о●第1話●о
高くも低くもない声、華奢な体、栗色のねこっ毛、白い肌、長い睫毛、ぱっちり二重、形の良い唇。
どこからどう見ても、可憐な美少女。
……………“美少女”だぁ??
ふざけんな!! 俺は男だバカヤロ――――ッッ!!!!
俺の名前は……杉倉波那。 誰だ?女みたいとかほざいた奴。
身長165cm、体重45kg…、ちっこいけど、健ッッ全な男子高校生だ。
この容姿のせいで女と間違われて15年……、もう俺は半ば諦め掛けていた。
「は―――なっ♪」
突然後ろから聞こえた陽気な声。 そして、後ろから抱きすくめられる。
あ。言い忘れてたけど、俺が今日から通うのは男子校。 女子なんて1人もいない。
となると、この後ろから抱き付いて来る暑苦しい奴はもちろん男な訳で。
「うあああぁぁぁぁっ!!くっつくな気持ち悪い!!!」
毎度の如く悲鳴(という程可愛いもんじゃない)を上げ、首に巻き付いた腕を引っ剥がす。
振り向くと、案の定“あいつ”が立っていた。
「てめぇは朝からキモいんだよ!!」
「うん、波那は朝からかっわい―――っ♪」
………………殴っていいか?
この気持ち悪い変態野郎は、鳩羽樹。
身長179cm、体重……知らん。
小学校からの腐れ縁。 いや、まじで縁切りたいんだけど。
ま、とにかく。 認めたくねぇけど、結構これが格好良いんだわ。
「波那〜、駄目だろ?悲鳴は“きゃあぁぁ〜”じゃなきゃ!」
ご覧の通り、中身はとてつもなく可哀相な奴だけどな。
◆
良かった〜…。 樹と同じクラスじゃなくて。 心底安心したよ俺は。
ガラッと教室のドアを開けると、皆の視線が俺に集まった。
何だよ? 俺何かしたか?
不審に思いながら、黒板に書いてある通りに席に着く。
「おはよう」
不意に、前の席に座っていた奴が振り向いた。 動作に合わせて、さらさらの黒髪が揺れる。
「杉倉波那、だよな?」
「うん?何で俺の名前知ってんの?」
俺、こんな眼鏡美少年と面識ないよ?
思った疑問を素直にぶつけると、俺の前に座る眼鏡美少年はきょとんとした顔で言った。
「結構有名だよ?」
有名って………誰が? 何故に?
「“美少女顔”の杉倉波那。それ、お前だろ?」
び し ょ う じ ょ ? ? ?
「特にこの学校は女子いないから、良い目の保養として目を付けられると思うけど」
あぁ…。 だからさっき教室入った時皆見てたのか。
―――って……、美少女って何だ美少女って。 俺は男だっつの。
しかもその話が本当なら、俺はこれから3年間、発情期の雄犬どもにキモい視線を注がれる訳か。
うわやべ。 鳥肌立ってきた…。
「おーい?大丈夫か?」
あまりのキモさに現実逃避していた俺を、眼鏡美少年君が現実に引き戻してくれた。
うーん…。 正直言うと、戻って来たくなかったけど。
「菅野静」
「へっ?」
「俺の名前。菅野静」
シズカ……、しずか……、静………。
女っぽい名前……。 うん。 こいつ身長高いけど、なんか仲良くなれそうな気がする。
「“静”って呼んでい?」
軽く笑い掛けると、眼鏡美少年改め“静”は頷いた。
やった! 友達第1号☆ ガラにもなく舞い上がる俺。
な・の・にっ、こいつは………。
「じゃ、俺はお前の事“姫”って呼ぶ」
「…………………はい?」
だから何故に。 俺は男だぞ? 呼ぶなら“王子”だろーが。 いや、それも嫌だけど。
「だってお前、顔ホント女みたいだから“姫”が1番合うと思う」
なーに真顔で言ってくれてんだコラ。
前言撤回。 こいつとは友達になれそうにありません!
女顔美少年・波那、変態美少年・樹、眼鏡美少年・静の
高校生活は、これからどうなって行くのか?
そして、波那は発情期の雄犬共から上手く逃れられるのか??
どうぞお楽しみにww