о●第12話●о
鳩羽樹編スタート。
樹視点。
昔の俺は、今ほど背も高くなく、ホントに目立たない奴だった。 特別仲の良い友達がいる訳でもなく、
周りとの接触は最低限の事だけ。 きっと、根暗な奴だと思われてただろうな…。
相変わらず1人でいる事が多かった小学4年生。 そんな時だった。 転校生がやって来たのは。
◆
「初めまして。今日からこの学校に通う事になりました、杉倉波那です。よろしくお願いします」
丸くて大きな瞳に、肩口まで伸びた栗色の猫っ毛。
無表情で話すそいつは、見た目も名前も本当に女の子みたいで、思わず釘付けになった。
「じゃあ席はあそこ」
先生の指示に何の反応を示さず、無言で席に着く。 俺の左後ろ。
その無愛想な態度に、こっちの方がハラハラと心配になった。
そんな態度じゃクラスに馴染めないよ、って。 俺も人の事は言えないんだけど。
「杉倉…君?」
思わず振り向いて声を掛ける。 茶色くて、丸い瞳がこっちに向けられた。
「何?」
「え…、いや、えっと……」
何って聞かれても困るんだけど…。 とりあえず名乗っとくのが筋?
「俺、樹。鳩羽樹っていうの。よろしく」
「ふーん」
“ふーん”って…! 顔可愛いのに性格悪い!?
「もう少し、さ…、笑うとかした方がいいんじゃない…?」
少し棘のある口調でそう言うと、彼の顔が一気に強張った。 手が、微かに震えている。
「杉倉君…?」
何か悪い事言ったかな…、と心配になった。
覗き込んだ顔は真っ青。 それでも彼は何でもないと首を横に振った。 手は…、こんなに震えているのに。
過去前編終了。
後編(第13話)へ続く。。。