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加害者と被害者と凶器の異世界転移  作者: 前だけ弄ろうとします
1/3

勇車と主と中二病

白く眩い床

埃一つない白い床に見上げれば青々とした空が広がる

遮蔽物が一切見当たらず、地の果てまでもその景色を見渡せる

喧騒とは無縁とも思えるこの空間に突如響き渡る声


「この度は大変申し訳ありませんでした!!!」


地に額を押し当て、目の前の制服に身を包んだ少年に誠心誠意の謝罪をする男

そう、その声の主は加賀(カガ) 偉志弥(イシヤ)、23才の加害者トラックドライバーである


「いや、意味わかんないですって!頭上げてください!!土下座しないでください!!」


へっぴり腰で目の前の土下座をやめさせようとするこの少年

そう、その声の主は比嘉(ヒガ) 維士矢(イシヤ)、被害者の高校生である


床に這いつくばり謝罪を繰り返す成人男性と、

大人の突然の土下座にビビってしまいやめさせようとする高校生

不毛な攻防戦を暫く続けた後、加賀は申し訳なさそうに顔を上げる


「本当に申し訳ない事をしました・・・、トラックで轢いてしまい・・・」


床に押し付けた額が赤くうっ血するのとは対照的に、額以外はこの世の終わりを見たような青ざめた顔で謝る加賀


「あぁ、あのトラックのドライバーでしたか、あなたは悪くないですよ、それに!ほら!怪我も無いですし!!」


悲痛な表情の加賀を落ち着かせようと、無理にテンションを上げて励ます比嘉


「怪我がないって・・60km/hは出ていたはずです!すぐに救急車を呼ばない・・・と・・・?すみません・・・ここって何処ですか?」


辺りを見渡して異変に気付く加賀


「いや、僕にも分かんないです。トラックにぶつかったと思ったら・・・こんな場所見た事も無いです。あなたは・・・っと僕は比嘉って言います。あなたもここの事分からないんですよね?」


「自己紹介してなかったですね、私は加賀です、私もこの場所は見た事も無いです。そもそも比嘉さんを轢いてしまった場所は一般道でした。こんな場所とは似ても似つかない場所だったはずです・・・」


「事故の事はもう気にしないでくださいって、僕元気ですし。それに加賀さんの方が年上だし、さん付けもしないでくださいよ」


「ありがとう・・・比嘉君、よし!今は君を病院に連れて行く事だけを考えるよ、取り敢えず君はそこで安静にして欲しい。交通事故直後は元気でも急に体調が悪くなる例は沢山あるんだ」


加賀は上着を脱ぎ、丸めると枕にして比嘉を横にさせる

私はまわりを見てくるから比嘉君は何かあったら呼んでくれ、すぐに戻ってくるから

そう言い残し走って行く加賀


(今は体調全然悪くないけど、加賀さんが言ったように急に体調悪くなったら嫌だなぁ・・・)

(しかし、ここ何処なんだろう・・・現実感がまるでないよな、ゲームや小説家になれやでよくある異世界転物みたいな展開だし)

(こっから神様や女神様が出てきて「〇〇の理由で地球戻れないから異世界に行ってもらう、よってチート能力を与えて・・・」的な事に成るのか?)

(それ良いなぁ、チート能力もらって魔法使ったりハーレム作ったりってやつだったらマジ嬉しいなぁ)

(やっぱ女神とかお姫様とかの「キャー!」という悲鳴を聞きつけて颯爽と登場しピンチを救って・・みたいな!)

(なんかテンションあがってきたなぁ、王道の勇者とかになって魔王倒して的なべたべたな展開も大好きだし)

ブロロロロ

(だけど普通神様が登場して謝罪するシーンが加賀さんだったからなぁ、やっぱ普通に死んでて死後の世界って事なのかな、体痛くないし)

(ワンチャン加賀さんが神様で、ブラックで有名な配送業を救うために降臨してて・・・って無いわなぁ)

ブロロロロ!

(ていうか、トラック運転手とかもっとキツイ人だと思ってたけど加賀さん凄い良い人だよなぁ)

(ビビりの僕があんなに落ち着いて会話できる大人なんて他に思い当たらないや)

(加賀さんは事故の事で僕に丁寧なのかもだけど、僕を轢いたのも元はと言えばあの女が・・・)

ブロロロロロロロロ!!!

(何かさっきからうるさいなぁ・・・)


「なんだー?具合悪いかー?故障は修理したって聞いたぞー?」


比嘉が自身に問いかける可愛らしい少女の声に驚き、仰向けから身をよじり声の方へと目を向ける

身の丈約2m、その幅も約2m、低音でリズミカルなアイドリングを響かせる巨体

そう、軽トラックである


「キ キ キ キキ キャャアアアア!加賀さん!助けてぇぇぇええ!!!喋ったトラック!トラック喋ったぁあ!!」


「うわー、うっさいなー。落ち着いてよー、君を轢いちゃったトラックだよ、ごめんなー、覚えてないー?」


「加賀さん!加賀さん!助けてぇえ!!!トラックが二度轢きしに来たぁ!!とどめ刺される!!!」


女神でもお姫様でもない比嘉の「キャー!」という悲鳴を聞きつけてピンチを救いに加賀が颯爽と登場する


「比嘉君!大丈夫か!?」


「加賀さん、助けて!ヤバイ!トラックが殺しに来た!助けて!!」


「おー、主じゃないか。こいつうるさくて困ってたんよ」


「うん?私のトラック・・?うん?あれ?」


「加賀さん!ヤバイって!加賀さん!トラックが喋って轢いてとどめ刺しに来たんだって!!」


「うん、落ち着け私。私のトラックが喋ってる、うん。あれ?でもトラックって喋んないよな?あれ?」


「違うぞー、轢きに来たんじゃなくて迎えに来たんだぞー」


「お迎え・・・うわぁああ!!お迎えって何のお迎えだよ!ヤメロ!こっちくんな!加賀さん逃げよう!!こいつあの世からの使者だ!!!」


「迎えに来た?つまり迎車?でもあれは私のトラックで、トラックが持ち主の元に迎車で来る?うん?」


「そういう迎えじゃないってー、異世界ってとこに連れて行くんだよー」


「加賀さん!こっちだ!早く!・・・って・・・異世界?」




「そうだぞー、主と比嘉とトラックは異世界って所に行くんだぞー」





~1時間前~


それは加賀と比嘉がこの地に来るほんの少し前の事


「あれー、ここどこだー」


広大な白い床に広い空

そこにポツンと一台の軽トラ、その場所自体も軽トラが喋るのも異様な光景である


「よく来たな勇者よ!!我は神であ・・・・あれ?」


威光を普段の1.5倍に強め、声高らかに幾度のリハーサルを行ったセリフを目の前の違和感から止める自称神


「うん、待って待って、其方って・・人間っていうか・・・生物じゃない・・・よね?」


威光を普段の0.2倍に弱め、声量を通常に戻し車に話しかける自称神


「車だぞー、無機物ってやつだなー」


「えーと、無機物が転移?車?あれ?車って魂あったっけ?あれ?」


何もない空間から事も無げに分厚い本(勇者召喚マニュアル別冊~全宇宙の不思議な魂~)を召喚しページを捲る神


「動物。。樹木。。。無機物。。。あーはいはいはいはい、其方は地球の日本から来たでしょ?」


「そうだぞー、日本で生まれて日本で走ってたぞー」


「あー、やっぱり、付喪神ってやつだわ。其方って随分大事に扱われて魂が宿った系だわ」


「主が毎日洗ってくれたり、大事にしてくれてたぞー」


「いい主だったんだねぇ・・・って、いやいやいやいや和んでる場合じゃ無かったわ、勇者呼ばなきゃやべぇんだわ」


「勇者ってなんだー?」


「あぁ、えっとね。我は神なんだけどね、勇者ってのは我の創造した世界を調整する存在なんだよね。」


「神がなんとかすればいいんじゃないのー?」


「いやー我って不器用で一部を変えるってのが苦手でさぁ、前にちょこーーっと修正したら全部壊しちゃったんだよねぇ」


「神不器用だなー」


「そうなのさぁ、だから勇者っていう調整者の話を聞いてさ〇×▽でこの勇者召喚マニュアルを買ってみたってわけ」


「へー、〇×▽って事は色んな神が居るんだなー」


「いやマジ便利よ、他にも真・女神写真集とか仏も怒ったクソゲー全集とか・・・あれ?今〇×▽の意味分かってなかった?」


「〇×▽って事は色んな神が居るんだなって言ったぞー」





「よく来たな勇者よ!!我は神である!其方に我が世界を救って貰うべくこの地に呼び出したのだ!!」


威光を普段の1.7倍に強め、声高らかに幾度のリハーサルを行ったセリフを淀みなく発する神


「おー、なんか凄いけどその喋り方嫌ぁー」


「あっ、そう。威厳無くていいなら我も楽だからいいや。んで、我を助けてくんね?」


「人助けは良い事だって主見てわかってるからやってもいいぞー、でもトラックは勇者なのかー?」


「そうそう、其方勇者だったわ。我はずっと日本語で話してたんだけど、つい我等の言葉の〇×▽を使ったけど其方は意味わかったからね。勇者にはその任務上、全言語が加護されんのよ」


「なるなるー、でもトラックは異世界行って何すればいいんだ?走るしか出来ないぞー」


「へーきへーき、そこはほら、我って神だから色々出来るって訳よ」


「不器用なのにー?」


「酷いなぁ、直接なんかやるのは苦手だけど能力与える事に関しては〇×▽でも名の知れた存在よ?我は」


「おー、凄いな神」


「だろ?そんじゃあ、やって貰いたい事とか色々説明すんね」


<目標>

・世界の調整

全生物の根絶を企む魔王の撃破、もしくは魔王の危険思想の変化を促す

上記を望めない場合、魔族による全生物の根絶を防げるレベルの文明を整える

100年は魔族を抑え込める文明レベルに達した場合も目標達成とする


<調整手段>

①魔王撃破もしくは魔族との共生

②機械文明レベルの向上

③魔道文明レベルの向上

④従魔文明レベルの向上

※その他要相談


<加護>

転移前の保有技術・知識から適切な加護に変換

地上に転移後は必要に応じて無制限に取得可能(※不要不急での取得は神が許しません!)

加賀・比嘉の両名においても上記の加護を授ける



<目標達成時特典>

以下から好きな時に選ぶ

①異世界に永住

加護及び勇者活動によって得た物もそのまま

②元の世界に転移

加護及び勇者活動によって得た物は消去

転移車トラック、転移者(加賀・比嘉)が事故を起こす朝の世界に記憶を残したまま戻す


「やって貰いたいのはこんな感じ、紙に転写すっから転移者達にも見せてやって」


「あれ?転移者の加賀って主もここに来てるのかー?」


「あぁ、言ってなかったっけ?あっちの方に二人とも居るよ。二人とも事故の時と違って元気な状態にしておいたよ」


「なるなるー、比嘉って誰だー?」


「君が轢いちゃったのが比嘉だね、そのまま昇天させるのも可哀そうだから引っ張ってきたわ」


「あー・・、謝りに行かなきゃー」


「そんじゃ、細かい事とかはテレパシー的な神パワーで遠隔説明するからみんなの所に行ってきなさい」


「分かったー、神ありがとー」


「さぁ!征け勇者よ!其方に希望の光あらん事を!!」


「その喋り方嫌ぁー、じゃあねー」


「・・・」




「あぁ!この空間はそろそろ閉鎖されて地上へ転移が始まるからねぇ!!って行っちゃったよ、トラックって速いな・・・。しかし、付喪神が勇者転移って聞いた事も無いな・・・」



~閑話休題~




今までの事をトラックが説明する

その内容を聞き加賀の顔がみるみる青ざめていく


「この度は大変申し訳ありませんでした!!!」


「トラックも謝る、ごめんなー」


「頭上げてください!!土下座しないでください!!」


案の定へっぴり腰で目の前の土下座をやめさせようとする比嘉


「比嘉君みたいな若者を・・・轢き殺してしまうなんて・・どうやって償ったら・・・」


顔を両手で覆い泣き崩れる加賀


「トラックが悪いんだー、主を許してー」


表情も無いトラックだが、その声色には確かな懺悔の響きがあった


「二人ともそんなに謝らないでください、僕は見てました。トラックの前に飛び出した人を避けて僕の方に来てしまったのを。二人は悪くなんて無いです。悪い事してない二人が謝るなんて・・・そんなの納得できないです!!」


「比嘉君・・・」


「比嘉ぁー」


「それに、この目標達成時特典を見てください!僕達三人は不運からこの状況に陥りましたが、決して不幸じゃないです。(異世界転移俺ツエーしてハーレム作って異世界永住とか最高じゃん!)」


比嘉の言葉に涙を拭う加賀


「比嘉君は本当に立派です。それに比べて私は・・・何度も何度も情けない姿を見せてしまい恥ずかしいです。もう情けない姿は見せません!必ず目標達成しましょう!(私の命を賭けても比嘉君を元の世界に戻してみせる!)」


「比嘉ぁー、ありがとー」


その時、無機質な音声が何処からともなく響き渡る


≪地上への転移シーケンスを開始します≫

≪同一目標地点への転送をお望みの方達は互いの身体を接触させてください≫

≪身体が離れた状態で転移が開始しますと、離れた場所に転移します≫

≪転移が開始され次第、この世界は閉鎖されます≫


≪地上への転移シーケンスを開始します≫


≪地上への転移シーケンスを開始します≫

≪同一目標地点への転送をお望みの方達は互いの身体を接触させてください≫

≪身体が離れた状態で転移が開始しますと、離れた場所に転移します≫

≪転移が開始され次第、この世界は閉鎖されます≫


「え?何?何なの?転移ってここからどっかに行くの?」


突然のアナウンスに狼狽える比嘉


「比嘉君、トラックに乗りましょう!それなら同じところに行くはずです!」


「よーし、主ー、比嘉ぁー、トラックに乗ってー」


慌ててトラックに駆け込む加賀と比嘉


「比嘉君、何があるか分かりません。シートベルトをしてください!」


白一色だった地面に金色の亀裂が入り、そこから光が溢れる


「は、はい!シートベルトしました!!」


亀裂がどんどんと広がり、目も開けられない程の眩さが溢れ・・・・





≪地上への転移を実行しました≫

なろうに書けとyoutubeで言われたので書いてみました

こういうの書くの初なので読み辛いと思います


面白いと感じる方が居たら続き書いてみます

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[良い点] 面白いです [一言] 切り抜きのコメント欄から来ました。本当に書いてて驚きました。
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