第35話 ………!? まさか、料理をつくったのか!?
寝てた。
集中しているつもりだったけど、いつの間にか寝ていた。
しかももう夕方だ。
さらに僕ともあろうものが不覚をとった。
「………ZZZ」
寝ている間に、タマに抱き着かれていた。
「………。」
なんだこの状況。僕はいったいどうしたらいいんだ?
ママは………巫女服の上にタオルケットを乗っけて寝ていた
修行とか言いながら寝る準備万端だったんじゃねぇか。
「………タマ。起きて。」
右手をタマの背に回して、背中を叩く。ってこれって僕も抱き着いているみたいじゃないか!
そして、それから気づいた。僕とタマの上にも、タオルケットが乗っていた。ママがしてくれたのかな。
「うにゃぁー………あー、澄海くーん。おはよー。」
「………おはよーじゃないよ。早く離れて。」
「やーだー。澄海くん、暖かいもーん。」
強く抱きしめられた。僕の胸に顔を押し付けるタマ。やわらかい………じゃなくて!
「ウザい。」
早鐘のようになる心音を聞かれるのが恥ずかしくて、無理やり引きはがして立ち上がる。
名残惜しそうに手を伸ばしたタマは、パタリと力尽きたように、二度寝を始めた。修行はどうした。
「………ママも、ほら起きて。」
「ん? ああ。そうだね。ぷろていんだね。」
「………寝ぼけてんじゃねぇよ。」
しばらくママをゆすって目を覚すと
「あー、もうこんな時間か。澄海、起こしてくれてありがとうさんダディちゃん。」
しりとりですらなくなってる。やっぱり寝ぼけてる。ほっぺたには畳の跡がついてるし、シュールだ。目をこしこしとこすってやっと覚醒してくれた。
次は、またタマだ。
「………タマ、起きて。修行の続きをしないと。」
「修行―? やだー。もう集中とかしたくなーい。眠いんだもーん」
「……………。」
たしかに、あれは眠くなる。一応、僕は1時間くらいは頑張って集中し続けたような気はする。
しかし、うーん。どうしよう。僕にはタマを説得できる材料はないぞ。
「……………ん?」
考え込んでいると、
あれ、なんか匂うぞ?
食べ物のにおいだ。この家では、晩御飯はコンビニ弁当だし、食べ物のにおいがすることはないはず。
すぐ隣はリビングキッチン、ということは………。
タマをほったらかして、僕は部屋を出る。ママも匂いに気づいたようで、匂いにつられて僕の後に続く。
その気配と匂いに、やっとタマの頭も覚醒してきたのか、少し遅れてタマが部屋を出る。
「ほら、ティモ坊。この間カレー作った時のことを思い出して!」
「えっと、左手を丸めて………。」
「せやせや。そのままきゅうりにチャレンジや。」
リビングルームに入り、テーブル前に正座で座る。
家では食事中もイスを使ったりはしない。いつも座布団だ。
ママが僕の対面に、タマが僕の右隣りに座る。
チラリとママを見て、『なんであの二人はキッチンを使っているの』と目で聞いてみた
すると、ママは肩をすくめた。 知らないらしい。
匂いの正体は味噌汁だ。おいしそうな匂いがする。
おっちゃんはキュウリの先端とケツを包丁で切り落とし、ピーラーで一回だけ皮を剥いた
「これで固定しやすくなったかな。ティモ坊、ゆっくりでええから、このキュウリをできるだけ細く切ってみようか」
「う、うん」
「えーっと、左手の第一関節に包丁の側面をくっつけて、指をゆっくり開きながら、そんでもって包丁は指から離さないように切っていけば、うまく切れるらしいよ。おっちゃんはそっちのまな板でやってみるね」
おっちゃんはスマホの画面を凝視しながら、ティモに料理を教えているみたいだ。
前にティモに聞いたときは、おっちゃんは並の男子高校生並の料理スキルだと言っていた。
ティモに教える過程で、おっちゃんも覚えるつもりなんだろう
おっちゃんの包丁の持ち方は、人差し指を包丁の峰部分に置いている。その持ち方は危ないんじゃないだろうかと思っていたけど、おっちゃんがキュウリを切るスピードは、ティモの3倍速くらいだ。
しかもティモよりも細く切っている。人差し指が力を加えやすくしているのかな。なかなか様になっているように見えた。
包丁を握るのに慣れているような印象すらある。
―――ガラッ
すぐ後ろで、戸が開いた。
「あ………みんな、おきたんだね」
クロがビニール袋を抱えてリビングルームに入ってきた
「………(こくり)」
「タオルケットはー、クロちゃんがかけてくれたのー?」
「ううん、修さんが………かぜ、ひくからって」
そうだったのか。あとでちゃんとお礼を言っておこう。
クロは小走りでビニール袋をもってキッチンへと向かった。
「クロ、おかえり。大丈夫だった?」
「うん………たまごとアジと、ジャガイモと玉ねぎ。お米、あと………調味料。」
「おーっし。クロ、たまごを水洗いしてから、鍋にダイブ。ジャガイモは皮を剥いて、俺のまな板におねがい」
「う、うん。」
「それが終わったらお米を研いでちょうだいな。カレーの時にやったよね」
「それなら、大丈夫。」
みんなで料理している姿を見て、僕はママに視線を移す。
「何? 澄海。」
「………いや。」
「あ、なるほど。アタシに料理なんか期待するなよ。インスタントラーメンくらいしか作れない。」
「………知ってる。」
ママが料理している姿なんか、見たことがない。
僕はテーブルに頬杖をついて、料理ができるまで待ってみることにした。
☆
それから40分くらいたった。リビングのテレビをつけて、ぼんやりと待っていると
「できたぞー。みんな、運ぶの手伝えー」
タマがテレビから目を離し、立ち上がってキッチンへと向かった。
僕も後に続く。
ママは座ったままだ。携帯をいじっている。
テーブルに、出来た料理を並べる。
味噌汁と、ポテトサラダ。あと、アジの塩焼きだ。すりおろし大根までついている
我が家の夕食が、ここまで豪華になったのは初めてだ。
肉! と言えるものはないけど、味噌汁の匂い、焼いたアジ、ポテトサラダがご飯を欲する。
料理には詳しくないけど、いつも食べているコンビニ弁当よりも、色取りがすごくきれいだ。
いただきますと、手を合わせてみんなでいただく。
僕と三猫、おっちゃん、ママ、優、おばあちゃんの8人分だ。かなり量がある。
「うっまーい! 褐色の人! わちきと結婚してつかーさい!」
「うわ、生まれて初めての告白だけど、なんかヤダ。こんな程度で高感度がマックスになる女の子ってチョロすぎる。もうちょっと高感度を下げてくれたらかわいげがあるよ」
「がびーん! レイちゃん、わちき振られたでやんす!」
「そうか、ざまぁみろ。修ちゃん、夕食の材料費はどうしたの?」
食事中にわめきたてる優をスルーし、ママが聞く。
「あ、それはわたしが出してあげたわ。せっかく作っていただくんだもの。当然よ」
それに答えたのはおばあちゃん。
「ありがとうございます、澄さん。澄さんは、澄海の叔母かなにかですか? どことなく似てる気がするし。髪の色とか。」
「あら、そう言ってもらうとうれしいわね。わたしが澄海のおばあちゃんよ。」
「どぅええ!? わっか! 27、8歳くらいにしか見えないですよ!」
「うふふ、ありがと。地球でいうと、もう百何歳なのかわからないわ。」
おばあちゃんは右手をほっぺたに当てて、上品に照れる
「こ、この家は、実年齢と見た目がデタラメすぎる………」
おっちゃんがなんか言っていた。僕にとっては普通だから、なんの違和感もないなぁ
すると今度は
「澄海くんのおばあちゃんってことはー、もしかしてー………」
タマが何かを思いついたかのようにおばあちゃんに聞く。
「そうよ。わたしは宇宙からきたの。すごいでしょ。」
タマが目をキラキラさせる。すごい興味津々だ。
「えっとーえっとー、サインくださーい!」
「え、ええ。いいわよ。たぶん、なんの価値にもならないだろうけどね」
おばあちゃんがちょっとうろたえていた。サインなんか求められたのは初めてだろし
「あ、そうだー! あれやってよあれー! ワレワレハ、ウチュウジンダ って
やつー!」
なんかタマが興奮している。どうしたんだろうそんなに宇宙人が珍しいのだろうか
………珍しいよな。タマは三猫の中じゃ飛びぬけて頭がいい常識がある猫だ。
もしかすると、タマが一番、人間に近い性格をしているのかもしれない。
「ええ、いいわよ。ごほん。『ワタクシハ、ウチュウジンダ。ココヨリトオイホシヨリ、シンリャクシニキタ。チキュウジンヨ、コウフクシテクダサイ』」
喉を叩きながら、そんなことを言う。おちゃめなおばあちゃんだから、僕はおばあちゃんが好きだ。
「きゃー! めちゃくちゃ日本語が饒舌な宇宙人だー!」
普段落ち着いてるタマがここまで興奮する姿を見たのは初めてだ。目に収めておこう。
あとがき
修行編は次でおわります
今回と次回はおまけみたいなものです
ネタバレしましょうか!? なたばれしましょうかあ!?
実はですね! 実はですねぇ!
次回はお風呂の回です。全裸です
感想やイラストは随時メールアドレスにて受け付けております
tassaso123*yahoo.co.jp
ついった
@tassaso1
☆ここから割とどうでもいい話★
あー………ついさっきまでね。関ジャニ∞のコンサートDVDを見ててですね
興奮して姉と一緒に踊り倒してました
なんだかんだで関ジャニは好きです
小学生のころからファンしてます。おや? 実は昔から男性アイドルも女性アイドルも大好きだったんですね
でもあれ? どちらかというと姉の影響でKAT-TUNとかNEWSとか関ジャニとか、そっちの方が詳しい気がする
あれれ? 僕は一体どこに向かっているんだろう
カラオケに行くと、ジャニソンとアニソンとボカロと東方でぐっちゃぐちゃになります
どの種類のカラオケに誘われても、問題ないですね
★さらにどうでもいいひとこと☆
スカイグランマがかわいい




