第31話 このアタシが、ただの一般人を自宅に招くはずがないだろう?
「このアタシが、ただの家出中のガキを善意で保護するとでも思ってるのか? んなことするか、面倒くせぇ。家出したなら勝手に一人でのたれ死んどけっての。」
リビングルームで座布団をしいて、缶ビールを片手にそんなことを言った。
昼間から飲んでんじゃねぇよ。
………つまり、家出中の優を見つけた時、超能力者で面白そうだったから、ウチで匿っている、ということだ。
「うう、ひどいよレイちゃん。わちきのトップシークレットをこんな一般人どもに教えるなんて………。もうお嫁にいけない………」
ようやく服を着てくれた優は、深く俯いたまま両手で顔を押さえている
「ユウ、もう修ちゃんも知っちまったんだ。隠す必要なんかないだろ。」
ため息をつき、勢いよく立ち上がった優は
「あっはははははは! もうどーにでもなーれっ!」
もう、壊れてしまった。
「水瀬は、どういう超能力なんですか?」
膝の上にクロを乗せたおっちゃんが疑問を口に出す
「もうわちきが説明しやすよ………。瞬間移動って言ったらだいたいあってる感じ。」
「テレポート!? それはすごいやん! それで部屋を片付けたってことだから自分だけが移動できるわけやないってのもすごいね。」
「でも、やっぱり、みんなが思ってるような瞬間移動じゃないよ? わちきのは、瞬間移動じゃなくて、分間移動なんだよ。」
「分間?」
「そ。しかも、条件があってね。移動できる物は密室の中にあるものじゃなければならないの。密室の中だったら、どんなものでも任意の場所に移動できるって感じ。でも、瞬間移動を開始するまでに確実に1分はかかる。隙がでかいね。」
「だから分間、ね。」
「で、わちきが密室で一人でいる時しかこの能力は使えないのだ。だからわちきは見せ物にもならないよ! ちなみに、『人の目』があったら能力が発動しないよん。カメラとか無機物があるときは瞬間移動はできます。でも肉眼で見ないとインチキ扱いされるからねー。胡散臭いよね。証拠映像でいいなら見る?」
「んー、証拠映像はいいや。話を聞くだけで十分やし。」
僕は証拠映像を見たことがある。一分間、部屋の中央で念じ続けて、気が付くと物の配置が変わってしまうんだ。
その密室の物体一つ一つの形と座標を暗記し、別の座標を一つ一つ設定する。人間一人の脳みそでは荷が重い計算のはずだ。やはり地味にすごい。
密室でしか働かないその能力の副作用で、部屋の中にある物体の座標を一瞬で暗記できるそうだ。
「やけに理解が早いね。こんな胡散臭い話なのに」
「ユウ、言っただろ。修ちゃんがアタシの一番弟子だ。このアタシが我が家に一般人を招き入れるはずがないだろ。超常現象には慣れてんだよ。」
そこはママが胸を張って言う場面じゃあないだろ。
「まぁ、それもあるけど、ウチの学校に黒魔術師がいるからさ。おっちゃんは幽霊も超能力も宇宙人もUMAも全部信じる人間だよ。」
現に宇宙人である僕が目の前にいるし、おっちゃんは幽霊だって見えてる。UMAは………猫たちのことだろうか。
それならもう、超能力ごときで驚いたりはしないな。ただの(?)学生がそんな図太い神経をもっているのもそれはそれで異常だ。
「………おっちゃん。その、黒魔術師ってのが、フユルギって人なの。」
今までの話から推測してみた。
黒魔術ってのがなんなのかは知らないけど、安易に人に見せるようなものではないはずだ。
それを知っているというのは、その黒魔術師と、近しい仲だと思える。
そして、おっちゃんの知り合いらしい人は、今のところ情報屋のフユルギという人物しか、僕は知らない。
「お、よくわかったね、澄海。あいつはね、魔王サタンを召喚するために嬉々としておっちゃんを生贄に差し出すような男やからね。」
なにそれ、おっちゃん生贄にされたことがあるの!?
なんでここにいるの!?
「って、今はそんな話じゃなかった。礼子さん、そろそろ僕たちを拉致った理由を聞かせてくださいよ。」
「あ、そうだな。本題に入ろう。ユウ、お前はもうスタッフルームに帰っていいぞ。そもそもなんでここにいるんだ?」
「散々わちきのトップシークレットをバラした挙句にその扱いはヒドイよ!」
優は『うわぁぁぁぁあああああん!』と大声で泣き(マネ)ながらリビングから消えて行った。
同情するよ。でもママが相手なら仕方ないと諦めろ。
あとがき
すみません。今回もキリをよくするために、短めに切ってあります。
次回はいつもの1.5倍以上乗っけます。それで手を打ってください。
というか、次回から、物語を進めていくうえで重要な場所になるので、増量しないとまとめられないのです
次回は
シリアス7割
コメディ3割
ってとこかしら
むーん、笑いを取る能力が乏しい僕にはコメディは難しい。精進します!
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☆ここから割とどうでもいい話し★
どうでもいい話が思いつかなかった。
いまから考える。
ふと周りを見渡して、目に入ったのが自分の使っているバッグ。
あろうことか1年も使っている。
実はなんかの付録についてきた、無料同然の超安物だった。
ヂャニーズのなんかだったような気がするけど思い出せない。
本当に心の底からどうでもいい話しだった




