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о●第13話●о


引き続き…

樹視点。




「杉倉くーんっ!これ付けてみて!」


そう言って女子の集団が差し出してきたのは、リボンの付いた赤いカチューシャ。 杉倉君の顔が引きつる。


「あのさ…、俺男なんだけど」


彼の主張も虚しく、その柔らかそうな髪に、赤いカチューシャが添えられた。

その光景を見て、クラス中が息を呑む。 だって、あまりにも可愛かったから。

男子だっていうのは分かってるんだけど、その微妙な髪の長さとか…、ホントややこしい。


「すっごーい!杉倉君ホントかわいー!女の子みたい!!」


女子がきゃあきゃあ言う中、1人溜息を吐く杉倉君。 なんだか、思ったより親しみ持てるかもしれない。

不意に、1人の女子が鏡を取り出して来た。


「ホント可愛いから杉倉君も見てみなよ!」


そう言って鏡を開き、彼の方へ向けた瞬間―――……


ガシャン!


パリーン…


払い除けられ、床に落ちた鏡が砕け散った。 皆、蒼然となる。 当の本人…杉倉君は、

あの時みたいに顔を真っ青にして、立ち尽くしていた。 するりと、赤いカチューシャが落ちる。


「…ごめ……っ」


謝罪の言葉もままならないまま、彼は教室を飛び出した。


「杉倉君!?」


皆が呆然とする中、俺も後に続いて教室を出る。 鏡を払い除けた時、右手を切ってたみたいだし、

保健室に連れてかないと……。 それに…、今彼を放っておいたらいけない気がする。


「杉倉君…っ」


後を追って行くと、ひとつの空き教室に着いた。 その中に、震える小さな人影がひとつ。

そっと手を伸ばすと、ビクッと震えたのが分かった。 何に怯えているのかは分からないけど……。


「―――…?」


優しく頭を撫でてあげると、不思議そうに顔を上げた。 やんわりと微笑んでやる。


「―――杉倉君は、自分が嫌いなの…?」


“笑って”って言った時も、鏡を差し出した時も、何かに…、自分に怯えているみたいだった。


「…わか…んな、い……」


“ただ…”と、弱々しい声で続ける。


「ある人が…、俺の顔、嫌いって……。笑うと…、気持ち悪いって………っ」


―――あぁ…、そっか。 だからあんなに表情を殺してたのか。


「俺は、杉倉君の顔嫌いじゃないよ」

「え?」

「俺だけじゃない。クラスの皆、杉倉君の事、可愛いって言ってたじゃん」


男に対して可愛いはどうかと思うけど、いまはそんなの関係ないっ。

彼はきょとんとした後。


「…そ…っか…。ありがと…」


照れ臭そうに笑った。



 ◆



「…杉倉君?これは何のつもり?」


俺が指差すのは、ぴょこんと結い上げられた自分の前髪。


「だってお前、前髪長いんだもん!そんな長くしてたら暗い奴だって思われるぞ!!」


いや、実際思われてるんで…。


「俺こんなキャラじゃないし…」

「あ!ちょ、何で取るんだよ!」


ゴムを取ろうと伸ばした手を、ぐいっと押さえられる。


「もったいないじゃん!そんな良い顔してんのに!!」

「は?」

「俺女顔だから、お前みたいな顔憧れるっ」


瞳をキラキラ輝かせて見上げてくる杉倉君に、俺は前髪を上げるのも悪くないかな、とか思ったり。





俺がいつも傍にいて、お前を護るっていう約束…、忘れちゃったのか?


波那……。




第14話へ続く。。。



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