ちゃんと奢ってくれるなら付き合うよ
サクラちゃんから奢ってやるから付き合えと返事が来ていたので、今日は前々から行きたかったちょっとお高い焼肉屋に行こうと思う。
朝からご機嫌で仕事をこなしていく僕。
あちら側に送還中の異形が2体脱走したけど、すぐに2課の人たちが捕まえてくれたので大事には至らなかったらしい。ウチの班からも荒木さんが参加してたみたい。あちら側の担当者から新人がミスをして申し訳なかったとお詫びの電話があった。こちらも油断していたので申し訳ないと謝っておいた。今日の僕は機嫌がいいので、3課のミスに対応しておいた。
あちら側との引き渡し処理は3課の仕事なのに誰もあちらの担当者と話をしたがらないのは何故だろう。仕事しろよ、3課。
いつも通り定時であがって、サクラちゃんとの待ち合わせ場所に向かう。
イケメンって立ってるだけでもカッコいいよな、と思いながら駅の改札前の柱に寄り掛かっているサクラちゃんの元へ行く、フツメンの僕。
「お待たせ、佐倉君。遅くなってごめんね」
待ち合わせ時間通りなんだけど、先に来て待っててもらったので一応言っておく。
いや、俺が早く来ただけだから大丈夫だ、なんてイケメン返事が返ってくるかと思ったら、ああ、とだけ返してきたサクラちゃん。何だろ、ちょっと様子が変だ。
「東条、メシに行く前に坂城さんに会ってもいいか」
言いづらそうに切り出すサクラちゃん。何で坂城さんのとこに行くの?
「ほら、この間ウチの達見さんが何か失礼なことを言って坂城さんを怒らせただろ。あれを謝りたいんだよ」
サクラちゃんは、達見さんが何を言ったかは分からなかったけど、坂城さんが怒ったということは何か失礼なことを言ったのは間違いない。謝らなくてはと思ったけど、部下という立場上口をはさめなかったことを気にしていたようで、坂城さんにちゃんと謝罪をしたいそうだ。
「いいよ。じゃ、ここから近いし坂城さんとこに先に行こうか」
「すまんな。正直、怖くてお前と一緒じゃなきゃいけないんだよ」
そう言って苦笑いをするサクラちゃん。苦笑いもイケメンだなんて。くそっ、何をしてもカッコいいなんてうらやましいぞ。
坂城さんの病院はここから2駅隣のところにある。電車に乗っている間に例の写真の話になった。
「東条、あれ削除したんだろうな」
「えー、僕が削除してもさ、他にもあそこにいた3人が撮ってたし、サクラちゃんは残ってるよ」
サクラちゃんっていうなと言ってがっくりしているサクラちゃん。他の3人に連絡をとって削除してもらわなきゃ、消えないよあの姿。
そんなことを言っていると坂城さんの病院に着いた。確か、部屋は3階だったよな。エレベーターを待っていると後ろから声をかけられた。
「あれ、東条さんですよね。この間兄のお見舞いに来てくれた。今日も来てくれたんですか」
坂城さんの妹さんが後ろに立っていた。あれ、今日は関西弁じゃないぞ。