お守りって売ったらダメですか
焼肉は妹さんが奢ってくれた。サクラちゃんが払うって言ってたけど、こういうのは年長者が払うもんなんだよって押し切らていた。僕は初めから奢られる気マンマンだったので支払い争いには参加していない。 お肉おいしかった。ごちそうさまです。
みんなで駅に向かって歩いていく。僕たちの顔を見て、何か色々苦労してそうだねと笑う妹さん。思い当たる節があるのか苦笑いするサクラちゃん。僕は別に苦労とかしてないけどなぁ、強いて言うなら大学の奨学金の返済がきついかな。
妹さんはお守りだと言って、僕とサクラちゃんに細長い四角い金属片をくれた。僕のはキツネが2匹、サクラちゃんのやつにはウサギがいっぱい彫られている。
「何ですか、これ?」
「小柄の袋だよ」
小柄というのは日本刀に付属している小刀のことらしい。で、その小刀の柄の部分を袋といい、刀身の方は穂っていうんだって。
「財布に入れていてもいいし、スーツのポケットに入れててもいいよ。まぁ、お守りやからね、一応大事にしててや」
財布に入れるって、金運上がるかな。
こんな高価なものはもらえないというサクラちゃんに、店の売れ残りだから気にするなと言って手を振っている妹さん。高いのか、これ。売ったらいくらになるのかな。
そんなことをつぶやいた僕に、お守りやから売らんとってーと泣きまねをする妹さん。
「大丈夫です。金に困らない限り売りません」
そう断言する僕に呆れた目線が二つ突き刺さる。冗談だって。
「そういえば、さっきお店で弟子はリカって人だって言ってましたよね。その人ってどんな人なんですか?」
雰囲気を変えるために話をそらしてみた。
「あからさまに話題を変えたな、東条。しかし俺も気になっていた。周子さん、教えていただけませんか?」
「リカっていうのは私が呼んでる名前で、店長はリカルドって言ってたな。今は何か御祓い屋の真似事をしてるって聞いてる。あー、でもさ、これ葛西さんにも話してるし、そっちに訊いた方が早いんじゃないの?」
葛西班長に話しているなら、本部にも伝わっているよな。サクラちゃん聞いてないの?
首を横に振るサクラちゃん。
「でもさ、リカ君に店長のこと訊いても言わないと思うけど。誘導尋問に引っ掛かりやすい人やから、店長がいらんことしゃべらんように口封じの呪いしてたの見たことあるし」
えっ、口封じ。何それコワイ。
「口封じの呪いですか……。それでもある程度のことは分かりますし、全くの無駄というわけではないですね」
サクラちゃん、その呪い知ってるの?使えたりするの?
「特殊5課に配属されたときに教えてもらった。でも、俺はまだ使ったことはないけどな」
特殊5課って怖いな、おい。