友人を転移させると
らーらーらーらー♪ らーらーら♪
らーらららーらーらーらー♪
頭の中に鳴り響くメロディ
ゲームのオープニングのような曲
その後、脳裏に文章が流れる
『この世界は魔王に支配されている。
召還されし1000人のなろう作家たちよ
この世界に光と希望を……』
俺達がいるのは、どこかも分からない岩山の洞窟の前だった。
ここに来たのは、目の前の洞窟に入るためだった。
「おい目的地のダンジョンあるけどどうするよ、勇者、マルタス?」
俺は同行している2人に聞く。
「え?行くの?え?無理なんだけど」
そのうちの一人、爽やかなイケメンの方が答える。彼の名は勇者だ。
もう一人のモヒカン男、マルタスも答える。
「帰るべ」
2人の答えを聞きながら、半笑いになって質問する。
「どこへwwどうやってwwwww?」
勇者があっさりとそれに答える。
「は?妄想の世界」
素っ頓狂な答えが返ってきた。
そりゃそうだろう、よくわからん洞窟に入るのは普通に怖い。
「行かないと話、進まないぞ。とりあえずマルタス行って来て!」
と、マルタスに先陣を切るように促す。
「まるたす、オマエしかいないんだ!」
続けざまに勇者も促し始める。勇者の名が泣いているぞ。
「まぁタンクやし、最低限はやるべ」
気乗りはしないが彼の役職が前衛職の為、心を決めたようだ。
彼には悪いが、無理矢理にでも前に行ってもらう。
1分後、マルタスが洞窟の中から出てきた
彼の様子からは、とりあえずは安全らしい。
俺もいつまでも洞窟の前で留まってるわけには行かない。
心を奮い立たせるためにも、声を出す。
「行くか」
中に足を踏み入れる。
振り向くと勇者がついて来ない。
仕方ないので、一旦洞窟から出る。
「おい勇者、どうした」
これだと全く冒険が進まないなと思いながらも声をかける。
勇者を見ると虚ろな目で草を食べていた。
「え?ダンジョン?なにソレ美味しいの?食べる食べるー」
完全に未知との遭遇を恐れ、現実逃避をしていた。
「俺も食べるー」
その姿に心が折れた俺も同じ行動をし始める。
仲間と同じ行動をすることで、少しでも一人では無いと再確認したかったのだ。
むしゃむしゃ、もぐもぐ
草を食う二人。
この惨状に、先ほど先陣を切らされたマルタスがキレた。
「なんだこいつら!」
そう叫ぶと、彼は無理矢理洞窟の中に俺達を引き吊りこんでいった。
俺は洞窟に入ると緊張がほぐれてきたのか、
他のメンバーの緊張も解そうと話し掛けることにした。
「左手の法則って知ってる?」
「え?左手の法則?なにソレ美味しいの?食べる食べるー」
勇者は相変わらず現実逃避しているようだ。
「左手でシコるといつもよりヤバイらしい!試せマルタス!!」
マルタスの方にも話し掛ける。
しかし、マルタスよりも早く勇者が反応した。
「え?まじ?」
勇者は急に真顔になる。
マルタスも興味をもったのか
「マ?2分くれ」
そそくさとマルタスは岩陰の方に行く。
ズボンを下ろす音が聞こえる。
俺と勇者はマルタスを待つことにした。
しかし、すぐに魔物登場である。
マルコスの方を見ると、彼はまだ岩陰でシコシコしてる。
魔物は俗に言うゴブリン。
片手にこん棒を持っている。
「ご、ごぶこぶ! ごふっ!」
棍棒で殴られ倒された演技をして勇者は死んだフリをする。
ちょっとまてwww俺しかいねぇwwww。
だが、まだ俺には仲間がいる!
「まるたあああああす!助けてええええ」
その悲痛な声にマルタスは駆けつける!
「私を呼んだかね」
堂々とした声で答えてくれた。
下半身丸出しで!!
「きたねぇwwwしまってくれそれwww」
思わず噴き出してしまう。
ちらりと勇者を見ると、彼は死んだふりをしながら笑いをこらえていた。
大声が聞こえたのかゴブリンが迫る。
そしてこん棒を振り上げる。
このピンチにマルタスが素早く反応した。
下半身丸出しで!!
「勇者シールド!!!」
マルタスが勇者を持ち上げ盾にする。
「え?ちょ?まるたす?ちょっまぁあああ!」
盾にされた勇者は予想外だったためか、死んだ振りをやめてバタバタと手足動かしてる。
ごっ!
鈍い音をたててゴブリンのこん棒が勇者に振り下ろされた。
「あいたぁいぉおおおお!」
ガチで痛いのか泣き叫ぶ勇者。
こん棒で殴打である。当然痛いのだろう。
このままではパーティ全滅も考えられるが勇者にはスキルがあった。
「勇者!泣いてないで魔法打て魔法!
厨2っぽいアレ!アレ!」
俺の必死の叫びに思い出したのか、勇者は詠唱を始める。
「うおおおおおおおおお!暗黒魔法!闇っ!」
そして・・・闇が訪れるのではなく
指先から雷がほとばしる!!
「闇かんけぇねぇwwww」
笑いながらも放たれた雷の先を目で追うと
マルタスを直撃していた。
「あばばばばばば」
マルタスは痺れている。
これは可哀想だ。
「よっしゃあヒットぉおおお!」
勇者は始めて放った魔法が当たった手ごたえからか喜んでいる。
当たったのが味方なのを除けば喜びたくなるもの分かる。
このぐだぐだの連携の隙をついてゴブリンがまたもこん棒を振り上げる。
が、痺れていたマルタスの気転が俺達の窮地を救う。
「んぎぎぎ、シールドバッシュ!」
勇者の身体をコブリンに叩き付けたのだ。
こうして戦闘が終わった。
結果として、ゴブリン一体に俺達のパーティは満身創痍である。
勇者とマルタスはボロボロで、とくに勇者は酷い。
あばらが折れているかもしれない。
これからを考えると、先が思いやられる。
とりあえず、束の間の勝利を喜びながら俺は戦利品のこん棒を拾いマルタスに渡す。
「お前ならやれる、任せたぞマルタス。そしてズボンとパンツを履いてくれ!」
間髪いれず彼は答えた。
「だが履くのは断る!」
そしてゴブリンをその身で倒した功労者はというと
「いでぇよぉ!いでぇんだよぉれ」
勇者の声はむなしく洞窟に響いていた。