о●第9話●о
「ほら、あいつだろ?杉倉波那って…」
「うわ、俺まじ女かと思った…!」
「で、その前の席に座ってんのが会計の……」
「あぁ、菅野静?」
「あれ?副会長と名字同じじゃね?」
「言われてみれば、似てるよな〜」
「そういえば書記の奴見た?」
「あ!俺見た!すっげー可愛い顔してんの!」
「まじ?俺見て来よ〜っ」
あー…。 うるさい。 教室の奴らはもちろん、他のクラスの奴らまで廊下からこっちを覗き見ている。
何なんだよ。 そんなに生徒会に入ったのが物珍しいか。
俺だってビックリしてるわ。 急に生徒会役員になったかと思ったら、生徒会は最高権力者だって?
あの変態生徒会長にそんな権力握らして大丈夫か? 破滅すんぞこの学校。
「…姫」
「あ?」
くそー…。 “姫”と呼ばれて普通に返事しちまった自分が悲しいぜ…。
「鳩羽の事なんだけど……」
「樹?」
「あぁ」
何故このタイミングで樹? あー、そういえば朝置き去りにしたっけな…。
「あいつ、寮に入るかもよ?」
「ぅえぇっ!!?」
ガタンと音を立てて立ち上がった俺を、皆不思議そうに見つめる。 うわ…、はず……。
「ど、どうして…?」
座り直しながら、恐る恐る尋ねる。
「いや…。姫、朝鳩羽の事置いてったじゃん?」
「うん」
「その時、あいつすごい泣きそうな顔しててさ」
泣きそう!? あいつが!? ってか男が簡単にそんな顔すんなよ…。
「しばらくして、“俺も寮入ろうかな”ってぼそっと言ってた」
まじかー。 本格的に俺の事ストーカーしてるみたいになって来たな…。
昔はあんなんじゃなかたのに…。 …あれ? あいつって、いつからあぁなったんだっけ…?
◆
「杉倉君っ」
ドア付近から聞こえた可愛い声に、俺は振り向く。 そこには、靖佳ちゃんが立っていた。
「ちょっといい?」
うわー。 マイハニー可愛いーっ。 ちょっとどころかいくらでも時間ならありますよ〜♪
とてとてと靖佳ちゃんの元に歩み寄ると、俺らを見て周囲から“ちっせぇ”だの“女みてぇ”だの
気に食わない声が聞こえて来たが、今日は靖佳ちゃんに免じて許す!!
「どうしたの?」
「んっと…、今朝はごめんね?靖都が……」
「あぁ、大丈夫大丈夫!木松って、すっごい弟思いなんだなっ」
そう笑い掛けると、靖佳ちゃんもふにゃっと笑った。 うーわー、かーわーいーいーっ。
「あ、あのね、副会長が今日の放課後生徒会室に来て欲しいって…。菅野君にも伝えてもらえるかな…」
「げ。今日も?」
生徒会の仕事が多いのは分かるし、別に仕事は嫌じゃない。 嫌なのは、あの変態会長との接触。
「んー。分かった。静にも伝えとく」
すると、靖佳ちゃんは安心したように帰って行った。
はぁ…。 最初は早く放課後になんないかなーとか思ってたけど、今は放課後なんか一生来て欲しくない。
ある意味俺の中の変態会長って偉大かも……。 あ、俺が“変態会長”って言いまくってるせいで
皆さんあいつの本名忘れてねぇ? “琉崎里玖”だよ。 ま、どうでもいいけど。
変態会長、名前は琉崎里玖。
どうか覚えてやって下さい…。
第10話へ続く。。。