о●第10話●о
「失礼しまーす?」
何で疑問系なんだ、と静にツッコまれながら、生徒会室へと足を踏み入れる。
ついにこの時間が来てしまった。 変態会長からの変態行為を避る為身構えるが、
そこにあいつの姿はなく、いるのは副会長2人。
「こんにちは」
藤川先輩と菅野先輩に笑顔を向けられ、俺はたじろぐ。
いや、誰でもたじろぐって! 2人共超綺麗なんだよ!?
「琉崎会長はいないんですか?」
「あぁ、里玖先輩?」
「里玖なら今会議ですよ」
「えぇっ!?」
静の質問に対する藤川先輩の返答を聞いて、俺は目を丸くした。
会議!? あいつが!!?
「杉倉君…、すっごいビックリしてる」
菅野先輩がくく…っ、と笑いを零す。
「そりゃあビックリしますよ!あいつが生徒会長って言われた時もビックリしたけど……」
「やっぱり?里玖は生徒会長とは正反対の風貌してますからねぇ」
「じゃあ俺達の事はどう思った?」
納得する藤川先輩と、興味津々で聞いて来る菅野先輩。
菅野先輩みたいな人が“俺”って言うと、違和感あるなぁ…。
「…お2人は…、すっごい綺麗な人だと思いました」
俺の言葉にきょとんとする副会長'z。 そんな事には気付かず、俺は続ける。
「見た目ももちろんだけど…、動作とか、話し方とか。 本当に女の人みたいで……」
あまりにも綺麗で、思わず見惚れた。 さすがにそこまでは言えないけど。
ちらりと目を向けると、2人は微笑む。 顔を真っ赤に染めて。
「そこまで言われると照れるなぁ…」
「杉倉君も可愛いですよ」
優しく、頭を撫でられる。 その気持ち良さに、可愛いと言われた事はスルー。
呆けている静と靖佳ちゃんを視界の端に捉え、にへら…と締まりのない笑みを零していた時だった。
「――った…」
急に、俺の頭を撫でていた藤川先輩が顔を顰める。
見ると、俺の後ろから伸びた腕が藤川先輩の白く細い腕を強く掴んでいた。
「何…するんですか…?――里玖…」
俺が振り向くより早く、藤川先輩がその名を呼んだ。
「…お前こそ何やってんだよ」
かーなりご立腹の様子。 えー。 何で怒ってんのこの人。
「何って……頭を撫でていただけですが?」
あれ? なんか笑顔が黒いですよ先輩。
「勝手な事してんじゃねーよ」
いやいやいや。 アナタの許可いるんですか。 ってかいきなり熱い抱擁かまして来た奴がよく言うよ。
うーわー。 2人の周りが黒く淀んで…。 …うん。 藤川先輩の本性が見えて来た気がするよ…。
生徒会役員が次々と辞めていった理由もこの人だったっけなぁ…。 この“黒さ”が原因っぽいね〜…。
「3人共っ」
見かねた菅野先輩が、俺ら1年を呼ぶ。
「先輩達、あぁなったら手付けられないから…、せっかく来てもらって悪いんだけど、今日はもう……」
苦笑いを浮かべる先輩。 確かにあの2人…、譲りそうにない…。
お言葉に甘えて、俺らは生徒会室を後にした。
負けず嫌いの里玖と腹黒い千聖。
この2人は悠がいないと
喧嘩が終わりません。
1番の苦労人は、
もしかしなくても悠ですね;;
第11話へ続く。。。