本部の人が来ました
お昼前くらいに、本部から交渉課の人が到着した。
「初めまして、特殊第5課の達見です。忙しいところ申し訳ないね」
達見さんは背が高いけど、ニコニコしているからか威圧感はない。こういう人って裏がありそうでないようであるんだろうな。
しかし後ろにいる人、どっかで見たことがあるような……。
「久しぶりだな、東条。お前の話は色々聞いているぞ」
達見さんの後ろにいた人が僕に向かって話しかけてくる。
えー。誰この俺様イケメン?おっさんばっかり見ている僕にはちょっとまぶしい。
「佐倉君。まずはみなさんに挨拶をしてください。失礼ですよ」
達見さんにたしなめられて、居住まいを正す、俺様イケメン。
「失礼しました。久しぶりに友人に会えてうれしかったもので。特殊第5課の佐倉です。よろしくお願い致します」
僕の友人に佐倉なんてヤツいたかなぁ。でも、見たことあるような気がする。
葛西班長が席を外しているので、とりあえず二人を応接セットの方へ案内した。
お茶の用意をしていると、荒木さんがやってきた。
ヒマなんですか、あなた。
「お前、本部のエリート様と知り合いなのか?」
「多分会ったことはあるんでしょうけど、誰か分からないです」
僕が正直に言うと荒木さんが呆れた顔をしていた。
だって、本当に分からないんですってば。
「お前な。忘れてやるなよ。あいつお前のこと友人って言ってたぞ。思い出してやれよ」
そんなこと言われても……。とりあえず、淹れたお茶を二人の元へ持っていく。
「申し訳ありません。葛西班長はもう少ししたら戻ると思います。しばらくお待ちください」
「いえいえ、いいんですよ。急な話でしたしね。それよりも君、東条君でしたっけ。うちの佐倉君と知り合いなんですね」
ええ、僕は覚えていませんが。
「達見さん、東条とは入隊時の研修で一緒だったんです。こいつのおかげで俺は無事研修を終えることができたんですよ」
入隊時の研修?あれかぁ、かなり辛かったよな。そうか君と僕は一緒にあれを経験した仲なのか。あれ、研修中は大変だったけど、終わった時の打ち上げは面白かったんだよな。バカ騒ぎして、酔っ払ったやつに女装させてさ。……女装?
あ、思い出した。サクラちゃんだ、サクラちゃん。酔っ払ったこいつにみんなで女装させたっけ。後でこいつに写真を見せてみよう。まだスマホに残ってるはず。
「ほう、それは。あの研修を無事に終えたのですか」
僕がサクラちゃんについて思い出していると、何か納得したように達見さんがうなずいていた。
「あなたもかなり優秀なのですね。どうですか、ここよりも本部のほうで働いてみませんか?」
何か引き抜きの話をされた。