは

怖い顔でゴルフクラブを握りしめたお父さんと

その後ろで恐怖におびえた顔をしているお母さんだった

一瞬で何が起こったのか理解した”ぼく”は

すぐさま飛び上がってその場を離れる

このカラスめ

そんな言葉を発しながらお父さんがゴルフクラブを振り回した

すんでの所でそれを躱した”ぼく”は

玄関の上で旋回する

「お父さん、お母さん、”ぼく”だよ!分からないの!?」

大声で呼びかけるが二人とも顔をしかめて睨みつけるだけだ

「お父さん、お母さーーーん!」




「えぇ、玄関先でカラスが騒いでるんですよ、何とかなりませんか?」

女性は携帯電話で警察に連絡しているようだ

「このカラスめ、何でこんなに騒いでるんだ?」

男性はゴルフクラブを握りしめながら忌々し気に空を見上げる

その視線の先には

「カアカア」

と泣きわめく一匹のカラスの姿があった


カラスになってしまった”ぼく”は

果たして元の姿に戻る事が出来るのだろうか?

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