レオ、屋敷に帰る。
石造りに地下室を出た時はもうすっかり夜になっていた。
「すっかり夜だな。でもここは何処だ?」
レオが辺りを見回すと大きな塔が見える。
どうやら地下室はこの塔の下にある様だ。
「レオ様、地図を出しますか?」
「出せるの?」
「はい。」
アウロラは地面に手を翳すと光で地図を描き出した。
「この周囲を各種センサーで検索した結果です。」
「アウロラ、この赤い点は?」
「人、この世界で言う人類種です。」
「あ、一つがこっちに来るよ。」
「問題ありません。光学迷彩とサウンドキャンセラーを使用します。」
しばらくすると衛兵らしい人物がレオ達の横を通り過ぎた。
衛兵はレオ達に全く気付いている様子はない。
「レオ様、総合的に判断するとここは敵地の様です。脱出します。」
アウロラはそう言うとレオをお姫様抱っこで抱え上げた。
「ちょ、アウロラ!」
慌てて赤くなるレオ。
「飛びます。しっかり捕まっていてください。」
アウロラはふわりと音もなく飛び上がった。
そして軽々と城壁を越える。
壁を越えた先には街並みが広がっていた。
王城前の広場には時々衛兵が通るだけで人がいる様子はない。
「レオ様。これよりどちらへ向かいましょう?」
「ここが王城前の広場なら・・・東に向かって。底に屋敷がある。」
「了解しました。目標地点までの案内をお願いします。」
「いいけど、アウロラ。この格好は恥ずかしいのだけど・・・。」
「レオ様申し訳ありません。この体勢が隠密行動に最適と判断しました。」
「そ、そう。ならいいけど・・・あ、その通りを右に。」
街並みの上空をレオに誘導され屋敷に向かう。
「屋敷の明かりが消えている。何故だろう?」
「あの屋敷周辺には人間の生体反応は一つしかありません。」
「生体反応?」
「生命の反応です。あの屋敷を含めた周辺には人間は一人しかいません。」
「一人?おかしいな。それにその一人って誰だろう?」
アウロラとレオは屋敷の門に静かに近づいてゆく。
屋敷の門の前には長いテーブルが置かれ、その上には丸い物が三つ並んでいた。
その前にうずくまる人影がある。
「?」
「年齢は60才と推定。骨格および筋肉量から戦闘力は低いと思われます。」
レオ達はその人影にゆっくりと近づいて行った。
「ぐぐぐぐ、おのれ愚王!よくも旦那様たちを!!」
一人の老人がテーブルの前で嘆いていた。
「あ、爺。」
「おの?????レオ様?」
「爺・・・これはいったい?」
「レオ様!よく、よく生きておいでで?」
老人が号泣しながらレオに近寄るがその間にアウロラが割り込んだ。
「お待ちなさい。それ以上の接近を禁止します。」
「ほえ?」
「アウロラ、この人は大丈夫だよ。僕の屋敷で執事をしていたケネスって人だよ。」
「そうですか、失礼しました。」
「レオ様。よくご無事で・・・」
ケネスが今の状況を話す。
レオの父親のガラハド公爵は王国の宰相を務めていた。
だが、ロック王により汚職の罪を着せられ一族ともども打ち首の上さらし首となった。
テーブルの上にある三つの丸い物は父、母、兄であったのだ。
「ここはレオ様だけでも生き延びてください。」
ケネスはレオの手を取り
「そして、いつか必ずお父上の無実を晴らし、ロック王を!!」
そう言った。
それを聞いていたアウロラが
「ロック王?その者ならもうこの世にはいないぞ。」
「え?」
「映像を投影しましょうか?」
「は、はぁ?」
そうやって映し出された映像は光の束によってロック王が消し炭になる物だった。