班長にバレました
サクラちゃんと妹さんと一緒に焼肉を食べた日から1週間が経った。
どうやら、葛西班長が妹さんから聞いた話を元に魔女の弟子のリカルドさんに本部の交渉課は接触したらしい。よく見つけたな。リカ君は今どこで何をしているのか分からないって妹さんは言っていたのに。
サクラちゃん情報によると、達見さんの一族の人たちが見つけてくれたらしい。何でも、坂城さんの異能と同じく影を使って調べまくったそうだ。おかげで何人か入院したらしい。
でもさ、昨日魔女と話すことができたってサクラちゃん言ってたけど。
妹さんからサクラちゃんの話を聞いて、今はヒマだから会ってもいいって話になったらしい。でも、サクラちゃんが魔女を見つけたって言うと、色々問題があるから魔女の方から本部に接触してほしいってお願いをしたと。
忘れてたけど、サクラちゃんって一応本部のエリート様なんだっけ。派閥やら、権力闘争やら、何かめんどくさいね。
明日は坂城さんが復帰する日だし、今日も頑張ってお仕事しますか。
なんて思っていたけど、今僕は部屋の真ん中に正座をさせられて、葛西班長、影野さん、荒木さんに尋問を受けていた。
「ねぇ、東条君。俺に何か言うことがあるんじゃないの」
葛西班長その手に持っているタバコが怖いです。
「坂城君から聞きましたよ。彼の妹さんとお話したんですって」
影野さん、メガネの奥の目が笑っていませんよ。
「しかも、あの5課の奴と一緒だったんだってな」
荒木さん、その笑い方やめてください。
影野さんからは、いくら坂城君の妹だからといっても軍が注目している人物と気軽に接触するのは危険だと、僕の身を案じてくれる温かいお小言をもらった。
荒木さんは、あの達見を出し抜いて、部下のヤツを坂城の妹と話させたなんてやるな、という嬉しくない賞賛をもらった。
葛西班長は二人と同じようなことを僕に言ったけど、本音はアレですよね。僕が妹さんと一緒にご飯を食べたことを怒っているんですよね。
ちょっと怖かったので、思わず葛西班長と妹さんてお付き合いはしてないんですよねって言っちゃった。
「ああ、何言ってんだお前。班長は恋人だって言ってただろうが」
荒木さんが僕に向かって言う。葛西班長はタバコを吸いながら目を細めて僕を見ている。
やっべ、言うんじゃなかった。
「そうだよ。まだお付き合いはしていないねぇ。で、それが何」
いつもどおりの班長の声だけど、僕は恐ろしくて目をそらすことしかできない。
「葛西班長、それは本当ですか?前に恋人だと言ったのは嘘なのですか」
真面目な影野さんが班長に問い質す。
「うん、別に嘘じゃないよ。周子ちゃんは俺の恋 (しい)人だよ」
付き合ってないのに恋人って……。
うわー、班長ってヤバイ人だったんだ。