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09 姫野、生徒の猛攻をかわす

 女子中学生数名が姫野倫の周りに集まっている。

「姫野先生!!姫野先生!!今度、私に勉強教えて下さい!!」

「私も!!私も!!」

「ちょっと・・ちょっと待って下さい危ないですよ。そんなに集まって騒いだら・・・」

セリノの友達のアミもその中にいた。


「セリノはさ~~姫野先生の事カッコイイと思わないの?」

「う~~~んどうかな?」

「カッコいいじゃん!!ねぇ。」

「そうだよ、セリノ。セリノはさ~~好きな人とかいないの?」

「・・・・う~~~ん・・どうかな。」

「いっつもセリノは、そうだよね。男の人に興味ないの?」

「興味・・・・?」

「はぁ~~何だよセリノ面白くないな~~もっと恋バナしようよ。恋バナ。私達、女子なんだよ。もっと中学生らしく、この場を楽しもうよ。」

「あっ!?そう言えばこの前の空手の大会で姫野先生優勝したんだよ。ちょーカッコ良かったよ!!」

「ねぇスグ勝負着いたからね。」

「一瞬だったよね。一瞬、相手に一発胸に攻撃当てたらポイント関係なしに棄権しちゃったんだよ!!」

「・・・・・そうなんだ。」

「それにね姫野先生忍術もやってるっていう噂聞いたよ。」

「えっ!?忍術?リアルに忍術ってあるの?あれって作り話じゃないの。」

「忍術って忍者が使うアレ?分身したり木に化けたりって・・・ナルトの・・・」

「マジ忍術って作り話じゃないんだ~~!!じゃあ姫野先生って分身とかできる・・とか?」

「えっマジ!!マジで!!でも姫野先生なら出来そうじゃない?」

「そうだよね~~マジで~~カッコイイよね~~!!」


何故あの子は私の所を振り向かないのだろう?

他の女の子は、私を見るなりスグに集まってくるのに・・

あの子だけだ。イスに座って窓の外を見ながら頬杖をついている。

それも毎日だ空に何があると言うのだろうそんなに魅力的なのか?

ただ青いだけだろう。それよりも私は劣っていると言うのか?

何故、私の存在に気づかないのか?

何故、私を見てくれない?

職員室に変える途中、何故か君の事だけ考えてる自分がいた。

すると私が席に座る前に・・もう、遠回りして女子生徒が僕の陣地に待機していた。又か・・・

いつもの事だ・・・

「先生、はい!コレ!!」

女生徒が細い手を伸ばし両手で私に可愛い包装紙に包まれた小箱を手渡してくれた。

「私、追いつくから後4年経ったら先生に告白しにくるから・・・」

「はいはい分かりました。もう授業始まりますよ早く教室に戻って下さい。」

この手の言葉はもう100名くらいの女子生徒に言われていた。

そして、自分の席の横のダンボール箱を見た。

そこには、ドッサリと散雑に包まれたバレンタインチョコの小箱があふれるほど積まれていた。

それを毎年の様に宅配便の方に来てもらって家に運び一人でゴミ袋の中に廃棄している私を皆は想像しているのだろうか?

こんな小さなマンションのキッチンの横で一人一人のチョコを一つ一つ手に取り罪悪感を感じながら捨ててる姿を・・・

・・・貰っても返って迷惑って言う事もあるんだ。

私は、5年後に告白しに来るって言ってきた、この可愛い包装紙に包まれたカワイイチョコを可愛い包装紙ごと左手で思いっきりグシャリと握り潰した。


        ・・・・・


それより、こんな沢山のチョコより、たった一つの君のチョコが欲しい。



化学室の黒板には全く歪みの少ない文字と英数が横一列に次とチョークで書き出されていて下の列まで続いていた。

「DNAと言うのは、デオキシリボ核酸と言うという事は、この前の授業でも説明いたしましたが、このデオキシリボ核酸と言うのは、ゲノム・遺伝情報・遺伝子で簡単に説明する事ができます。まず、ゲノムと言うのは、つまりDNA総称の事です。遺伝情報で親から子に塩基の情報が受け継がれ遺伝子により、多くの引き継がれた情報をもとにタンパク質が作られていきます。」

冷静な表情で言葉を発した姫野倫は更に静かにこう続ける

「つまり、私達人間は、男性と女性様々な遺伝子情報をもとに段々と分裂していくのです・・・・そう、君達がこの世に産まれてきたように・・・・」

すると、一人の男子生徒が身を乗り出して大きな声で言った。

「先生、要はコウショウだろ!!男とさ~~女の。」

それを聞いた女生徒はいかにも嫌な目をしてざわついた。

「キャー、もう嫌だ男子って本当にデリカシーって言うモノがないのよね。」

「なんだよ!!要はそう言う事だろ!!」

「そうだよな、そういう事だよな!!」

「何も間違ってねーよ!!」

次々と男子生徒の抗議が始まった。が・・・女子も屈せずにそれに反論した。

「ホント下品よね!!」

「そうよね気持ち悪!!」

「何だよ!!本当の事じゃねーかよ!!なー。」

「だから、それがキモイの。声を大にしていう事じゃないでしょう!!」

「ホントちょーキモイよね。」

「何なんだよオメーラ!!」

段々と話しをするにつれ男子も女子も声が大きくなりイスから立ち体を動かし、身振り手振りまでも使って対抗する人も現れた。

それを冷静な目で見ていた姫野は優しい言葉で生徒を落ち着かせた

「まぁまぁ皆さん静かに・・・・確かに男性と女性の交わりによって生物は誕生します。だから、その行為は人間にとってとても重要な事です。ですが、その行為に嫌悪感をいだく者もいます。でも、そういう事が全てって事じゃないハズです。人間はそう言うモノじゃありません。人間には愛があります。見て下さい自分の親をあなた達を優しく支えているじゃありませんか。だから、その行為が全てじゃなくて、

今ここにいるあなた達を愛してくれている、人達がいるっていう事が本当の重要な事じゃありませんか。」

そう言うと姫野は、セリノの方を見てにこりと微笑みを浮かべたがセリノは振り向きもしなかった。が・・・

話し続けた。そして、それを聞いた男子生徒が笑いながら言った。

「先生ハズイよ~~!!ハズくね!?」

「何よーー!!ゲス男子今、先生ちょー良い事言ってたじゃん!!」

「いやいや、それはハズイだろ!!」

「ホント男子ってサイテーよね!!」

「まぁまぁ皆さんこれは授業ですよ静かに、それじゃあ今から植物の細胞を取り出す実験をしますよ。皆さん、お花をココの列の人達から順番に取りに来てください。」

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