カラスの子 ー 1
コンビニの正面に設置されているゴミ箱
今は時勢により撤去されていたりするが
以前は何処のコンビニでも使用出来ていた
これはそんな時代の物語・・・
カラスの子】ー1
とある昼下がり
コンビニエンスストアの出入り口で
数人の小学生がたむろしていた
「ちぇ、またカラスのやつが」
仲間内の一人がそう、つぶやく
コンビニ前に設置されているゴミ箱
そのゴミを狙ってカラスが寄ってきたのだ
小学生達は買ったばかりの
チキンの唐揚げや
スティック状の棒菓子
ジュース等を口に運んでいる最中だった
その内の一人
この物語の主人公”ぼく”は
今まさに唐揚げを口に運ぶところだった
かぁ
カラスの鳴き声と共に
ぼくの手にあった唐揚げがカラスに狙われた
「あ」
翼のはためきがぼくの頬を打つ
手に持っていた唐揚げを
残らず地面に落としてしまった
「っこ、このっ!!」
思わず激高してカラスを手足で追い払う
かぁ
鳴き声を発してそれをかわし
地面に落ちた唐揚げを咥えて飛び去るカラス
「あ~あ・・・」
それを傍らで見ていた仲間はそんな声を上げる
地面に転がった残りの唐揚げを見て
ぼくは涙目だ
「この唐揚げってさ、鶏肉だよな」
「カラスも鳥だろ?共食いってならないのかな」
ぼくを尻目に仲間達はそんな会話をし始めた
「どうだっていいよっ」
吐き捨てるように言葉を出す
ぼくの心の中には激しい怒りの感情が渦巻いていた
ぼくは木の棒を手にしていた
長さは1.2m位。野球のバットより長く
太さは握って指が届く程度
コンビニ前のゴミ箱に集まっていた
2~3匹のカラス目掛けて
ぼくは突進した
「えい、えい、えい」
目星をつけてめちゃめちゃに棒を振り回した
かぁ
カラスは素早く逃げて被害を受けなかった
だが
今日のぼくは、ひと味違う
棒の長さを頼りに
追撃した
「ふ、ふ、ふ」
びゅんびゅんと棒を突きだし
動きの遅かった一匹に攻撃を加える
かかぁ
一回だけ、何処かに当たったようだ
いつもと違う鳴き声を上げてた
飛び去って行ってしまったが・・・
「ふぅふぅ」
軽く一汗かいた感じになったぼくは
棒をゴミ箱の横に立てかけて
・・・こういう物を持ってお店に入るのは
如何にも怪しい人だからね・・・
コンビニに入り
炭酸入りのジュースを購入した
店を出てペットボトルの口をひねり
ぷしゅ、と炭酸の抜ける音を聞きながら
キャップを外して口をつける
ゴクゴクと飲み込む炭酸入りのジュースは
甘くて刺激的だった
「ふぅ~」
一旦口を離し、一息つく
「・・・この棒は、坊やのかい?」
突然、声をかけられた
見ると知らない叔母さんが
ぼくの武器である棒を片手に
こっちを見下ろしていた
日差しが逆光になって
顔がよく見えない
だがしかし
体つきや物腰
声などから
相手が女性であることは間違いなさそうだった
「・・・そうだけど、叔母さん、だれ?」
急に声をかけられたことよりも
ぼくの武器である棒を
何故勝手に持っているのか
その事がぼくを一層苛立たせていた
「ふふん、そうかい。このキケンな代物は坊やのかい」
叔母さんはそう言いながらも
ぼくの武器である棒を手放さない
「かえしてください」
ぼくは憤然とペットボトル片手に
空いているもう片方の手を突き出す
叔母さんはその手を見ながら
「さっき、な・・・カラスを追い払ったのは坊やだろう?」
唐突にヘンなことを言い出した
「そうです、いいから返してください!」
何か様子がおかしい
逆光で見えない顔なのに
目だけがギラギラしてよく見える
冷たい炭酸ジュースを飲んだばかりなのに
喉がひりついて
額から汗もこぼれ落ちてきた
・・・そんなに暑い日じゃ無かったはずなのに・・・
そんな事をちら、と考えながら
ぼくは毅然とした態度で
武器である棒の返還を求めた
「かえして!」
今日はこのままコンビニを回って歩き
カラスを追い払って回るんだ
・・・そう決意して来たのに
こんな一件目で邪魔が入るなんて
ぼくはイライラしながら
考えてきた予定が狂っていくのを感じていた
「・・・罰が必要だねぇ?」
急にそんな事を言い出す叔母さん
「え?」
思わず聞き返したぼくの
視線の先には叔母さんの
妙にギラギラした眼差ししか
見えなくなった
「おい、起きろよ」
誰かに体を揺さぶられ
ぼくは閉じていた目を開ける
「こんな所で寝ていたら、奴らにやられるぜ?」
ぼくを起こしてくれた人?は
そう言い残すと何処かへ行ってしまった
ばさばさ
?
ヘンな音が聞こえた
ぼくはまばたきして辺りを見回した
どうやらコンビニの横にある
駐車場の縁で寝てしまっていたようだ
何故か体が重い
記憶も曖昧だ
どうしてこんな所で
寝ていたんだろう?
色々なこ事を考えているうち
妙な事に気がついた
周りの建物や
足下の縁石が
妙に大きいのだ
・・・見間違いじゃ無い
確実に、大きい
何だ?何が起こった?
ぼくは狼狽して辺りを見回した
急いでコンビニの前まで走り寄っていく
やけに遠く感じる・・・
ようやくコンビニ前まで来たぼく
・・・とても巨大だ
小学生のぼくには大きかった自動ドアが
更に大きく見える
その時、衝撃的な出来事が
自動ドアのガラスに写るぼくの姿が
なんと
カラスだったのだ
ちょっと気取った小説家みたいに
オムニバス書きたくなった・・・
そんだけッス!