о●第21話●о
ぎゃあぎゃあ騒いでいる連中を放って、生徒会室を出る。
と。
「杉倉っ!大丈夫か!?」
いやいやいや、あんた誰よ? ってな感じの男が数人。
「杉倉君、3年生にボコられたって聞いて……」
あー…、そういえばクラスにこんな奴らいたかも。 ほとんど話した事ないのに俺の心配してくれたんだぁ。
つーか、ボコられたっつっても、実際2回しか攻撃喰らってないんだけどね。
「ってかごめん。今から靖佳ちゃんと話あるから」
俺の後ろで縮こまっている靖佳ちゃんを指差す。
「ヤスカ?」
「あぁ、あれだろ?生徒会書記の。そういえば、こいつ庇って杉倉怪我したらしいじゃん」
靖佳ちゃんの肩が、ビクリと震えた。
「えっ、マジ?じゃあホントはコイツがボコられるはずだったんだ?」
「杉倉を身代わりにしたんだ?―――最低だな…」
――――ガンッ
辺りに響き渡ったのは、俺が壁を蹴った音。
「…最低なのはどっちだよ」
何勝手な事言ってんだ。 人の気も知らないで。
「べらべら勝手な事言いやがって…。護られる側だって辛いの……お前らに分かるか!?」
キッと睨み付けると、クラスメート達は少したじろぎながら去って行った。
「……ごめ…っ、杉倉く……」
小さな嗚咽。 振り向くと、靖佳ちゃんがしゃっくりを上げながらぼろぼろと涙を零していた。
「僕の、せいで……っ、杉倉君に…怪我…っぅ…」
あぁ、言いたかったのはこれか。
「……んーん。俺も……ごめん…」
ぽつりと謝る。 真っ赤になったその瞳は、“何で謝るの”と言いたげだ。
「護られてるだけっていうのも辛い事、分かってたのに……」
脳裏に、樹の顔が浮かぶ。 …分かっていた、はずなのに……。
「おいお前っ!何靖佳の事泣かしてる!?」
うっわ。 ムードぶち壊しだよおにーさん。
「靖佳っ!大丈夫か!?」
「な…、靖都…っ?」
さすがの靖佳ちゃんもビックリしたようで、涙が止まっている。
やれやれ…、気が抜けた。 この話はここまでとしようか…。 くるりと背を向けると。
「おい」
何だ。 まだ何かあんのか? 言っとくがもう脇腹へのキックはごめんだぞ。
「……靖佳の事、助けてくれてさんきゅ……」
小さい声でそう言ったかと思うと、木松は靖佳ちゃんの手を引いて、どこかへ歩ってってしまった。
……結局生徒会室へは戻らない訳ね。
「――――クスっ…」
たまには、人助けも良いかもしれない。
窓を伝う雨の雫を眺めながら、そんな事をぼんやり考えていた。
第22話へ続く。。