第66話 ★今日は30度を越えるみたい、だよ
翌日 日曜日
「クロちゃん! プールに行こう!」
「えええ!?」
唐突すぎた。
夜、4人で並んで寝ていたはずの布団で、朝起きるとわたしが修さんに抱き着いているというとんでもないハプニングがあったにも関わらず、修さんは平然と受け流し、目が覚めたわたしの混乱する頭を撫でながらそんなことを言いした
というか、部屋が狭すぎるよ………。そのおかげで嬉恥ずかしハプニングがあったと思えば………やっぱり恥ずかしいよぉ
「おっちゃんうるさーいー」
「あ、ごめんね」
タマちゃんが目を覚ましちゃったみたいだ。
時間は何時だろう………9時だ。プリキュアみてないや………。
どうしよう、終わっちゃったよぅ。明日学校でお話についていけないかもしれない………
わたしと修さんはもそもそと布団から出る。
休みの日はタマちゃんとティモちゃんはよく眠る。わたしも眠るけど、プリキュアがある日はちょっと早く起きるの。
でも、今日は寝坊しちゃった………
気になるなぁ。
修さんとアパートを出ると、そこでお話を再開する
「プールって、どうして、なの?」
「どうしてって。そりゃあ、クロちゃんがまだ泳げるようになってないからだよ」
「そう、だけど………そのためにプールなの?」
「もち」
修さんは、わたしたちを泳げるようにするために、わたしをプールに連れて行こうとしているのか
「ティモちゃんやタマちゃんは?」
「連れて行くよ。でもメインは、クロちゃんの水嫌いを克服するため。」
「うぅ~………きょひ権は?」
「ない!」
もう、逃れられないのね。
「タマやティモ坊も水に浸かれるようになった。だったらほら、クロちゃんもできないことは無い。できるんだよ。やらないだけ。いつやるか。今でしょ!」
「はやってるからって………」
「流行っているからこそだ。みんなを起こして準備して。澄海も呼んでおけ」
澄海くんも呼ぶんだ。そっか、そうだよね。いつも一緒に居るんだから。なにより友達だし。
でも澄海くん、また『めんどい』って言いそうだな………
☆
バスに揺られて20分。市営プールに到着した。
「………あつい」
澄海くんが暑そうにうちわで顔を扇ぐ
真夏の日差しに、赤い目を細めてうちわで影を作っていた
澄海くんは背はクラスの平均よりは低いけど、体つきはガッシリしてて結構筋肉質だ。
でも、肌の色が青白くて健康的にはあまり見えない
澄海くんに電話でプールに誘った時、よっぽど暇だったらしく
『………プール。めんどいけど、行く。』
と、珍しく遊びのお誘いを受け取った。
ここ最近はネット麻雀漬けで飽きてきていたんだろうな。
わたしたちが教えた麻雀に、こんなにハマってくれていてわたしもうれしい。
「そう、だね。今日は30度超えるみたい、だよ」
「………どおりで」
うん。人が多い。
ウォータースライダーや深いプールがある。
波が出るプールなんて、もう人が波で浜に打ち上げられていた。
どんだけ人が多いんだろう。
「あー、タイミング間違えた。気分悪くなってきた」
修さんは人ごみが苦手みたい。澄海くんよりも不健康そうな顔色になっている
でも、最初から褐色だからあまり変化がわからないや。紫色が褐色の肌に混ざっていた。
「とりあえず、お子様御用達の浅いプールに行こうか」
修さんがわたしとティモちゃんの手を引いて、小学1年生くらいの小さい子たちがいっぱいいる、浅いプールへ向かった
「悪いな澄海。無理やり誘ったりして」
「………いい。今日は暇だった。」
「そっか。ありがとよ(こいつ絶対ツンデレだわ)」
澄海くんは足だけプールに突っ込み、じっとわたしたちを見た
入れってことだよね………
タマちゃんとティモちゃんは澄海くんの両隣に座った。
もちろん、ゆっくりとではあるけど、足を水に浸けていた
二人とも、緊張している。耳と尻尾がピンと伸びているんだもん。
「澄海、そっちは任せてもいい?」
「………(こくり)」
「ありがとよ。後でジュースおごってやる。」
「………いい。」
「ばっか奢らせろ。こういうのは受け取っておくもんなんだよ。俺はバイト先でジュースおごるって言われたら奢られるし、お返しに奢るといったら喜ばれる。それでいいんだ」
「………わかった」
「俺はお前に奢りたい。お前は奢られて少し得する。お互いにWin Winの関係だ。ドゥユーアンダスタン?」
「………しつこい」
「 !! ………すまなかった」
修さんはがっくりと肩を落とし、とぼとぼとわたしの所に来た
「さて、クロちゃんはおっちゃんと一緒に入ろうか」
「う、うん」
修さんはわたしの手を引いてからプールの縁に座る。
わたしは、その隣にぺたんと座る。尻尾を濡らさないように上に持ち上げることは忘れない。
「とりあえず、二番煎じだけど、ティモと同じ方法を試してみようと思います」
「………ティモちゃんと?」
「そう。まずは………プールに手を突っ込むことができる?」
「う、うん。そのくらい、なら。」
プールに手を突っ込んでみる。冷たい………
「怖い?」
「………すこし」
「そっか。」
修さんはすこし考え込んだ。
もしかしてティモちゃんは怖がったりしなかったのかな
「タマちゃんは、どうして、大丈夫になったの………?」
「タマの場合は特殊だね。感受性の強い子だから、一緒に海に行ってから、一緒に海で転んじゃってね」
「びしょびしょで、帰ってきたね」
「そう! でーその時、タマが転びかけた拍子に俺にしがみついちゃってさ」
「ああ、それで………」
「うん。それだけだったら、タマが暴れておしまいかと思った。ところがどっこい、タマは自分がずぶ濡れになりながらも、最初に俺の心配をしてくれた。お互いにびしょ濡れだったから、二人して笑ったよ。タマが水に抵抗が少なくなったのはそこからだね」
「すごいなぁ………」
「まぁ、タマはそんな感じだったけど、二人ともできたんだ。クロちゃんもできるんだよ。だってあのタマが大丈夫なんだよ? できないわけがない」
そう言いながら、わたしの頭を撫でてくれた。
きもちいい。気持ちいいツボを修さんは知っている。
気持ちがいいから、わたしは目を閉じて修さんに体重を預ける。
「ふにゅぅぅ~~」
「あっはぁ、かぁいい………」
…………………はっ! ちょっと意識が飛んでた!
「あぁ、もったいない」
「もうっ、ちゃんと教えてよぉ」
なんか変な声を出したような気がするけど、きっと気のせい。気のせいじゃないとありえない。………つまり恥ずかしい。
うぅ、顔が熱い。
「じゃあその火照った顔を、その右手で冷ましてあげようか」
「うー………」
ちょっとニヤニヤしてる修さんを少し睨んでから、右手を顔に当てる。
塩素の匂いがする。ちょっと薬品の匂いがつよいな。でも学校のプールも同じくらい薬品の匂いがする
「そんな顔についた程度の水滴も怖いのか?」
「………そんなに弱くはないよう」
頬を膨らませて修さんを見上げる。でも修さんは冷やかしの顔ではなく、すごくまじめな顔をしていた。
「そうか、水滴程度は怖くないか。」
おもむろに修さんは、右手をプールに突っ込み、引き抜いた。
「………?」
首を傾げていると―――
「ぺいっ」
「ふきゃっ!」
そのまま、デコピンの要領でわたしの顔に水滴を飛ばしてきた!
また変な声をだしちゃった………
「あっはっは! 『ふきゃっ!』だって!」
「もー! えいっ!」
わたしの頭を撫でながらケラケラと笑う修さんにむっとしたから、わたしも水に手を突っ込んで、そのまま水をパシャリと修さんにかけた
「あっはっはわむぅ!? げほっげほっ! あ゛―」
「うわっ! 修さんごめん! 大丈夫?」
顔に水がかかった修さんは、水がそのまま気管に入っちゃった!
だ、大丈夫かな、ごめんね修さん、わたしのせいで………
涙目になっていると、修さんはグリグリとわたしの頭を撫でてくれた
と思ったら―――
「あはは、大丈夫―――ぺいっ!」
「きゃっ!」
また目の前で水滴を飛ばされた!
うわ! 演技だったの!? さすが修さん汚い手を使ってくる!
だったらわたしも………
顔についた水滴を左手でぐしぐしと拭ってから両手をプールに入れる
そのまま集めた水を修さんに向かって思い切り―――
「―――えいっ!」
「わぱああああ!」
水の勢いで何メートルか修さんが吹き飛び、プールサイドに頭をぶつけてから、動かなくなってしまった。
あれ?
あとがき
またしても
殺られてしまう
猫たちに
死なないために
育てたはずなのに。
修、心の短歌
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ついった
@tassaso1
☆ここから割とどうでもいい話★
高校時代の同級生の家に集団で泊まりに行ったよ!
男女比 2:4
男性陣 僕とフユルギ
女性人 残念美人たち
これで何をするかと言ったら!
BLアニメの鑑賞会が始まってしまいました
なんでやねん! あ、僕は小説家になろうの世界に逃げ込みましたよ!
夜、飯を作ることになった
誰かが言った『カレーを食べようよ!』
厨房に立った人物は―――僕とフユルギだった。
カレーが食べたいと言った本人は―――寝てた
あ、あれー? 女性人はめっちゃ男性陣任せでした
フユルギ―居酒屋厨房&ホールスタッフ
僕―男性料理教室受講者
まぁ、そうなってしまうのはわかりますけどね
―――――――――――――――――――――――――――
はい、どうでもいい話はここまで!!!
どーん!
66話目にしてようやく澄海くんの単体イラストを上げることができました!
今まではさ、最初のラフ画しかなかったけど、ようやく姿が確定されましたね!
これで0話目の登場人物紹介で澄海くんを最初に出せる!
やったね!




