о●第26話●о
静視点。
「待って、百合さん!」
違う。 百合さんじゃない。
「百合さんっ!!」
百合さんはいない。 死んだんだ。
そんな事分かってる。 けれど…。
「百合さん……百合さん………ゆ…り、さん………」
…帰って…来てよ――…。
『静』
「…え…?」
『静』
「…百合、さん…?」
『泣かないで、静。心配になるでしょ』
「百合さん…っ、どこにいるの…?」
『あなたは優しい。だけど、もっと強くならなきゃ』
「強く…?」
『そう、強く。いつまでも私の後を追っていては駄目。新しい友達だって、出来たんでしょう?』
「…姫達の事…?」
『強くなって、静。強く―――……』
「百合さんっ!?」
「静っ!!」
背後から大声で呼び掛けられ、振り向く。
「姫……」
「まったく…、急にいなくなりやがって」
文句を言いながら、姫は俺の腕を掴んだ。
「心配したんだかんなっ!」
“心配になるでしょ”
「――――…っ」
「えっ!ちょ、静っ!?何で泣くんだよ!!」
「波那、何泣かしてんの」
「うっさい樹!」
すぐ脇で姫と鳩羽の声がして、少し離れた所で副会長達が笑ってる。
“友達”…か……。
「悠さん」
「どうしたの?静」
「俺、百合さんに会ったよ」
「…え…」
「強くなれって、言われた。心配になるからって」
「……そう…。お盆だから、帰って来てたのかもね…」
「ん…」
ポンポンと頭を撫でられ、目を細める。
百合さん。
俺、強くなるよ。
百合さんや悠さん、姫達にも心配かけないように。
だから
さようなら。
静編終了。