プロローグその1
薄暗い石造りの地下室で一人の少年が手足を縛られ転がされていた。
微かな灯りで見える顔立ちは少し幼さが残る。
年の頃は15ぐらいであろうか、顔の所々に殴られた跡と金色の髪に泥と血らしきものが付いている。
少年が転がされている石造りの床は冷たく固い。
床一面に摩訶不思議な模様が円状に配置され何やら召喚の儀式を行う魔法陣のようだった。
その魔法陣の外側に二人の男が立っていた。
一人は背が低く頭は禿げ上がり白髪の目立つ男、赤いベルベットのマントを羽織り剥げた頭に金の王冠を乗せている。
もう一人はやせぎすで背が高く狐のような眼をしている男、黒いローブを羽織りねじ曲がった杖を持っていた。
王冠を着けた男が黒いローブの男に尋ねた。
「で、サウノス。こやつを生贄に捧げれば超絶なる者、勇者が召喚できるのじゃな?」
「はい。ロック陛下。捧げる者の魔力が高いのでかなりの能力を持つ者が召喚できると思われます。」
「で、で、その勇者は余の思い通りになるのじゃな?」
「はい。間違いございません。陛下の希望通り、うら若い乙女を召喚する様に魔法陣に書き加えております。」
「ほほほう、で、逆らう事は無いのじゃな??」
ロックと言われた男は自分のみだらな欲望を隠し切れない様だ。
「はい陛下。人間では逆らうことの出来ない呪いのような物がかかるようになっております。」
「グフユグフユ、相分かった。ではサウノスよ。儀式を始めるが良い。」
「陛下の御心のままに。」
サウノスと言われた男は恭しくお辞儀をした。
サウノスは魔法陣に向かうと召喚の呪文を唱え始めた。
程なく魔法陣が発光し始め、空間が歪みだす。
魔法陣を中心にマナの光が散乱しそれが徐々に人の形を成しつつあった。