第59話 今日はいっしょにおふろに入ろうよ!
ツルツルとプールの梯子まで連れて行かれたタマは、往生際悪く、まだプールに入るのを拒否していた。
「む………むむむりだよこわいよ溺れるよー!」
「ほーら、ティモ君はプールに入れたんだから、タマちゃんやクロちゃんも入れるよ! がんばって!」
そう。ティモはプールに入れたのだ。
10分くらいかけてゆっくりと、生まれたての小鹿みたいにガクガクと震えながらも、なんとかプールに浸かることはできたんだ。
今だって顔を真っ青にしながら、プールの縁を掴み、縁のそばにある足場から一歩も出ようとはしないけど。
ティモはずりずりと少しずつ移動すると、プールの縁に腰掛ける僕の足元までやってきた。
そして、「えへへ………ぼくがんばったよ」とネコミミをしならせながら力無く笑った。
さすがに顔色が悪いし無理をしているのがわかったので、しかたなく引っ張り上げるために手を差し伸べてやることにした。
「ありがと、スカ――わにゃああ!?」
「うわっ!」
しかし、ティモが僕の手を取った瞬間、ティモが縁の足場から足を滑らせ、僕もろともプールの底に沈んでしまった。このやろう。
(――――――!! ――――――!!)
(………ちっ)
パニックを起こしたティモは水中で僕にしがみつき、僕は身動きがしづらい状態で、無理やりプールの底を蹴って水面に出た。
ティモは水面から顔を出すと、僕にしがみついたままガタガタと震え、激しくせき込んだ後にメチャクチャ泣いた。
プールの縁に移動しても、僕にしがみついたまま離れなかった。強引に引きはがそうとしたら背中で爪を立てられて、鋭い爪が食い込んで痛かったからやめた。
「ああああああああん! もうやだかえる! だすけでにいぢゃああああああん!! 」
「………落ち着け。そして離れろ苦しい」
泣き叫ぶティモは、僕の声は聞こえていないみたいだ。
耳を後ろに向けて倒しているからか。
「ティモちゃん、おぼれちゃって、いたよ。やっぱり………やめといたほうが………」
一部始終を見ていたクロやタマは、さらに顔色を青く変える。
異常を察知して走ってきたゴリマツ先生にティモを渡―――せなかった。離れてくれない。
「……………。」
ため息をひとつ。
ティモを抱えたまま左手一本で無理やりプールを出る。出来うる限り、流れるような自然な動作で。
「………おい、もう水の外だ」
「うぅうううう………、ぐすっ、あり………と。スカイくん」
それから、ゴリマツ先生にティモを引き渡し、ティモは木陰で体育座りで落ち込んだ。
その日、タマとクロがプールに入ることは無かった。
☆
「たーいまー」
「あ、にいちゃんおかえりなさい!」
ぼくが大好きなにいちゃんが帰ってきた。にいちゃんが帰ってきてくれるのはうれしいから、ぼくはいつもにいちゃんにとびこむ。
「あっふん! だから抱き着くなってば。」
そうすると、なんでかにいちゃんはぼくをひきはなす。
でもむりやりはなそうとはしないから、ぼくはわがままをいってそのままだきつく。
そうすると、ちいさくためいきをついて、ぼくのせなかをなでてくれる。
さいきんはぶかつのバドミントンをしないから、かえってくるじかんがはやい。
だからにいちゃんといっぱいあそべる。でも、にいちゃんはすぐにバイトにいっちゃうから、家にかえってからぼくたちをお風呂に入れたあと、すぐにいなくなっちゃう
いっしょにいるじかんに、にいちゃんといっぱいあそんでおきたいけど、ぼくたちのためにしてるバイトだから、がまんしないと。
「にいちゃん、今日はいっしょにおふろにはいろうよ!」
ぼくは勇気をもって、にいちゃんをお風呂にさそった。
いつもはあばれるぼくたちをつかまえて、お風呂にほうりこむんだけど、プールのじゅぎょうがはじまったから、いつまでもそうしてたらだめなんだよ!
「お? おおおお!? 珍しい! 初めてじゃないか! そんなことを言ったの! ………って震えとるやん。どないしたん? まさかイジメられたのか!? よーし待ってろ。冷蔵庫にたしか日本酒があったからそれを持って松本先生のところまで行って腹割って話してくるわ。」
ちょっとはやとちりしてるけど、そうじゃないんだよ!
「ま、まってにいちゃん! いじめられてないよ! だいじょうぶだよ! 」
れいぞうこにおおまたで歩きだすにいちゃんをひっしで押しとめる
「じゃあなに? なんでティモ坊はいきなり風呂に入ろうなんてするの? イジメじゃなきゃなんなの? プールに入れないからイジメられたんだろ? そうなんだろ?」
「ちがうちがう! ちゃんときいて! あのね。今日プールのじゅぎょうがあったんだよ!」
「うんうん。」
つっかえながらだけど、にいちゃんはイヤな顔をしないでちゃんときいてくれた。
プールの中に入ったこと。
足をすべらせておぼれたこと
それから、タマちゃんとクロちゃんはプールには入れなかったこと。
にいちゃんはぼくのはなしにうんうんとうなずいて、さいごにはあたまをなでてくれた。
にいちゃんの手は大きくてあったかくて、ぼくは大好きだ。
「わかった。兄ちゃんもいつも無理やり風呂に放り込んで悪かった。ごめん。一緒に風呂に浸かる練習をしようか。そしてプールで泳げるようになろうね」
ポンポンとせなかをなでてくれるにいちゃんのむねに顔をうずめる。
じぶんでも、ぼくがふるえているのがわかる。
やっぱり、水はこわい。
タマちゃんたちも、まだお風呂がキライみたい。
ぼくもすきじゃない。
にいちゃんは自分のことでたいへんなはずなのに、それでもぼくたちのことをよくかんがえてくれる。
「うん! がんばって水をこわがらないようになる!」
すこしでも、にいちゃんにラクをしてもらいたい。
お風呂なんかでにいちゃんのじゃまをしたくない。
だから、今日はにいちゃんのじかんをつかってごめんね?
あとがき
水泳編はトラウマ克服の回
猫たちは苦手をなくせるのか!
それとも苦手なままなのか!
べ、べつに脱がせたいからやってるわけじゃ、ないんだからね!
といっても、今回はティモが脱ぐだけです。腐女子が湧くだけです
あれ、僕の小説は腐女子向けのキャラがいっぱいいますね
イスルギさん。スカイパパ。ティモ坊。トキメキくん。
やばい、小説の方向性が変な方向に向かってしまう
ちなみに、今書いた順番さえ、結構悩みました。トキメキくんは総受けですね!
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ついった
tassaso1
☆ここから割とどうでもいい話★
なんかね、今日は日曜日だから家でめっちゃ執筆してたわけですよ
そしたら近くの商工会館で『千本桜』の曲が聞こえてくる気がすると思って、思い立ったが吉日。二階のベランダから飛び降りてから靴を履き、ぴょこぴょこと音の方向へと歩いて行ったのです。
この時点で自分はバカだ。
そして、商工会館を覗くと、ステージでオーケストラっぽい人たちが、トランペットとかを吹いていた。
家の中じゃ車の音にかき消されて一瞬聞こえる音が『千本桜』っぽいとおもってたから、実際どうなん? とおもって確認すると
もう完全に『千本桜』を吹いていらっしゃった。ボカロはオーケストラになったのですか、そうですか。
そもそもなんでこんなド田舎の商工会館でそんなもん吹いてるんですか!
と、テンション高く一人で舞いながら自宅(20メートルくらい)にもどりました。
えっと、これはなんの話でしたっけ。どうでもいい話でしたね。
あ、次回イラストを上げます。単体イラスト『ティモ坊』です。
ちなみに、『ティモ坊』を描いていただいたのですが描いた本人が『なんか気に食わんから描きなおす』と言った失敗作です。
成功作品は『ティモ坊』ではなく『ティモちゃん』になっております
見た瞬間に『誰だこいつ!』ということ間違いなし。だがとりあえず失敗の方から載せます。充分絵はうまいので。
そっちは第00話 ☆登場人物紹介★の一番下にでも乗っけときます。




