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やけくそデート

二話目を書いてみました、人外には様々な種族がいて妄想が膨らみます。

「もうアンタでいいわ!デートよデート!!シュミレーションするわよ!!」こうした私の突然のデートシュミレーションは、いつもなら失恋の後、やけくそになって言い出すのだけど、今回のは違った。「オ〜!またデスか?珍しいデスねぇ?前に失恋してからもう二ヶ月と十日経ってマスよ?」「うっ、い、いいじゃない別に!気晴らしよ気晴らし!てかなんでそんな詳しくカウントしてんのよ!」コイツ、無駄に察しが良い!前に聞いたコイツの誕生秘話で、私は少しスペクターに対しての印象が変わった。「ジャストモーメンッ!」ついでに姿形も変わった、相変わらず全身黒ずくめだけど服はシンプルなTシャツにズボン、口元のマスクの白だけがやけにハッキリしていた。足はちゃんと地についている。「アンタまたその服〜?地味じゃない?」「そう思うんならプレゼントしてくださいヨ〜。」「オバケに買ってあげる服なんてないわよ。」そんないつもと同じようなやりとりをしながら町へ繰り出す。「えーと、どこに行こうかな…。」失恋の痛手を癒すためのものならケーキ屋とかレストランでやけ食いを決め込むのだけど、今回は余計なカロリーを取ることも無いので行き先に迷ってしまう。とりあえずお店が建ち並ぶ繁華街まで来てみたものの、そのどれにも興味はそそられなかった。あっちこっちと歩き回る私に、カルガモの子供のようにスペクターが付いて回る。「あ〜も〜…、なんか安くて楽しくて時間潰せるとこ無いかな〜。」伸びをしながら、何か突拍子も無い提案をしてくれないかとちらりと連れを見ると、期待通りにソレは得意そうに笑っていた。「ならボクの行きつけのショップにご案内しまショウか、ヤングレディ?」「お!さすがじゃない!普通じゃないアンタが行くようなお店なんだから、絶対平凡なとこじゃないんでしょうね?」「オフコース!必ずやご満足頂けるものと思いマース!レッツゴー♪」頼もしい言葉と同時に、スペクターは体温の無い手で私の手をとり、走り出した。「ちょっ、ちょっと待ちなさいよっ!歩いて行けると」「着きマシタ。」「はぁっ!?」走り出して五分も経たないうちに、人気の無い狭い路地裏に連れ込まれた。両側にはレンガとコンクリートの壁、奥には別の通りが見えていて、地面には昨日降った雨の水溜りとダストボックス。というありふれた薄汚い路地裏。「…あー最高、もう大ッ満足だわー。」「まぁまぁカームダウン、ワンダーなショップへの行き方は、同じくらいアンビリーバブルなんデス♪」ジャストモーメンッ、とウインク一つを合図に、スペクターは立て掛けてあったボロボロに使い古されたモップを手にした。「なに?モップで空でも飛ぶ気?」寂れた路地にいるのはあまり良い気分じゃ無く、多少イライラしながらなんかの作業を見守る。ソレは鼻歌なんて歌いながらモップを水溜りに何回か浸すと、両側の壁を交互に見てから一瞬悩み、結局レンガの壁に決めたのか濡れたモップで何かを描き始めた。「え、ちょっと何してんのよ?そんなとこに絵なんか描いていいの?」「ノープロ〜ブレ〜ム♪後で消しマース。」そうか、水だから時間が経てば乾いて消えるし、そもそも白いコンクリじゃ何描いてるか分かりにくいものね。納得してソレの背中から壁を覗き込んでみると、描いていたのは絵では無く、どこかの文字みたいだった。最後にその短い文章を、本で見た魔法陣のように変わった線で囲むと、満足そうにモップを地面に突き立てた。「フィニ〜ッシュ!我ながら上手く描けましたヨ〜。」「ふ〜ん、それで?描いただけ?」ふふん、と横の私を見て笑うと、ソレはモップをカッコつけて投げ捨て、唱えた。「$〒=○°¥○☆+<。」聞き取れないくらいに支離滅裂な発音の羅列、すると泥水の魔法陣が水面に浮かんでいるみたいにうねりだし、やがてぽっかりとした穴になって消えた。「わっ…すっご〜い!!魔法?!アンタこれ魔法なの?!わ〜!!」マジックを見た子供みたいに、自分でも苦笑してしまう程はしゃいで見せると、スペクターはそれを見る母親みたいな目で微笑んでいた。ちょっと恥ずかしくなって、慌てて話を進める。「そっ、それで?この穴はどこに繋がってるわけ?」「それは入ってみてのお楽しみですヨ…♪」えー、と膨れる私をよそに、スペクターは頭を下げて穴の入口をくぐると、振り向いて手招きをした。はしゃいでおきながらちょっとドキドキして躊躇していると、大丈夫ですヨ、と言うように長い腕を伸ばし、私に手を差し出した。仕方ないわね、と強がってみせてその手を取ったけど、本当はまた少し照れただけっていう事は、多分死んでも言えない。そして私たちは薄暗い穴を進んでいく、後ろを見ると丸い入口が段々と縮んでいくのが見えた。なぜか二人とも無言の二分間が、ソレの明るい声で終わりを告げた。「着きましたヨ〜!さぁさぁヒァウィーゴー♪」入店したお店は、思っていたよりも斜め上の突飛さだった。「…!」圧倒。洞窟をそのまま使っているようなゴツゴツした内装、壁や床、天井にまでごちゃごちゃと品物が蔓延っていて、しかもそれらにはまるっきり共通点というのが無かった。つまりは食べ物屋なら食品とか、服屋なら衣服とかいうのではなく、とにかく、色々な物があった。「……はぁ…。」余りに品物からの威圧感とでもいうのか、迫力が凄くて、気の抜けた声を漏らした。「いらっしゃい。」気怠げな、それでもなぜかハッキリ聞き取れる声で、その風景が現実に馴染んだ。カサリと薄い紙の音がした方へスペクターは親しげに声を飛ばした。「ワオ!マスターお久しぶりデス〜!!相変わらず良い品揃え〜♪」「あぁ、お陰で俺の居場所は狭くなる一方だ。」なんて書いてあるか分からない新聞のような冊子から目を離さず、このお店の店主らしき人は答えた。「ねぇ…スペクター、ここって…何のお店なの?」肩を叩いて小声でそう聞いてみると、ソレはう〜んと首を傾げた。「えぇ?アンタ来たことあるんでしょ?」「そりゃあそうですケドォ〜…んー?このショップ何でもあるんで…なんでも屋?いや、それだと意味合い変わってきちゃいマスシ…ねぇ!マスター?結局このショップどのカテゴリに入るんデスか?」「あぁ?…あ〜そうだな…ん?」ようやく常連の男以外の客に気づいたのか、店主さんは新聞をカウンターに置いた。目が、合った。「「…は?」」声が、合った。いやそこはどうでもいい。肝心なのは店主の外見だ、普通じゃないお店なのだからそこを営む人も普通じゃないんだろうと予想してはいたけれど、また斜め上を行くインパクトだった。魚だ、よく見るけれど初めて見た魚の頭の人、しかも目がたくさんある、私と目が合ったのはその一つにすぎなかった。言わずもがな私はとても驚いたのだけど、店主さんの方もいくらか吃驚したらしく、全部の目を点にしていた。「なんだお前、そりゃあ人間か?なんで人間なんか…」「ドントウォーリー!このヤングレディは今のボクの〝縁〟デスヨ〜。」ん?と引っかかる言葉があったけど、店主さんの見た目の衝撃が強すぎて考えられなかった。そんな私の切羽詰まった表情を見て、意外にも店主さんは私に不器用そうな笑顔を向けてくれた。「あぁ、なるほどな。いや、驚かせて悪かったな嬢ちゃん、この店は…まぁ色々と取り扱ってる百貨店を一棟にまとめた様な店だ、ちっとばかし人間には物珍しいモンばかりだろうが…なぁに俺ァ別に取って食いやしねぇよ、ゆっくり見てってくんな。」「…あ、ハイどうも…。」なんだか優しそうな人(?)らしく、ホッとするとペコリと頭を下げた。「シェリル〜!アナタの好きそうなモノ見つけましたヨー!」いつの間にかスペクターは奥の天井の鍾乳石みたいな棚の前で楽しそうに浮遊していた。近くに行って眺めて見ると、そこにはキラキラした石や高そうなアクセサリーなどが雑に押し込まれていた。「うわぁ…なんか、こうもぎゅうぎゅう仕舞われてると折角綺麗なのに価値が下がって見えちゃうわね…。」いかにも高価そうな宝石をこんな風に陳列していいものなのかと若干引いてしまったが、カウンターの店主さんが興味無さそうに説明してくれた。「いいんだよ置くとこ無ェし、それにある客がそれを代金にしてるからこっちにゃ売っても売っても腐る程余ってんだ。欲しけりゃ全部やるよ。」なんという価値観の違い、さすがに全部持って帰ったら強盗に狙われそうなので丁重にお断りした。スペクターがもったいな〜いなんて呑気に言っていたが、人間と人外では価値観がまったく違うのだろうと無視した。そうして私が別の棚に目を移した時、天井がガタガタと揺れだした。「えっ、な、何?!地震!?」こんな地下で地震なんか起こったらひとたまりも無いと慌てていると、ソレが至って普通そうに上を指さした。顔を上げると、大きな丸い天窓があった。ん?地下なのに、天窓?呆気に取られていると、ついにその天窓が勢いよく開いた。にゅっ、と突き出てきたのは真っ白で巨大なドラゴンの頭だった。「邪魔するぞ店主よ、我の鱗磨き用の薬を買いに…ん?」ぐるりと長い首を180℃回して、そのドラゴンはこっちを見た。「なんだ、嗅ぎなれない臭いがすると思ったら…そなたは人間の娘か?」その重低音で私は身体の底から硬直してしまい、瞬きさえ出来ずに鋭い眼に縛られていた。すかさずスペクターが助け舟を出してくれた。「ミスターハクリュー、お久しぶりデス!このヤングレディはボクの連れなんデスヨ。」「おお!影の若人ではないか!!暫くだな、前会った時よりかいささか闇が濃くなったな…そうか、その娘の力か…なるほどなるほど。」コイツ、なんか凄そうなドラゴンとも知り合いなのか!しかもまた意味深な発言、本当にどんな人生送って来たんだろうか。「白龍の旦那、そう見つめてやるな、嬢ちゃんが石になってるぞ…ほら、いつものだ。」ガサッ、と店主さんが紙袋をドラゴンに差し出してくれたお陰で、私はドラゴンの眼から逃れる事が出来た。「おぉ、済まぬな…そら、代金だ。」そう言ってドラゴンが紙袋と引き換えに渡したのは、自分の物だと思わしき白い鱗だった。「ミスターハクリューの鱗はすり潰して加工すると万能の薬になるんデスヨ。」とスペクターが耳打ちしてくれた、どうやら私達人間が使ってる様な通貨は存在せず、物々交換で物を売り買いしているらしい。ならコイツは品物を買う時、何を代わりにしているんだろうかなんて疑問に思ったけど、なんかヤバそうだったので聞くのは止めておいた。「では、さらばだ皆の者。」来た時と同じくガタガタと音を立てて、ドラゴンは帰って行った。天窓は自然に閉まった。「…もしかして、客層半端なく広いのかしら…。」やっといつも通りの思考力が戻ってきた頭で、今更この店の不思議さを痛感していると、スペクターが可笑しそうにクックッと喉を鳴らしていた。「驚きマシタァ?どうデス、退屈なんて吹き飛ぶでショ?」「え、えぇ。…てゆうか、ねぇ…さっきあのドラゴンの言ってた事は…」「恋の病に効く薬!」そう言ってソレは私の言葉を遮り、目の前に小さな小瓶を突きつけた。中は透明感のあるピンク色の液体で満たされていて、思わず私はそれを手に取ってしげしげと観察した。「恋…に効くの?本当に?」「イエス、ラベルにそう書いてありマス!」裏を見ると、古く掠れたシール式のラベルが貼られていたけど、案の定私には読めない字体で何か書かれていた。スペクターがそれを正しく読み上げた。「この驚くべき薬を飲み干せば、乾いた貴方の心に深く染み渡り、恋に苦しむ全ての魂に救いをもたらします。」「わぁ…なんか効きそうね。」小瓶の蓋を開けると、きゅぽんっと音と共に花ともお菓子とも似つかない甘ったるい香りが鼻をくすぐった。「うわっ、いかにもって感じの匂いね…飲んじゃおっかな〜。」なんて半分本気の冗談をつぶやいたら、店主さんが淡々と怖い事を言った。「飲む飲まないは勝手だがな、その効果がどういったモンなのかってのを知らずに飲むのは取り扱ってる側としちゃ勧められねぇな。」「え?効果…?」確かにこのラベルには「恋に効きます。」としか書かれていないみたいで、どう効くのかは分からない。店主さんはその恐ろしい効果を教えてくれた。「その薬の効果は嬢ちゃんが思ってるような都合の良いモンじゃねぇぜ、大方嬢ちゃんは飲めば恋が叶うとかそんな効き目だと思ったんだろ?」「ち、違うの?」「逆だよ、逆。それを飲んじまったら最後、そいつから〝愛する〟という感情が消える。」「え?!」聞くや否や私は爆弾でも持っていたかのように、その薬から手を放してしまった、床にぶつかるすんでの所で、スペクターがそれを受け止めて、なんとか賠償は回避出来た。「おっと、気を付けてくれよ、他の品物に被害が出たらどうする。」「ご、ごめんなさい…。」素直に頭を下げて謝罪すると、店主さんはふん、と鼻を鳴らしただけで、カウンターの下から変わった色形の羽で出来た羽根帚を取り出して掃除を始めた。「良かったデスネ、快く許してくれマシタヨ。」「いや全然快く無さそうなんだけど…やっぱり人間ってアンタたちからはあんまり好かれてないのかな…。」絵本の中でも、大抵人外と人間は倒し倒され険悪な感じで描かれていることが多いし、中々人間に酷い目に合わされている怪物もいる。仲が良いのは妖精くらいだろうか。ちょっと残念がっていると、こちらを見向きもしないで黙々と掃除をしていた店主さんがぽつりぽつりと話し出した。「いんや、別に俺ら全員が人間を悪く思ってる訳じゃあねぇ…まぁ、それぞれにそれぞれの考え方ってやつがある。俺としちゃ人間どもはわりかし嫌いでもねェ、だが少しばかり腑に落ちねェってとこもあるがな…そら、噂をすりゃ人間に興味深々なヤツのお出ましだぜ。」頭の横に付いている目で示された所を見ると、普通のサイズの何十倍もの大きさで店の幅を取っている金魚鉢が、まるで沸騰したお湯みたいに泡立っていた。しかし、湯気は立っていない。するとその泡の中からイリュージョンのように現れたのは、可愛らしい女の子の人魚だった。

百々目鬼魚人!白竜!!恋の妙薬!!!このお店行きたい!!!!と思って頂けるように書きました!!!!!お目汚し失礼いたしました!!!!!!

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