о●第25話●о
静視点。
「活けた華を否定された?」
「そっかー…。叔父様はやっぱり厳しいねぇ」
「…うん…。…でも、俺が上手く出来ないのが悪いんだし……」
小声で呟いて俯くと、ポンポンと頭を撫でられた。
「そんな事言わないで。私は好きよ?静の活けた華」
「うん、俺も。シンプルなんだけど、なんか優しい感じがするんだよね。まるで、静本人みたい」
百合さんの言葉に頷く悠さん。
「だから、元気出して?」
「何があろうと俺達はずっと、静の味方だから」
―――あぁ…、あったかい。
どうしてこの2人の言葉はこんなにも俺を楽にしてくれる? その何気ない一言が
俺に元気と勇気を与えているだなんて、2人は知っているのだろうか。
本家とか分家とか関係ない。これが、“家族”ってものなのかな…。
「ねぇ、静が中学を卒業したら、3人でひとつの華を造りましょうよ!それで、本家の玄関に飾って頂くの」
「あぁ、それいいね。百合の華やかさと、静の優しさ…」
「それと悠の斬新さ。3つが合わさったら、きっと素敵な作品になるわ。来年が楽しみ♪」
「約束だね」
3人でそっと交わした約束。 他愛もないこんな口約束、すぐに忘れてしまうだろう。 それでも俺にとっては
嬉しくて、楽しみで。 この約束を糧に、必死に稽古した。 どんなに辛くても苦しくても。
だけど、その約束が果たされる事はなかった。
その年の冬、肺炎で百合さんが死んだ。
過去編終了。