魔法少女の烙印
意識を取り戻した時、
空と大地が混じりあい、
どこまでも虚無が広がっていた。
太陽が昇り、
地平線の区別がつくころには、
恐ろしかった虚無への錯覚が、
素晴らしい錯覚だと気付いた。
一人の少女が、
フリルのついたドレスを着て、
青空を舞い、
悪霊を殺していた。
だが悪霊には肉体が無い。
肉体が無ければ殺すことは出来ないはず。
少女は虚ろに接触する魔法を使えた。
その姿が今でも網膜に、脳に焼きついている。
服を脱ぎ、裸になると、
胸に烙印が刻まれていた。
いつどこで烙印を押されたかは思い出せない。
そして、陽が落ちる頃に再び気付いた。
名前も、顔も、性別も、
思い出せなかった。
いや、記憶すら無かった。
少女は傍らに山猫を連れていた。
唸り声が、耳から焼けた棒を入れて、
脳みそを掻き混ぜる、錯覚。
少女は腹の烙印を見て、
魔術回路。と言った。
魔術回路。
世界の中心で魔界の忠臣が、
魔術を封じ込めた壷を壊した。
魔術は文字となり、風にのり、
人間を貫いた。
吐き気。
望みの無い、痛み。
永劫の苦しみはまだ先だった。
魔の者に天国は存在しない。