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プロローグ
僕は、屋上の扉を開けた。
それに伴って、上空の爽やかな風が流れこんできた。
まず目に飛び込んできたのは、蒼い空と白いコンクリートの床そして、広い屋上にポツンと立つ女子の背中。
女子の背中?
確か、今は授業中で、僕はサボってここにきている。
つまり、僕と同じ理由か、同じ理由じゃないかそれしかないはずだ。
「なにをしてるの?」
僕は気づけばそんな声を出していた。
「空を、見ていたの」
彼女はポツリと言った。
「空?」
「そう、空」
彼女は空を仰ぎなから。
「空、綺麗でしょう。青くて大きくて今にも手が届きそうで」
「ああ。」
「でも、絶対手の届かない空。素敵でしょう?」
「………」
僕は見とれていた。
振り返った時の彼女のあまりの笑顔に。
すべてを諦めて、すべてを受け入れたような、悲しんでるとも、喜んでるようにも見える、その透明な笑顔に。
不覚にも、僕は恋に落ちてしまっていた。