本部でやっていける自信がありません
とりあえず部屋の中に入りなよという西課長の言葉に従い、班長と一緒に部屋の中に入る。
何か西課長の後ろに立っている、まだ銃を下ろしていない人が僕を見てプルプルしてるんだけど何なの?
「課長、あの、後ろの人何か震えてますけど大丈夫なんですか?」
気になったので訊いてみる。震えてるから誤射とかしそうで怖いんだよ。
「あー、藤村君。銃下ろして。葛西君も。東条君が怖がってるでしょ」
西課長の言葉に銃をしまう葛西班長と藤村さん。
何かを西課長に囁いた藤村さんがこっちに向かってきた。
その瞬間、僕は固い何かに顔をぶつけた。痛てぇ。
「ぎゃー、もう何なのさこの小動物。メチャクチャかわいいんだけど」
頭の上から聞こえてきた声に上を向くと、藤村さんがめっちゃキラキラした目で僕を見ていた。
何で藤村さんに抱きしめられてんの?
てか、誰が小動物だ誰が。しばくぞ、この野郎。
殺気立っている僕に気づいた葛西班長が藤村さんの腕の中から助けてくれた。
「相変わらずだねぇ、藤村。その小さいモノを見たら抱き着くクセ」
班長、僕が小さいんじゃないです。周りが大きいだけです。
「いやー、ここ最近ガタイのいい野郎とかグロイ異形とかばっか見てたからさー。東条君、めちゃくちゃ癒しだわ」
そう言って手をわきわきさせている藤村さん。
グロイ異形って……。僕のいたところにはあんまりグロイのってなかったけどな。本部ってそんなのばっかりいるんだろうか。
「藤村、その手やめろ。ごめんね東条君、あいつ気持ち悪いでしょ。あ、僕は相馬達臣です。よろしくね」
藤村さんを冷たい目で見てから、僕に話しかけてきた相馬さんはニコニコしながら握手を求めてきた。
僕は知っている。この異形対応軍で働いているニコニコして優しそうな人は大体毒舌腹黒だということを。こういう人には逆らってはいけない。
よろしくお願いします、と言って相馬さんの手を握る。
でかくて厚い手だな。相馬さんって儚げな美人だけど、やっぱり戦闘職の人なんだなー。
俺も俺もー、と言って手を握ってくる藤村さんをかわしつつ、他の方々にも挨拶をする。
まずは、西課長。机に座っていたから分からなかったけど、あんまり背は高くないんだな。何か、狸みたい。ちょっとずんぐりむっくりしてるっていうか、丸い。
葛西班長の圧を軽く流してたし、こう見えて強いんだろうな。
次は、西条班長。藤村さんと相馬さんの上司かぁ。クセの強そうなこの二人をまとめるのは大変そう。ちょっと押しに弱そうな感じがするけど、多分するだけなんだろうな。だって、葛西班長と同期で昔一緒に組んでたって言ったし。あと、さっき僕に銃向けてたし。
後は、都築さんと岩城さん。お二人は僕と年が近いから何か話しやすいな。二人とも見た目はちょっとやんちゃな人みたいに見えるから、話しかけるのには勇気がいったけど。
えっと、あの事務員の方が見当たらないのですが。席を外しているんですかね。
「あー、事務の子さ、先週退職しちゃったんだよね。1ヶ月以内には次の子決めるからさ、悪いんだけど東条君しばらく君一人で頑張って」
いやー、急だったけどおめでただから引き止めしづらくてさー、なんて笑ってますが西課長、僕の後ろで葛西班長が静かに怒ってますよ。