賞金がほしいです
魔女の話を聞いたあの日から、1か月が経っていた。
あれから、なぜか大型の異形が続けざまに4体でてきて対応に追われているうちに、時間が過ぎていったんだよな。
魔女が見つかったって話も聞かないし、このまま賞金とかなくなるのかなぁ。はぁ。金欲しい。
「どうしたの。疲れた顔して」
魔女の情報についての賞金に想いを馳せていると、坂城さんに心配されてしまった。
「いえ、先月話してた魔女のことでちょっと……」
「魔女?まだ気にしてたのか。あんなもん、もう見つかりっこねぇよ。それより、俺のこの経費とっとと現金化してくれ」
荒木さんに精算関係の書類を渡されながら頭をはたかれた。
「確かにね。でも本部はまだ諦めてないみたいだよ」
「諦めてないって、何でですか?ろくに情報も集まってないんでしょ?」
大体ちょっと見かけただけの人物を探すのって無理ゲーじゃないの。
「ろくに情報は集まっていないけど、確実な情報があったらしいですよ」
「確実な情報ってなんですか?影野さん」
影野さんが隣の課から聞いたところによると、本部の総務課の女性が10年ほど前にある異形が持っていた刀の売買について魔女に相談したところ、館にいる弟子が専門だからあいつに相談してくれといったことがあったらしい。
「でも結局どこの誰かは分からないらしいよ」
「弟子……、見つけたら賞金でますかね」
賞金について話す僕を見て坂城さんが苦笑いしているけど、しょうがないじゃないですか。
大学の奨学金の返済がきついんですよ。
「魔女の弟子ってのは呪術を扱うヤツや、御祓い関係、いわゆるオカルト系のやつらの間では割と有名なヤツらしいけどな」
葛西班長、急に隣に立つのやめてください。まじで怖いから。
「ほれ、決済しといたぞ。総務課へ持っていってくれ」
書類を僕の机に置いて、頭をなでる班長。
やめてください。戦闘職のあなたになでられると非戦闘職の僕の毛根に大ダメージが。
「班長。オカルト系では有名って、それホントなんすか?ウチが情報をつかんでないはずがないじゃないすか?……偽物?」
「荒木、総務の女性が話したのは女だったんだよ。で、ヤツらが言っている弟子ってのは男なんだよ」
だから?弟子っていっぱいいるんじゃないの?
「東条君。魔女の弟子ってさ、一人なんだよ」
「本部も一応うわさの男を確認したらしい。そこそこ有名な御祓い屋だったみたい。でもハズレだったんだって」
ハズレかぁ。でも、まてよ……。
「まっ、この件は本部にまかせてウチはいつも通りに任務を遂行しましょうや。ほれ、東条、書類。時間いいのか?総務部のお姉さん方は期日に厳しいぞ」
葛西班長に言われて慌てて、書類を確認する。
「班長、ここハンコ抜けてます」
「えっ、本当。ごめんごめん。すぐに押す」
班長からハンコをもらってすぐに総務部へ行く。
魔女の弟子について気になったこともなんだったのか忘れた。
あ~、弟子が見つかったらきっと賞金もらえるのになぁ。