08 ケモノ・・・・・・
その日は、ずっとケイタイとメールが鳴りっぱなしだった。
要件はもう分かってるんだ。母の容体が悪くなったて事ぐらい・・・
でも・・・・・
私は洸から離れられない。
だってずっと洸と一緒にいるって決めたんだもん。
その心は実の母が、この世からいなくなるって事より私には重大に思えた。
今は洸しか見えない。それでも。それを阻止するかのようにケイタイが鳴り響いている。
お願いだからもう消えて・・・私が私をどう動かすかなんて私の勝ってでしょう。私の手足だって私のモノ・・・私の顔だって・・・頭だって私のモノ・・・ましてや、心なんてその芯になるモノだから私の勝手でしょう!!
気がづいたら初馬兄ちゃんが立っていた。
でも普段とはかけはなれた今まで、見た事の無い表情をしていた。初めて見たこんな初馬兄ちゃんの表情・・・・
「セリノちゃんのお母さん、さっき死んじゃったよ・・・何でこなかったの?」
「だって洸が・・・・」
「洸がって!!」
「かわいそうじゃん洸・・・・・・」
「洸の事はいいんだよ!!お母さん死んじゃったんだよ!!何とも思わないの?」
「だって決めたんだもん!!洸とは離れないって!!」
「・・・洸はいないよ・・・」
「いるじゃんココに!!」
「洸はもうここには、いないんだよ。」
「いるじゃん!!ココに・・ホラ・・こんなに手温かいんだよ!!」
「そいつはもう洸じゃない・・・」
「洸だよ!!洸!!。何言ってんの分からないの洸の事!!」
「みんな何も言わないけどさ。本気でセリノちゃんの事心配してるんだよ。」
「心配?私の事心配・・・・洸の事は?洸の事は心配じゃないの!?」
「一生そうしてる気?・・・洸は、そんな事望んでないよ。」
「でも!!・・・でも洸の側にいたいの!!洸とずっといたいの!!」
「・・・そっか、じゃあずっと、そうしてればいいよ。」
時間って不思議だ。楽しい事やってたらスグ過ぎて行くんだ。
でも・・・私の時間は決して過ぎていかない。
何でだろうずっと洸と一緒にいるのに時間が過ぎていかない
こんなに洸と二人っきりでいるのに・・・楽しいハズなのに・・・・ずっとそのままなの時計が。針が進んでいるのに遅いの
・・・時間が・・・面白くない・・・
全然面白い事なんてないよ。
ごめん洸・・・・・ごめんね・・・・・
その日から学校に通ってる自分がいた。
初馬の父とミチルの声が団地内に響き渡っていた。
数ヵ月も前より更に二人の仲は悪化しているようだ。
「だから!!洸はこうなったのよ!!」
「何だと!!全部俺のせいにするのか!!」
「あなたがあの時なんでもいいから仕事しろって言ったから洸はあの仕事に決めたのよ!!」
「・・・・それもあるかも知れないな・・・でも、洸はもう帰ってこないんだ・・・」
そう言うと二人は別々の部屋に入って泣いていた。それを家の外で聞いていた初馬は家中には、入らず近くの公園のブランコに座り静かに歌を歌い始めた・・・
「セリノ久しぶりじゃない買い物一緒に行くの。」
「うん。私こんなに買っちゃったよ。」
「アミ買い過ぎ!!セリノは、何買ったの?」
「・・・・・コレ。」
「うわぁ~~~キレイ!!」
「指輪じゃん!!それも二つ・・誰にあげるの?」
「・・・・もしかして、例の彼?」
「まさか・・・違うよ。」
「じゃあ誰にあげるのよ!?」
「・・・・あげないよ誰にも・・・」
「じゃあ何で二つ買ってるのよ?」
「・・・・う~~~ん。」
「も~~~う、照れちゃって!!どうせ今付き合ってる彼にあげるんでしょう!!」
「だから違うって!!」
「またまた!!」
「違うって!!・・・・・それに後もう少しで契約期れるもん。」
「そうなんだ。何かさびしいね。」
「さびしくなんかないよ。」
「あっ!?それでた、それで最後の日にカレシに指輪あげるとか?」
「だから違うって!!」
「じゃあ誰にあげるのよ?」
「誰にって・・・・」
私の頭の中には、洸が映っていた。
洸が笑った顔・・・洸のふざけた顔・・・洸が困った顔・・・そして、別れ際うしろを向いて片手をダラッと上げニヤッと苦笑いした顔・・・それが私の見た洸の最後の顔だった。
明日になったらまた会えると思っていた。だが、
その当たり前の様な顔がたった一日で一瞬にして消えてしまった。
もう二度と見れない顔が私の脳の片隅のハードディスクの中に深く記録されている。だが、私の中の思い出は日々、アップデートされていくので最新の洸はもういない・・・
だから、段々と洸の動画は、履歴からは一番下の方になっていくのだろう。
そして、いつの間にか気がついたらハードディスクが古くなって取り替えなきゃいけに時が来るかも知れない・・・
そしたら、その時、洸は消え新しい私の中のハードディスクには、別の人達の顔が日々記録されていくのだろう。だけど・・・・私の中にはまだ、洸はいる。洸は生きてる。
だから、今の内に自分の中のハードディスクから、洸の写真を現像して置こう。
そして、前にお父さんから話を聞いた事があるネガだっけ?
写真のネガを数枚れいみん所・・・?で画像が劣化しない様にそっと置いて置こう。私が死ぬまで・・・洸のあの顔を・・・あの笑った顔を忘れないよに・・・・
「セリノなに、そんなに真剣な顔してるの?恐いよ。」
「えっ!?」
セリノとそのセリノの友達二人は商店街を抜けると近くのクレープ屋さんで互いに違う種類のクレープを選び食べながら人気のない路地に出た。
すると急に外国人らしき男一人と日本人らしき二人の男がセリノ達の前と後ろを囲んだ・・・「キャーーー!!」
セリノの友達アミが悲鳴を上げた。が
日本人の体格の大きな男がアミの口を力強く抑えた。
「おい!!騒ぐな騒げばコイツの首かっ切るぞ。」
その男は懐からナイフを取り出しアミの首元に近づけた。
「ヨシ!歩けさっさと歩け!!」
セリノ達はあまりにも恐怖で足がこきざみに震えていた。
男達は少し笑いながら、セリノ達の腰に手を回しながら路地裏近くに止めてあったワゴン車にセリノ達を強引に押し込もうとしていた。
「早く乗れよ!!言う事聞けば危害は加えねーよ。」
そう言われたがセリノ達は手足を大きく動かして、そこから、逃げようとした・・が男達にしっかりつかまれていたので動かす事が出来なかった。
声を出そうにも口がふさがれていた為、大声で助けを呼ぶ事もできない。
その時、黒い影が男の首元に伸びた。
後ろへと引きずりこまれていく男。首と手が綱に手繋がれて標識の柱にしっかりと体がくっついた。
そして、もう一方の外国人らしき男は手を取られ、体が宙に浮き腰を強打して、身動きが取れない状態になった。すると、アミの首元にナイフをつけている男が叫んだ。
「お”い”お前、動いたらこの女の首かっ切るぞ!!」
「その子の首が切れるのと、あなたの首が切れるのどっちが速いか比べて見ますか?」
「なに!?・・・・オイ!!嘘じゃねーぞ!!ホントにこの女の首切るぞ!!」
「じゃあ仕方ありませんね。」
「はぁ!?」
男がアミの首元にナイフを押し切ろうとした。が体が動かない・・・「何だ!?何だよ!?」
見て見るとスデに網がその男の手首と体に縛られていた。そして、網を引っ張ると、その男の手が自分の首に近づきナイフが首に突き付けられた。
「それがあなたの答え何ですね?」
「いや・・いや!!待て!!俺が悪かった!!だから助けてく・・・・!?」
「そうですか。私はそんなに非道な人間ではありませんのでね。やめましょう・・・だけど次・・あった時、その光景を見たら許しませんよ、とりあえずここは、警察に任せましょう。」
通報を聞きつけた警官がやってきて3人の男を取り押さえていた。
「君たち大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
「先生~~~!!姫野せんせ~~い!!怖かったよ!!」
「良かった。そんなに大きな声が出るのでしたら大丈夫みたいですね。」
「でも、先生なんで、こんな所に?」
「・・・・・・あっ?偶然通りかかったらね君達の姿が見えたから後を追ったら男達に連れ去られて行かれそうになっていたから・・・さ。」
「へぇーでも久しぶりだよね。姫野先生。」
「そうですね。2年振りですかね。君達が中学校卒業して以来ですから・・・・ねぇ。」・・・・不適な笑みを浮かべセリノの顔を見た。
「いいよ!!いいよ!!私たちがオゴルよ!!だって今日、先生が助けてくれなかったら私達どうなってたか分からないし・・・・先生は天使だよ!!」
いや・・・悪魔だ・・・
・・・そいつは悪魔だ・・・
それを証明するかのように私の心臓の鼓動は、あの襲ってきた3人組の男に力づくで車に乗せられようとした時よりも遥かに高い
「天使か・・・・じゃあ、ご遠慮なくごちそうさまでした。」
「私たちは、こっちなんだ。先生も家、確かこっちだったよね。」
「いえ、今日は用事がありますから、こっちから行きます。セリノちゃんもこっちですよね・・・じゃあ、一緒に途中まで行きましょうか。」
「・・・・・・・」
「じゃあね~~~セリノ。」
「じゃあね。先生。」
私達は2人の間には会話が無かった・・・
・・・もはや、もう全ての事があらかじめ決まっているかの様に、あまりにも自然な歩測だった。
そして、彼は「分かってるよね・・・・」とだけ言って私の前から立ち去って行った。
一歩一歩あるくたんびに心がズキズキしていく、そして、吐き気がする。
もう、思い出したくない・・・思い出したくないよ・・・でも、脳の中ではアイツとの行為が消えない。