突然隣に立たないでください
すみません。投稿済みの第1話ですがかなり追加したので、できれば再度お読みください。
さっきまで、報告書を書いていた葛西班長が隣に立っていた。
ビビって思わず悲鳴をあげそうにあったけど何とか耐えた。えらいぞ、僕。
魔女が何なのかわからない僕に弁当を食べながら、班長は本部で聞いた話と一緒に教えてくれた。
曰く、18年ほど前にあちら側から出てきた凶暴な異形の処分についてもめた時に、調停役として色々やったのが魔女と呼ばれる女性である。その後も手に負えない異形を処理していたと。しかし、ここ10年ほど異世界応対課に人員が増え、ちゃんと機能してくるとあまり姿を見なくなった。で、6年ほど前からは誰一人姿を見たものはいないと。
しかし、1週間ほど前にあちらとの領域で出入の管理をしていた職員があちら側からこちら側に歩いていく魔女を見たと。魔女だけでなく、ほかにも3人ほど一緒だったと。
「すみません。その魔女を見たからって何が問題なんですか?」
「特に問題はないよ。見たからって何があるわけではないし」
は?問題がないならなんでわざわざ本部の会議で話がでてくるんだ。
疑問に思って顔をしかめていると、荒木さんがつついてきた。
うっとうしいなぁ、あんた。
「問題は、彼女がどこへ行くかだ」
ずっと黙っていた影野さんが、食後のお茶を飲みながら言った。
どこって?なんで?
――魔女はこちら側にいた人間だけど、推定500歳は超えているんだ。
で、そんな人間をやめてる人があと何人かいるようで組織はその人たちに接触したいんだよ。
異形への対策の為にね。前に魔女から昔から異形とこの世界は付き合ってきたと聞いていたらしいから。
「つまり、仲間を紹介してほしくって魔女にアポを取りたいってことですか?」
「おう。でも、あれから目撃情報は何にもなくってよぉ。まぁ、組織もお手上げ状態ってことさ。ま、手がかりつうことで全職員のスマホに魔女の写真が送信されたわけだが」
荒木さんがニヤニヤしながらスマホを見ている。
……おっさん、はっきり言って気持ちわりぃぞ。
「荒木君。気持ち悪い」
影野さんが僕の気持ちを代弁してくれた。ありがとうございます。
「この人が魔女かぁ」
そう言って、自分のスマホに送られて来たデータを確認する。
美人だ。なんて言うのか、黒髪黒目だけど顔立ちはちょっと海外の人っぽいっていうか、でも日本人にも見える。不思議な女性だ。
「でも、僕たちは通常業務があるから探すのって無理じゃないですか。専任の捜査班とかできるんですかね」
疑問に思ったので聞いてみる。
「できんぞ。そんな班」
葛西班長にきっぱり言われてしまう。
「東条君の言った通り、通常の業務があるからね。暇なときにでも探してくれってことなんじゃないの」
坂城さんがデザートのプリンを食べながら言った。
僕も食べよう。
全職員のスマホに送られたというデータを見ながら、プリンを食べていると、『有益な情報を提供してくれたものには、重要度に応じて賞金を出す』という文面を見つけた。
これは、ちょっとやる気がでるな。いくらもらえるんだろう。