サクラちゃん、覚えてなくてごめんね
「えっと、周子さんですよね。はい、今日は友人と一緒に来ました」
ニコニコしてる妹さんに答えて、隣を見るとサクラちゃんが固まっていた。まぁ、そうだよな接触を図っていた人物に不意打ちで会っちゃったんだもんな。
「友人は前に坂城さんにお世話になってて、ケガのことを聞いてお見舞いに行きたいというので連れてきました」
僕がサクラちゃんのことを紹介していると、エレベーターが来たので乗り込む。
サクラちゃんを肘でつつくと、ハッとして妹さんに自己紹介をした。
初めましてー、とにこやかに答えている妹さん。
3人で坂城さんの病室に入ると坂城さんが驚いた顔をしていた。まぁ、そうなるよな。
「あー、ごめん。周子。ちょっとこれの支払いに行ってきてくれないか」
そう言ってお使いを頼む坂城さん。
じゃあ、15分で戻ってくるでー、と言って何も聞かずに出ていった妹さん。
とりあえず、そこのイスに座りなさいと言って僕たちを近くに寄せる坂城さん。
「坂城さん。この間はウチの達見が申し訳ありませんでした」
立ち上がって頭を下げるサクラちゃん。
それを見つめる坂城さん。
「君はこの間来た特殊5課の佐倉君だね。今日は何しに来たのかな。ウチの東条君を連れてさ」
坂城さんのこんな低い声初めて聞いた。これは怖いなって、そうじゃなくて。
「坂城さん。佐倉君は僕の友達です。坂城さんに謝りたいっていうから連れてきたんです」
「友達?彼が?」
坂城さん、敵ではないです。とりあえずサクラちゃんの頭を上げさせてください。
僕の心の声が聞こえたのか、坂城さんはため息をついてサクラちゃんの頭を上げさせた。
「本当に東条君の友達なの?君の名前、東条君から一回も聞いたことないけど」
疑っている坂城さんに、サクラちゃんは僕と入隊時の研修で一緒だったこと、この間来た時に達見さんが何かを言って坂城さんを怒らせたのに、謝罪をしていないのが気になっていたが、一人で坂城さんに対峙する勇気がなくて、僕を誘ったと説明した。
「あれは別に、君は関係ないよ。それよりそんなことのためだけに来たの?」
坂城さんの問いに、はいと答えるサクラちゃんに呆れた顔をした坂城さん。
「君さぁ、本当に交渉課の人間?もっと東条君の友達ってことを利用しなくちゃ。僕から妹の交渉権を引き出すことくらいしなきゃ」
にっこり笑ってサクラちゃんに圧をかける坂城さん。利用ってなんですか、利用って。
「と、東条は俺の大事な友人です。利用はしません」
坂城さんの圧に震えながら答えるサクラちゃん。
ありがとう、そしてごめんね。この間会うまで全然覚えてなくて。