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加害者と被害者と凶器の異世界転移  作者: 前だけ弄ろうとします
3/3

勇者

異世界へと転移した加害者と被害者と軽トラック

魔王を討つ為、世界を救う為、遂に地上へとたどり着く

しかし不慮の事故で魔王を轢いてしまった

魔王の安否は如何に

ケイの異世界転移アタックをもろに受け、大空へと飛び上がる魔王

その身は自身で巻き上げた聖気に突入しレアに仕上がるも、なお上昇を続ける

重力からは逃れられず自由落下を経て聖気による二度焼きを経てミディアムに仕上がった魔王が地面に叩きつけられる


「ごぶぷぅ」


魔王の肺の酸素が地面との衝突により捻り出され、なんとも情けない音が魔王の口から吐き出される


勇者と魔王の決闘を見届けようと囲んでいる魔族たちは状況を飲み込めず一同が放心状態の中、

ケイの身から颯爽と降り立ち見慣れた土下座を繰り出す加賀


「この度は大変申し訳ありませんでした!!!」


「轢いちゃってごめんなー」


こんがり仕上がった魔王に対し、2度目のコピペの様な土下座を誠心誠意行う加賀とケイ


「見事だ・・・勇者よ・・・、我が力の全てを持ってしても貴様には遠く及ばなかった・・・」



加賀を勇者と勘違いした魔王は、自身の事をここまで追い込んだ加賀に賞賛を述べた

しかし加賀は相手をただの一般人と思っている

何故なら勇者一行にとっては現在いる場所はアニルス公国であり、目の前の存在はケイが誤って跳ね飛ばした一般人なのである



「すぐに怪我を治します!スキル:神酒の雨乞い!」



加賀がその両手を天高く上げる、淡い虹色の雲が広がり煌めく水滴が天から魔王に落ちてくる

そう、大気に残る聖気を巻き込んだ神酒が・・・



「ぐはぁぁああああ!」



魔王の体の神酒に触れた個所から煙が上がる、魔王は身を捩りのた打ち回る

人間にとっては硫酸の雨に打たれるような物だ



「加賀さん!ストーップ!!その人?は人間じゃない、魔族だよ!治療がなんか逆効果になってるみたい!」


「ぇえ!?」



パッシブスキルの異世界通により、目の前の存在が人間ではないと理解した比嘉が加賀の魔王公開処刑を制止する

助けようとした存在が魔族であり、治癒のつもりが拷問に成ってた事を知らされ慌ててスキルを止める加賀



「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」



息も絶え絶えのウェルダン魔王

焦げた体から瘴気の代わりに煙を細々と上げ、目も虚ろである

魔王は強く感じた、勇者には決して敵わぬ・・・



「私は・・・何て酷いことを・・・」



またブルーになる加賀



「加賀さんのスキルじゃ治せないのか?じゃあ、どうやって治せば・・・」



パッシブスキルの異世界通を使い、必死に魔族の回復方法を調べる比嘉


<魔族とは>

闇属性の核をその身に持ち、核から溢れた魔力を瘴気としてその体から溢れさせる

瘴気は自身の魔力にも変換でき、力の大きい魔族ほど溢れる瘴気は膨大である

その体は核が無事な限り何度でも再生する

しかし、瘴気は反対の性質を持つ聖気(光属性の魔力)に弱く、聖気に晒されると魔族の核は破壊され二度と再生しない

聖気に蝕まれた魔族を治癒するには核に闇の魔力を補充する必要がある



「闇の魔力・・・、もしかして・・・」



比嘉は自身のスキルを思い出した<魔法使い(闇)>

使いたくはないスキル・・・だけど、ケイの事は二人で面倒みると加賀さんと約束した



「加賀さん、もしかしたら僕の力ならこの人を助けられるかもしれません・・・。ここは僕に任せてください」



加賀は比嘉の決意溢れる声を聴き、覚悟を決めた眼を見て驚いた



「比嘉君・・・いったい何を・・・」



ウェルダン魔王の前に立ちスキルプランを考える比嘉


(ネガティブレインボーは全魔力を消費するから一回きりだ、イビルアカシックレコードは使った事が無いから発動後にネガティブレインボーを撃てる精神状態か分からない)

(スキルの説明から考えると、ブラックメモリーは大丈夫・・・だと思う。問題はダークダイアリーだ、封印された失態ってなんだよ・・・怖すぎるよ・・・)

(だけど一回きりのチャンスだから闇魔法の威力が足りないと詰んでしまう・・・、よし!)


「ブラックメモリー発動・・・」



比嘉の身を薄闇が覆う



~比嘉の精神内~

「加護!!加護ってチート能力とかそういうやつですか!!」

「きたきたきたー!それって選べる系ですか!?それとも特性に合わせて神様がくれるんですか!?それとも完全ランダム!!?」

「ッステェイタスゥォオープン!!!」

「加賀さん・・・僕ゴミだったよ、リサイクル不可の粗大ゴミだったよ・・・、燃えるゴミじゃないのに燃え尽きたよ・・・」


思い出したのは異世界フィーバー出来ると調子に乗っていた数十分前の自分・・・




~現実~


「あっふ・・・」


数十分前の新鮮な失態を思い出し、闇魔法強化(小)された比嘉

新鮮な失態に顔が若干赤くなるも次のスキルを使う


「ダ・・ダークダイアリー・・・発動」



比嘉の身を闇が覆う



~比嘉の精神内~

学校が終わり、家に向かう比嘉

家に着き自分の部屋へと入る途中、母親の「部屋かたずけといたわよー」という声に「ありがとー」と返す

自室に入ると何故か見慣れたはずの空間に違和感を感じる


ふと机の上に目をやると、隠しておいたはずのエロ同人誌が綺麗に重ねられ・・・





~現実~


「んぁぁああああ!忘れてたのに!!忘れてたのに!!!!」



忘れていたはずの失態を鮮明に思い出し、闇魔法強化(中)された比嘉

立っていられずその場にしゃがみ込み、涙目になる



「ネガティブレインボー発動・・・」



無気力な声と共にかざした手から極彩色の闇が魔王に襲い掛かる

急激な魔力欠乏によりパタリと倒れる比嘉



極彩色の闇に抱かれた魔王が朦朧とした意識から徐々に覚醒する


(これは・・・)


魔王を包み込む豊かな闇の魔力

勇者にやられた傷の痛みは消え、この身が癒えて行くのが分かる

心地よい・・・が、なんか不快な気分だ・・・

身を纏う闇が聖気を払い自身の奥深くへと吸収されていく

体に力が溢れ、眼前から極彩色の闇が消える



「勇者よ・・・我を復活させるとは、どういうつもりだ・・」



力は及ばなかった・・・だが全力だった・・・

何故とどめを刺さない

敗れた者に生きて恥を晒せというのか・・・

魔王は自身の死を侮辱され、怒りに燃えていた



「本当に申し訳ありません!!すべて私が悪いのです!!」


「何を謙っておる!貴様達は勇者だろうが!!魔王を討つのが貴様達の使命なのだろうが!!!」



加賀を勇者と勘違いしている魔王



「はい、世界を救うべき存在でありながら貴方を跳ね飛ばしてしまい、大変申し訳なく思っています・・・」



魔王を一般人と勘違いしている加賀



「だから、貴様の考える救世の手段として我を討ったのであろうが!我はその事で貴様達を責めるつもりは一切無い!!見縊るな!!」



「いえ、違うんです!誤って轢いてしまったんです。貴方に危害を加えるつもりは無かったんです!」



「誤ってだと!?ならば貴様らは何を討つ為にこの地へ来たと言うのだ!!」



「魔王です!!」



「ふ ざ け て る の か 貴 様 ! ! ! ! !」





~〇×▽~


多次元の神々が犇めき合う巨大な空間の一角



「天照よ」


「始祖神様ではありませんか!」



突然の始祖神の来訪に騒めき立つ神々



「お主に聞きたい事があってな。暇はあるか?」


「始祖神様の御用より優先される事など有りませぬ。何なりと申しつけ下さい」


「うむ・・・、しかし、ここではちと目立つな」


「であれば、此方へ」



天照が奥を示すと何もない空間に門が現れる、始祖神と天照は門をくぐる

門をくぐった先は高天原の宮殿の一室であった

天照が二度手を叩くと天女が茶を持って現れる

その後天照は天女に人払いをするように告げると一度手を叩き結界を張る


始祖神は結界を眺めた後、茶を口に流し込む



「ふぃ~、急に悪かったねあまっちゃん」


「いえいえ、しかし人払いとは珍しいですね」


「勇者召喚マニュアルあるじゃない?あれでちょっと気になる事があってね」


「なにか不具合でもありました?」


「不具合っていうか、予想外?みたいな?」


「予想外ですか??」


「そうそう、さっき勇者召喚したのさ。そしたらあまっちゃんの所から召喚されたんだけど・・・トラックだったんだよね」


「トラック・・・って、車のですか?」


「うん、車のトラック」


「え?車って魂ないのに勇者召喚されたんですか?」


「いやいや、それがね。そのトラックが付喪神だったのよ」


「あー、付喪神なら魂ありますもんね・・・って、いや・・・それはおかしいですよ」


「え?なんで?」


「日本の被勇者召喚体設定で神はOFFになってます」


「うん?」


「付喪神はその名の通り神なので、勇者として異世界に召喚されないはずです」


「あれ?でも勇者として召喚されてたよ?全言語加護持ってたから神語も理解してたよ」


「付喪神は神語を話せますよ?神ですもん」


「・・・?え?じゃあ日本語は?付喪神は日本語喋れるの??」


「話せますよ、日本の神様ですもん。それ以外の言語は喋れないと思いますけど、それ以外・・・始祖神様の新規創生宇宙の言語とかは試しました?」


「・・・試して・・・ない・・・」


「えーっと、日本語と神語だけ試した感じ・・・ですか?」


「うん・・・日本語と神語喋れたから勇者だと思ってた・・・」


「それ・・・本当に勇者ですか・・・?ただの付喪神じゃないんですか?・・・!!始祖神様!その付喪神に加護は与えてませんよね!!?」


「え?与えたけど??」


「付喪神は神ですよ!既に神の力を持つ者に始祖神様が加護を与えたら神力が乗算されますよ!!」


「・・・あ!」




「これは・・・ひどい・・・」



始祖神の開示したケイの能力を見て眩暈をおこす天照



「まずいなぁ・・・いや、まずいよコレ・・・まずいなぁ・・・」



まずい以外の言葉を発しなくなった始祖神



「うーん、取り敢えずここは付喪神に詳しいあまっちゃんに何とかして貰う方向 「嫌です」 で・・・、え?」



無責任な始祖神の責任転嫁をインターセプトする天照



「手伝いはしますが、そちらの次元の事は始祖神様がなんとかして下さい」


「え~、そんな~」


「はっきり申しますが、ケイの神力は私をはるかに超えてます。私の手には負えません」


「まぁ・・・そんなんだけどね・・・、次元消滅させるような無体な事はしたくないしなぁ・・・」


「当たり前です!私の国の子に酷い事はしないで下さいね、始祖神様があの子を呼んだんですから」


「はぁ・・・、気が重いなぁ・・・」


「ケイの其方での行動は始祖神様がきちんと管理してください、私の方はなぜトラックが異世界転移したのかを思金神と調べます」


「おー、おもっちゃんなら最適だね」


「此方に呼んでも宜しいですか?」


「呼んでー、久々に話したいわー」



天照が立ち上がり手を一度叩き結界を解く

その後、二度手を叩くと天女が現れる



「思金神に伝えなさい、天照が呼んでいると」


「畏まりました」



天女は天照の言葉に深々と一礼し、部屋を後にする


数分の時を置いて部屋の扉が叩かれる



「思金神で御座います。命を受け参上仕りました」


「お入りなさい」



天照の言葉を受け思金神が入室する

室内に居る始祖神を見て思金神が膝まづく



「始祖神様、久方ぶりにお会いでき光栄の至り。思金神で御座います。」


「うむ、久しいな思金神。天照よ、再度結界を頼む」


「承知致しました」



天照は立ち上がり再度結界を張る



「おっすおっす、急にどした?」



結界が張られるやいなや胡坐をかき始祖神に砕けた言葉ぶりで話しかける思金神

始祖神はその言葉に今までの経緯を語る



「うひゃひゃひゃひゃ、何やっちゃってんのよwww始祖神ちゃんwww」



事の顛末を聞いて笑い転げまわる思金神

思金神のリアクションに若干すねた表情の始祖神



「いや、だってマジあり得ないんだからしかたなくね?100柱居たら100柱がトラックが勇者だと思うって!」


「いやいやいや、ないっしょwww。まず要確認っしょwww。始祖神ちゃん相変わらずドジだなぁwww」



思金神の言葉に頬を膨らまして不機嫌を表す始祖神



「思金神、そんなに始祖神様を虐めちゃだめですよ」



始祖神が可哀そうに見えた天照が思金神を諫める



「ひーひー、笑った笑ったwww。おっけーおっけー、言い過ぎたよ。まぁ、勇者召喚の異常については俺が原因見るから始祖神ちゃんもあんま拗ねんなよ」


「拗ねてねぇし!」



明らかに拗ねている始祖神を一旦放っておいて思金神が現状について纏めだす



「始祖神ちゃんって異世界転移・転生の仕組みって分かってる?」


「ん?呼んだら来るって感じでしょ?」


「それは漠然としすぎっしょ。異世界転移・転生ってのは召喚・転送を次元を超えて行った結果発生する現象ってのは分かるよね?」


「うん、まぁそれくらいは分かる」


「んで、重要なのは次元・次元内の地域毎に召喚・転送設定がされている。召喚も転送も認めない次元もあれば、どっちもやりたい放題の次元もあるわけ。今回は日本なんだけど・・・天照様、召喚・転送設定ってどうなってます?」


「現在日本の設定はこうなってますよ」


天照が手を翳すと巻物が現れ、それを広げる


<召喚・転送設定(日本)>

他次元から召喚:不可


他次元に転送:不可


他次元からの召喚に応じる:一部可

次元法2467条37項、知的生命体の権利・自由を担当神が遵守する次元からの召喚にのみ応じる

召喚対象は未練を残し非業の死を遂げた者、但し地獄行の者は対象から除外される

勇者召喚対象:人間

魔王召喚対象:人間

英雄召喚対象:人間


他次元からの転送に応じる:一部可

次元法2467条37項、知的生命体の権利・自由を担当神が遵守する次元からの召喚にのみ応じる

転送対象は日本に対して悪意を持たない者、なお日本及び地球にとって超次元的な能力を持つ者は除外される

転送対象:人型種、人類への変身を恒久的に行える知的生命体



「ふむふむ、設定的には付喪神も召喚対象にはなるけど、設定上では勇者召喚対象ではないね。始祖神ちゃんの所に一緒に召喚された人間は勇者じゃなったの?」


「勇者じゃなかったね、二人の職業は聖騎士と魔法使いだった」


「ふーむ、トラックの職業は?」


「勇車」


「え?勇者なの?トラックなのに??じゃあ勇者召喚成功してるって事???」


「あー、違う違う<勇ましい者>じゃなくて<勇ましい車>で勇車」


「は?何その職業、聞いた事も無いんだけどwwww」


「だよねwwwまじウケるwww」


「始祖神様も思金神も真面目になさい」



天照が呆れて二柱を注意する

思金神が咳ばらいをして話を続ける



「一旦勇車のネーミングは置いといて、考える事は2つだね。1つ何故勇者召喚で付喪神が転移したか、2つ召喚体が三つあって勇者が何故不在なのか」


「我も此処に来る前に勇者マニュアルを念入りに読んだけど、こんなケースは載ってなかったんだよね。なんか調べる方法って有るの?」


「とりま、その三人が死んだ所を観察してみよっか。俺はその内容と召喚・転送ログ確認するわ」



思金神はそう言うと懐から宝珠を取り出し、三人の中央に置く

宝珠を左手で撫でると映像が浮かび上がる




~事故の時~


特徴のない一般道を一台のトラックが走っている

片田舎だけあって道は空いているが、制限速度をぴったりと守り走行する

下校時間なのか高校生がちらほらと歩道に見える



突如一人の少女が歩道から柵を飛び越えトラックの前へと飛び出してくる

突然の事に加賀の体は硬直する

しかし、トラックは自分の意志で少女を避けるかの様に直角に曲がる

現実的にあり得ない軌道で曲がったトラックの先には一人の少年が居た



トラックは少年を壁へと押しつぶす

壁へと激突したトラックは運転席を押しつぶし、追突の衝撃で加賀は意識を失う

野次馬がトラックの周りに集まり始めようとした時、漏れた燃料から引火しトラックが炎に包まれた




~閑話休題~


「可哀そうに・・・」



天照は事故の映像を見て目に涙を浮かべる



「ふむふむふむ。なるなる、って事は・・・あー!うん?あーうん!はいはいはいはい」



召喚・転送ログを見ながら思金神は一人ごちる

暫くその状況が続くと思金神は突如叫んだ



「おっけー!わかったーー!!結論から言うと勇者はこのトラックに飛び出してきた少女だ!!」


「「はえ?」」



思金神の突如の発言に始祖神と天照は素っ頓狂な声を出した


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